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米国航空宇宙局(NASA)は9月27日(現地時間)、宇宙望遠鏡「ハッブル」を使った観測によって、木星の衛星「エウロパ」から水蒸気と思われる物質が噴出している様子を捉えたと発表した。エウロパの地下には液体の海があり、さらに生命が存在する可能性もあると考えられており、NASAではこの水蒸気の中に探査機を送り込むことで、その答えがわかるのではという機運が高まっている。

○エウロパの地下には海がある?

エウロパは1610年にガリレオ・ガリレイによって発見された木星の衛星のひとつで、直径は約3100km、地球の約0.25倍ほどの大きさの天体である。その表面は厚さ数kmにもおよぶ固い氷によって覆われており、さらにその地下には、地球の2倍もの量の広大な液体の海があると考えられている。

本来、エウロパに当たる太陽からの光のエネルギー量は少ないため、水が液体の状態で存在し続けることはできないが、木星との間に働く潮汐力によって海底で火山活動が起き、その熱によって氷が溶け、液体になっている可能性が考えられている。

実際に、これまで木星探査機「ガリレオ」による観測から、エウロパの表面に多くの亀裂のような縞模様が発見されており、これらはかつて表面が溶け、内部の液体が出てきたことでできたものではないかと考えられている。

また探査機ガリレオは2000年に、エウロパの磁場が5時間半に1回逆転している現象を発見。その理由として、エウロパ内部に電気を通す液体の海水のような物質があり、そしてエウロパにかかる木星磁場の強さと向きが周期的に変化することで、その物質によって電流が発生し、それがエウロパの磁場を形成していると考えれば、この磁場の逆転現象を説明できるという。

しかし、予想はされても、液体の水があることがはっきりと確認されたわけではない。たとえば土星の衛星「エンケラドゥス」にもエウロパのような縞模様があり、そして2005年には探査機「カッシーニ」によって、その割れ目から水が噴き出していることを発見し、液体の水があることが直接確認されている。しかしエウロパの場合、2012年にハッブル宇宙望遠鏡が「エウロパの南半球から噴き出す水蒸気のようなものを発見した」という報告はあったものの、探査機ガリレオによる観測ではそれを直接確かめることはできず、ハッブルによるこの発見は誤りだったのではともいわれていた。

今回の発表の肝は、そうしたあやふやな状態にあったエウロパから噴出する水蒸気の存在を示す、新しい証拠が見つかったということにある。米国の宇宙望遠鏡科学研究所のWilliam Sparks氏が率いる観測チームは、ハッブルを使い、エウロパがハッブルと木星とのあいだ、つまり木星の前面を通過する様子を計10回観測した。ハッブルを使うという点では2012年の観測と同じだが、今回は遠紫外線を使う、まったく別の観測方法が試された。

そして、そのうち3回で水蒸気のようなものが噴き出ていることを確認。その水蒸気は高度200kmの高さに達し、エウロパの表面に降り注いでいるという。さらに、そのうち2回は、2012年の観測時に水蒸気が噴出しているとされた場所とほぼ同じ、望遠鏡から見てエウロパの7時の方角にあたるところから起きており、質量や到達高度の見積もりもほぼ一致しているという。

ただ、両研究チームがそれぞれの方法で、同時期に噴出を発見することはできなかったという。これはおそらく、水蒸気の流れが時々刻々と変化していたり、また噴出が散発的であったりといった可能性が考えられるとしている。

○水蒸気に飛び込め

注意しないといけないのは、今回の発表は「水蒸気らしきものが噴出している証拠(エヴィデンス)を捉えた」ということであり、観測されたものが本当に水蒸気なのかどうかはわからない。しかしその答えを出すためにも、また水蒸気だった場合にその詳細を知るためにも、いずれにしろ今回の発表は、今後のエウロパ探査に影響を与えることになるだろう。

もしエウロパに液体の水があり、さらにそれを生み出す火山活動による熱もあり、そして有機物もあれば、生命体が生存している可能性もある。もし今回発見されたものが本当に水蒸気であれば、探査機で分析することで、生命が存在できる環境かどうかがわかるかもしれない。

NASAの科学ミッション部門の副責任者のGeoff Yoder氏は「エウロパの海は、太陽系のなかで生命がいる有力な場所のひとつと考えられています。もし水蒸気の噴出が本当に存在するのであれば、エウロパの地下にあるサンプルを回収する、新たな方法になるかもしれません」と語る。

エウロパに海が、そして生命がいる可能性が持ち上がって以来、さまざまな探査の構想が出されたが、地表にある厚い氷の存在が大きな障壁となっていた。もし海を、あるいは生命が活動している様子を直接捉えようとするなら、探査機はその氷を突き破って潜っていかなければならない。すると探査機は大きく複雑になるため、開発も打ち上げも難しい。

しかし、もしその水が水蒸気となって宇宙空間へ向けて噴出しているのであれば、わざわざ氷を掘り進む必要はなく、探査機をその水蒸気のなかに突っ込ませて観測すれば良い。すでにエンケラドゥスでは、噴き出す水蒸気の中にカッシーニが突入して分析を行っており、さらにエウロパはエンケラドゥスよりも地球から近く行きやすいこともあり、十分に実現可能である。

NASAでは現在、2020年代の実現を目指して「エウロパ・ミッション」と呼ばれる探査機の検討を行っている。現在のところ、高性能なカメラで地表を詳細に撮影したり、レーダーで地表の氷の厚さを正確に測定したりといった観測が考えられているが、その中にはエウロパの希薄な大気や、噴出物を直接分析する装置も搭載されることになっている。

もし水蒸気の噴出が本当に存在し、そしてそこへ探査機が突入すれば、地下に潜ることなく、エウロパの海がどのような環境なのか、そして生命がいるかいないかをも、そう遠くない将来に知ることができるかもしれない。

【参考】
・NASA’s Hubble Spots Possible Water Plumes Erupting on Europa | NASA
 
・PROBING FOR EVIDENCE OF PLUMES ON EUROPA WITH HST/STIS
 
・HubbleSite - NewsCenter - NASA's Hubble Spots Possible Water Plumes Erupting on Jupiter's Moon Europa (09/26/2016) - Introduction
 
・Hubble Directly Images Possible Plumes on Europa - YouTube
 
・Europa Mission - In Depth | Missions - NASA Solar System Exploration
 

(鳥嶋真也)