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オーストリアで、売春の男性客に依頼された「SM行為」をした結果、男性が死亡した事件で、依頼に応じた女性に有罪判決が下されたことが報じられた。

AFPによると、事件は2015年、オーストリア首都ウィーンのホテルで起きた。女性は、男性から100ユーロの支払いを受け、自分自身で首に巻かれたロープを締め上げ顔が変色している状態の男性の首を、依頼にしたがって靴ひもで数秒間絞め上げ、その場を立ち去ったという。

裁判所は、女性が男性の身体を意図的に痛めつけ、その結果死亡させたとして有罪としたが、減刑に値する状況があったとして、執行猶予付きの禁錮2年が言い渡した。

具体的にどのような罪名が適用されたからは明らかになっていないが、日本で同様の事件が起きた場合、どのような罪に問われる可能性があるのか。相手から依頼されていたという事実は、どう評価されるのか。小野智彦弁護士に聞いた。

●「依頼があった」ことをどう考える?

「本件のポイントは、SM行為を受けること、そして死の危険があることを男性が予め認識の上、承諾していたことが問題となります。日本の刑法では『被害者の承諾』という問題です。

基本的には、自ら処分することが許される範囲内で『被害者の承諾は有効』ということになっています。今回のようなケースで考えると、『SM行為によって怪我をする』という傷害の範囲では、被害者の承諾は有効となります。

形式的には傷害罪の要件をみたしますが、違法性がないということで罪は成立しないことになります」

小野弁護士はこのように述べる。「命を落とす」ことについても承諾があれば罪に当たらないのか。

「いいえ、日本では、死ぬことについてまで、自ら処分することができないと考えられています。自殺を手伝うことは、『自殺幇助(ほうじょ)』という罪が成立します。

また、他人から自身を殺すことを依頼され、依頼に応じて殺した場合でも、『嘱託殺人』という罪が成立します。

自殺自体は日本では罪になりませんが、本来は違法性がある、つまり死は自ら処分することができないものとして、手伝った者は処罰の対象になるというわけです」

●過失致死罪や殺人罪の可能性

今回と同様のケースが日本で起きた場合、どのような罪に当たる可能性があるのか。

「今回のようなケースでは、女性には、SM行為を依頼した男性を死なせないようにしなければならない注意義務があると評価できます。その注意義務に違反したということで、『過失致死罪』が成立すると考えるのが穏当だと思います。

もっとも、男性の承諾があったとしても、女性が殺人についての故意、あるいは未必の故意(死ぬかもしれないけど、まぁいいかという認識)があれば、もちろん『殺人罪』が成立することになります。

殺人罪が成立する場合でも、SM行為について依頼があったこと、つまり、被害者の承諾があったこと自体は、減刑の材料になるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
小野 智彦(おの・ともひこ)弁護士
浜松市出身。1999年4月、弁護士登録。オフィスは銀座一丁目。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。手品の種明し訴訟原告代理人、ギミックコイン刑事裁判弁護人、雷句誠氏が漫画原稿の美術的価値を求めて小学館を提訴した事件などの代理人を務めた。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。
事務所名:銀座ウィザード法律事務所
事務所URL:http://homepage2.nifty.com/tomo-ono/lawyer