『sizzle word シズルワードの現在 「おいしいを感じる言葉」調査報告』(大橋正房、光岡祐子ほか/BMFT出版部)

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 「もっちり」「濃厚」「揚げたて」「ジューシー」…。スーパーやコンビニ、レストランなどに行くと、あらゆる言葉で食品の魅力が表現されていることに気がつくだろう。私たちは、言葉によって、食欲を刺激され、商品を選んでいる。「言葉を飲食している」とさえ言えるのかもしれない。

 『sizzle word シズルワードの現在 「おいしいを感じる言葉」調査報告』(大橋正房、光岡祐子ほか/BMFT出版部)では、「おいしそう」「食べたい」「飲みたい」と感じる言葉、飲食の欲求を喚起する単語を「シズルワード」と呼んでいる。「シズル」とは、揚げ物や肉が焼ける際の「ジュージュー」という音の英語の擬音語。「ジュージュー」という言葉に代表されるような、私たちが食欲を刺激される言葉には何があるのか、どのような言葉に人気があるのか、この本ではその調査結果をまとめている。この本では、シズルワードを「甘みがある」などの味覚系、「もっちり」などの食感系、「産地直送」などの情報系の3分野に分類。合わせて305個の言葉を選出し、全国15〜69歳の男女1,800人に、おいしさを感じる言葉を選択してもらった。

 その結果、多くの人がおいしさを感じる言葉は、以下の通りだった。
1位「もちもち」
2位「うまみのある」
3位「ジューシー」
4位「香ばしい」
5位「とろける」

 最も多くの人が選んだ1位の言葉「もちもち」は、他の“もち”系ワード「もっちり」「もちっと」もそれぞれ7位と14位にランクイン。その他食感系の言葉としては、「とろける」「とろーり」の“とろ”系、「サクサク」「サクッと」の“サク”系などが上位となった。味覚系では、「うまみのある」「香ばしい」「コクがある」という言葉の人気が高く、情報系の言葉では「季節限定」「新鮮な」「焼きたて」が人気ワードのようだ。

■性別、世代別でもシズルワードの好みに違い

 男女別で見ると、食感系の「もちもち」や「もっちり」という言葉は、男性よりも女性に人気。年齢別でみると、10代女性では「甘い」、20代女性では「とろーり」、30代女性では「自家製の」、40代女性では「ふわとろ」、50〜60代女性では「産地直送」が食欲をそそる人気ワードだという。女性は、食感の口当たりと、鮮度を表す情報系の言葉においしさを見いだしているようだ。一方、男性には「うまみのある」や「コクがある」という言葉の人気が高い。年齢別でみると、10代男性では「甘い」、20代男性では「濃密な」、30代男性では「濃い味」、40代男性では「脂の乗った」という風に濃い味を好み、50代になると、「昔ながらの」と懐かしい印象を感じさせる言葉を好んでいるという。

■シズルワードの二大変化とは?

 B・M・FTによるこの調査は2003年からほぼ毎年行われており、シズルワードをめぐる大きな変化として2つのことがいえるという。ひとつめは「食感系オノマトペ(=擬声語)」の人気が高まっているということ。たとえば、「もちもち」という言葉は、2003年の最初の調査では14位だったが、2010年以降、ほぼ1位を占め続けている。「もちもち」に次ぐのは「もっちり」、2003年は30位だったが、2009年には5位になり、以降、毎年5位か4位。そして、「もちもち」「もっちり」と同じように、「ふわふわ」「とろーり」も順位を大きく上げた。こうした変化のなかで、「コシのある」や「舌触りがよい」「歯ごたえがある」「歯ざわりがよい」は順位を下げているのだという。

 もうひとつの大きな変化は「豊濃化」。味覚系のシズルワードのなかで、順位の上昇が目を引くのは、「濃厚な」という言葉。2003年の62位から、2006年には24位に、2015年には「もっちり」に次ぐ5位と着実に順位を上げている。この「濃厚な」と並行して「贅沢な」「絶品」という言葉もランクアップ。そして逆に「あっさりした」「後味すっきり」という言葉がランクダウンしている。これは、日本人の好みが10年前と比べて変化しているためと言えるだろう。私たちの好みは、「あっさりした」、「後味すっきり」ものから、「濃厚」で「贅沢な」“豊濃”なものへと変化してきている。

 普段何気なく目にしている「シズルワード」だが、その言葉たちの奥は深い。「シズルワード」を知り、その言葉がどの層に人気があるのかを把握できれば、よりおいしそうに食品の表現ができそうだ。

文=アサトーミナミ