今年に入り上昇トレンドが継続中のドル建て金価格(以下、金価格)。この価格上昇の中で、金鉱株の値上がりも続いている。そこで今回は、それらの銘柄に集中投資する金鉱株ファンドに焦点を当ててみた。

金価格よりも数倍大きい値動きを見せている金鉱株

日本国内で購入できる全投資信託の中で過去1年間(8月 31 日時点、以下同)の運用成果がトップなのが、「ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンAコース(為替ヘッジ付き)」で 99 ・32%となっている。2位が「ブラックロック・ゴールド・ファンド」で 68 ・55%、3位が1位のファンドの「Bコース(為替ヘッジなし)」の 67 ・51%、4位はそこから少し水をあけられた形で「野村ブル・ベア セレクト6(円高ドル安トレンド6)」の 35 ・6%が続いている。

これらの銘柄がいずれも高いパフォーマンスを見せたのは、組み入れの中心的な対象となっている金鉱株が、金価格の値動きの数倍の上下動をする性質があることによる。実際にロンドンの現物価格ベースで金は過去1年で 14 ・5%の値上がりとなるが、世界最大の金鉱会社であるカナダのバリック・ゴールドは152%、2位の米国ニューモント・マイニングは129%の上昇率となった。金鉱株は採掘コストを上回る金価格の上昇が見られると、収益が様変わりすることから、このように原資産である金の上昇を大きく上回る値動きを見せることが多い。

逆に金の値下がり時には、金鉱株も一気に値を崩すことも知られている。いわゆる「レバレッジが利く」と表現されているが、よくも悪くも金鉱株はハイリスク・ハイリターンといえるわけだ。それに準じる金鉱株ファンドも(値動きの大きい)レバレッジ型の商品という位置づけとなっている。

米国SEC(証券取引委員会)は、ヘッジファンドなど大口の投資家に四半期ごとに金の保有分の報告義務を課しており、各四半期末から45 日以内に報告する必要がある。今年の5月中旬にはあのジョージ・ソロスがバリック・ゴールド株を1〜3月期に大量取得していたことが話題となった。その数、1940万株。ところが8月中旬に4〜6月期に持ち分が107万株に激減していたことが明らかになった。6月末までの約3カ月の間に大半を売却していたことになる。6月下旬には英国のEU(欧州連合)離脱を決めた国民投票後の混乱を受けて、金価格は1300ドル超に躍り出たが、そのタイミングにぶつけたのか否かは不明だ。しかし、利食い売りには間違いない。

返す刀でソロスは、S&P500種株価指数に連動するETF(上場投信)のプット(売る権利)を前期の209万株から400万株にほぼ倍増させていることが判明して いる。株式市場の下げを見込んでの金鉱株売り、という判断が強かったとみられる。

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表
亀井幸一郎 KOICHIRO KAMEI
中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社であるMMI、金の国際広報・調査機関であるWGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆・講演など 幅広く活躍中。