日本経済界の訪中団は、撤退簡素化を求めて中国政府に申請。日本のみならず欧米企業の大規模撤退につながるのではないかとの懸念が広がっている(GettyImages)

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 日本経済界の訪中団は22日に中国商務部関係者と会談し、日本企業が中国から撤退する際の手続き簡易化を要請した。中国国内専門家は、日本企業が大規模な撤退をすれば欧米企業も撤退を加速化すると指摘し、すでに鈍化している中国経済が一段と低迷するとの見解を示した。一方で、中国国営メディアは、日本や他の外資企業による大規模な撤退への不安を払拭しようと、「大規模な撤退は誤解だ」などの評論記事を報道した。

 日本経済新聞(23日付)によると、日本大企業トップや関係者らが参加した230人規模の訪中団は商務部官員との会談で、日本企業の事業環境を改善することと、日本企業が撤退する際の手続きを一括する窓口を設置することを求めた。

 中国国内世論は、訪中団の中国政府への要請は、今後の日本企業の大規模な撤退を意味するとしている。

 専門家が警告「富士通の生産ライン移転とは本質が違う」「中国経済に打撃だ」

 経済・歴史学者の王思想氏は25日「鳳凰博客」に掲載した自身の評論記事において、訪中団の要請についてのニュースを見て「非常に不安にさせられた」とした。「中国改革開放の最初、欧米企業よりもいち早く中国に投資し始めたのは日本企業だ」「日本企業は大規模な撤退を考えているだろう。これは富士通が生産ラインを中国からベトナムやインドに移転することと本質的に違う」「日本は「中国通」なので、日本企業の行動を欧米企業は真似るだろう。これは重大なことだ。すでに下向きとなっている中国経済に大きな打撃を与える」との懸念を示した。

 ネット上では、大規模撤退を不安視する声が広がっている。在日中国人交流サイト「花生網」(27日付)のコメントの一例をあげる。

 「外資の大規模な撤退がもう決まったみたい」「なぜ、日本企業に簡単に撤退させないのか? 江蘇省南部や長江デルタ地域を例にすると、その地域の6〜7割の工業生産額と輸出額は外資企業によるものだ。外資企業が撤退すると、この地域経済がもう崩壊するしかないのだ。長江デルタ地域の経済が崩壊すると、中国経済がどうなるか分かるだろう」「日本企業に厳しくしたら、欧米企業は、もう死んでも絶対に中国に行かないと思うようになるし、中国にいる欧米企業がさらに早く中国から撤退したいと思うようになるに違いない」。

 

  中国商務部が9月22日発表した統計によると、2016年1〜8月まで日本の対中直接投資が前年同期比で8.4%減少の20.6億米ドル。3年連続の減少となった。ピーク時の13年1〜8月の55.62億ドルからは約63%減少した。

 一方、中国の各国営メディアは、日本訪中団が20日から24日まで中国を訪問したことや張高麗副首相が21日、日本経済界代表団と会談を行ったと報じただけで、張副首相や商務部との具体的な会談内容について触れなかった。

 中国メディア、不安払しょくに躍起

 ネット上などで世論が「日本企業が大規模に撤退する、中国経済が危ない」との論調が広がると、一部の国内メディアが相次いで反論する記事を掲載した。

 「鳳凰衛視」電子版は26日に『日本企業の大規模な中国撤退は誤解だ』。

 「新浪新聞」は27日、『日本資本が中国から集団的大規模に撤退する?考えすぎだ!』。

 「証券時報」電子版28日は「日本資本が中国から撤退?驚きの真相!』。

 報道の多くは、日本貿易振興機構(ジェトロ)の統計を分析し、「リスク分散」、「中国プラスワン」などの方針で一部の日本企業が中国から撤退したが、大規模な撤退は全くありえないと示した。また、証券時報の評論記事では、王思想氏の見方を批判し、さらに「日本経済新聞の記者は中国のことを全く知らない」と非難した。

 国内メディアが1日も早く「外資企業の大規模な撤退」との世論をもみ消そうとしている印象を受けた。昨年9月、香港人富豪の李嘉誠氏が率いる企業が中国から撤退した際、国営新華社通信傘下シンクタンクの「瞭望智庫」が発表した『李嘉誠を行かせるな』との李氏を批判する記事が思い出される。

 外資企業の大規模な撤退が現実となれば、中国共産党政権にとっては政権運営の上で、他でもない大きな恐怖となる。

(翻訳編集・張哲)