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仕事を失って家賃が払えない、まだ払えているが貯蓄が底を尽き今後が心配……。そんな事態に陥ったとき、絶対にしてはならないことがある。金利の高い消費者金融などから借りて、穴埋めをしようとすることだ。知らないだけで、探せば助け船はあるものだ。

家計が苦しくて家賃が払えなくなると、人はどう対応する?

賃貸住宅を借りるときに、家賃滞納などのトラブルに備えて、連帯保証人を求められることが多い。最近では、連帯保証人の代わりに、保証料を支払って家賃保証会社に保証を依頼するケースも増えてきた。

保証会社を利用すると入居者が家賃を滞納した場合でも、保証会社が家賃を立て替えて支払うが、家賃を支払う義務が免除されるわけではなく、保証会社に家賃を返済しなければならない。

この家賃保証会社の一つ、リクルートフォレントインシュアの取締役・豊田茂さんに話を伺った。家賃滞納の多くは、うっかり支払い忘れたという理由なのだというが、そうではなく、“払いたいのに払えない”という滞納の場合、どういった状況の人が多いのだろうか?

仕事を失うなどして収入がなくなった場合、ライフラインとなる水道光熱費や携帯電話代は優先して支払う人がほとんどなので、まず支出のなかでも額の大きい家賃の支払いに困ってくるのだという。その場合、貯蓄から支払うことになるが、「家賃を滞納する人の傾向としては、貯蓄があまりない人が多いのです」(豊田さん)。

次に考えるのが、身内、つまり親や兄弟に借りることなのだが、「それには家賃が支払えない事情や今の暮らしぶりなどを事細かに説明しなければならないので、身内に借りるのは意外にハードルが高いようなのです」。身内に借りるハードルが高いなら、知人に借りるのも同様だろう。

一方、銀行などの金融機関がすぐにお金を貸してくれることはないので、消費者金融などから借りようと考えてしまうわけだ。

「めったにない事態に陥ると冷静な判断ができなくなって、家賃が支払い続けられないという現実を受け入れられないといったことも、事態を悪化させる要因です」。一時的に支払いが遅れているだけと現実を直視できなかったり、支払うべき優先順位が分からなかったりするのだという。

「家賃滞納は、生活に困窮しているという大きなサインです」。そこで、リクルートフォレントインシュアが紹介しているのが、平成27(2015)年4月からスタートした「生活困窮者自立支援制度」の一つである「住居確保給付金」。すでに家賃滞納者のうち140人以上に紹介しているという。

では、いったいどういった制度なのだろう。

助け船になる「住居確保給付金」とは?

仕事を失って家賃が支払えないといった人に対して、就労支援の一環として行っているのが、「住居確保給付金」だ。したがって、誰もが助け船として利用できるわけではない。

まず、一定の収入、一定の預貯金(資産)以下(※自治体によって異なる)で、現在求職活動をしている人が前提となる。そのうえで、
・仕事を失ってから2年以内で、65歳未満であること
・仕事を失う前に世帯の生計を主に支えていたこと
・ハローワークに求職の申し込みをしていること
などの条件を満たす必要がある。

正規雇用でなくても構わないが、夫の収入にプラスする形でパートで働いていた妻などは対象にならない。

肝心の給付については、家賃額を原則として3カ月。ただし、家賃額は自治体ごとに上限額が定められていて、求職活動の状況に応じて、2回まで更新が可能(最長9カ月まで)となっている。上限額は最も高い場合で、東京都(1級地の場合)の単身世帯5万3700円、2人世帯6万4000円だ。

この制度の最大のメリットが、「給付」であること。仕事を見つけたからと言って、返済を求められることがないので、その間就職活動に専念でき、就職後の収入を以降の生活に使うことができる。

この給付金については、最長で9カ月まで給付を受けることができるが、ほとんどの人が3カ月から6カ月で就職できているので、それ以上長く給付をする事例はめったにないという。

経済的に生活に困っているなら、まず相談を

さて、「住居確保給付金」は「生活困窮者自立支援制度」の一つと説明したが、あらゆる生活困窮者の自立を支援する制度なので、ほかにもメニューがある。

では、誰がどんなときに利用できる制度なのだろう?
厚生労働省の社会・援護局地域福祉課 生活困窮者自立支援室の渡邊さんと増田さんに、この制度について伺った。

答えは非常にシンプルだった。
「経済的に生活に困っている人ならだれでも利用できる制度です」(渡邊さん)

生活の基盤をなすのは、やはり住居。そのために一定の条件はあるものの、働く意欲のある人の就労支援として家賃給付を行っているが、本来は、収入や年齢にかかわらず生活や就労に関して困っている人に相談窓口を設けて、支援していこうという制度なのだ。

【画像1】生活保護に至る前の段階での自立を支援する「生活困窮者支援制度」により、第1〜3までの重層的なセーフティネットとなった(出典:厚生労働省資料より抜粋)

【画像1】生活保護に至る前の段階での自立を支援する「生活困窮者支援制度」により、第1〜3までの重層的なセーフティネットとなった(出典:厚生労働省資料より抜粋)

生活保護を受けるほどではないが、経済的に生活に困っている人に多様なメニューを用意して支援しようという包括的な制度で、全国の福祉事務所を設置している自治体の901市・区等で相談窓口が開設されている(2016年9月時点、末尾の厚生労働省リンク先を参照)。支援体制については、自治体によって違いはあるが、例えばこんな不安や困りごとでも相談できるという。
・今の仕事を続けてこの先生活していけるか不安
・生活に困っているので子どもの学習費用が捻出できない
・共働きで収入はあるのにいつも家計が苦しい
といったこともメニューとして想定されている。

【画像2】生活困窮者自立支援制度ができたことにより、各自治体の窓口で相談できること、支援してもらえること(取材をもとにSUUMOジャーナル編集部で作成)

【画像2】生活困窮者自立支援制度ができたことにより、各自治体の窓口で相談できること、支援してもらえること(取材をもとにSUUMOジャーナル編集部で作成)

筆者は今回初めて「生活困窮者自立支援制度」について知った。話を聞けば聞くほど、助けになる制度だと思うようになった。「生活が苦しい……」という人には、必ず原因があるもの。仕事の問題であったり、家計のやりくりの問題であったり。

苦しい現状を相談するだけでも気持ちが楽になるし、原因を分析してそれを解決するためのプランを一緒に検討してもらうことで解決の糸口が見えてくることも。自分が知らないだけで、利用できる公的な支援制度は意外に多いもの。こうしたさまざまな制度を活用することで、生活苦から脱出する道筋ができれば、本当に助け船となるだろう。家賃に限らず経済的に困っているという人は、住んでいる自治体の窓口に相談してはいかがだろう。

厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」制度の紹介サイト
・自立相談支援機関 相談窓口一覧