『ミュージアム』(巴亮介/講談社)

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 シリアルキラー。連続殺人犯を表す英語であるが、広く一般的には、とりわけ猟奇的かつ残虐な殺人事件に用いられる機会が多い。巴亮介の漫画『ミュージアム』(講談社)に登場する、みずからを“芸術家”と称する通称“カエル男”もそのひとりだ。

 同作は、青年誌『週刊ヤングマガジン』で連載されていた全3巻のコミック。雨の日にだけ“私刑”という大義名分の元に犯行を繰り返す、黒い雨合羽にカエルの覆面を被るという謎の人物。凄惨な姿となった被害者が相次ぐ中、事件を追うのは、警視庁捜査一課に所属する沢村久志。仕事ばかりに目を奪われ、妻と息子との別居を突きつけられた沢村は、やがて当事者として事件の“渦”に巻き込まれていく。

 11月12日からは小栗旬主演による同作の実写映画が公開。さらに、10月にはその前日談となる『ミュージアム -序章-』がWOWOWほかで配信される。

 カエル男の目的、さらには事件に潜む動機とは何か。先が見えぬままのスリリングな展開は一気読みしてしまうほどだが、とにかくまあ、“カエル男”の仕掛ける“私刑”は手が込んでいるのも印象深い。

 例えば、母親と二人で暮らしながら、毎日を怠惰に過ごしていた28歳・無職の堤優一も被害者のひとりだ。

 ある日、パートへ出かける母を気遣うでもなく、ホワイトボード越しに会話を済ませた優一は、いつもながらにゲームへと興じていた。ぶつくさと呟きながら宅配便のチャイムすら無視して、昼寝から起きると、自宅のチャイムが連打された。

 自室の扉を開け、「負け組の肉体労働者が」「日を改めろカス」とぼやく優一が見たのは、玄関の鍵が開く光景。空き巣かと思い怯えながらも自室へと戻る優一であったが、まさかと思いきや、ドア裏に“カエル男”の姿があった。

 気絶から目覚めたのは、廃墟となった暗がりの駐車場。手枷、足枷、さらには口を塞がれた優一が見たのは不気味な“カエル男”だった。怠惰な生活を続ける優一に下された判決は「母の痛みを知りましょうの刑」。「これより執行する」と冷たく言い放つ“カエル男”の手には、糸のこが握られていた……。

 本作の“カエル男”はさながら、映画『SAW』シリーズに登場する連続猟奇殺人犯・ジグソウともイメージが重なる。いったいどこから現れるのか、神出鬼没で何をもって犯行を繰り返すのかが分からないのもまた不気味。そして何より、ともすれば日常でふと振り返ると“そこにいる”ような怪しさが、強烈なインパクトを残してくれる。

 やがて沢村の前に現れることになる“カエル男”だが、その理由とは何か。被害者たちの接点とは何かと、とにかく読めば読むほど疑問が湧いてくる本作だが、先が気になり過ぎて、深夜に読むと確実に寝不足となる。そのためぜひ、あらかじめたっぷりと時間に余裕ある時を選んで読み進めてもらいたい。

文=カネコシュウヘイ