世界で初めて3人の遺伝子をかけ合わせた体外授精児が生まれる

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3人の人間(男性1人、女性2人)から遺伝子を受け継いだ人工授精児が、メキシコの病院で生まれた。3人の遺伝子をかけ合わせた体外受精は、世界で初めてのことだ。

リー症候群の妻に子供を

その子供を生んだのはヨルダン人の女性で、彼女はリー症候群という珍しい病気の遺伝子を持っている。亜急性壊死性脳脊髄症とも呼ばれるこの病気は、もし発症すれば神経系統に深刻な障害をもたらす。

幸いにも彼女は発症していないが、過去に生んだ2人の子供は共に発症し、死亡している。それでも子供を望んだ彼女が米国医療チームと共に挑んだのが、3人の遺伝子をかけ合わせるという世界初の体外受精だ。

妻・夫+第3の女性の遺伝子

リー症候群の原因は、細胞内の小器官であるミトコンドリアにある。ミトコンドリアは、いわゆる細胞全体を司る遺伝子とは別に、ミトコンドリア独自の遺伝子を持っている。このミトコンドリア遺伝子が突然変異を起こしたのがリー症候群だ。

ミトコンドリア遺伝子は全て母親から子供へ受け渡されるため、ヨルダン人女性が生む子供は全てリー症候群の遺伝子を持つことになる。これを回避したのが、今回の体外受精だ。

米国ニューホープ不妊治療センターの医療チームは、健康な女性ドナーから提供された卵子から、細胞全体を司る遺伝子だけを抜き取り、ミトコンドリア遺伝子は残した。これに、ヨルダン人女性の遺伝子を注入し、さらに夫の精子を受精させた。

つまりこの受精卵には、健康な女性ドナーのミトコンドリア遺伝子+妻の遺伝子+夫の遺伝子の3つが入ったことになる。

子供は今年4月に無事に生まれ、順調に育っているとのこと。

米国では禁止されている手法

3人の遺伝子をかけ合わせるこの方法は「スピンドル核移植(spindle nucler transfer)」と呼ばれており、米国内では禁止されている。そのため、今回の一連の体外受精はメキシコの病院で行なわれた。

人間を対象に実施されたのは世界で初めてであるため、子供の今後の健康状態に医学会の注目が集まっている。