『怒り』上巻(吉田修一/中央公論新社)

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 映画「悪人」の小説家・吉田修一と、映画監督・李相日が再びタッグを組んだ映画「怒り」が2016年9月17日(土)に公開された。公開前から豪華キャスト陣と豪華スタッフに注目が集まっていた同作だが、実際に観た観客からは「引き込まれすぎてあっという間だった!」「こんなにも切ない涙を流したのは久々だ。もう一度劇場で見たい」と絶賛の声があちこちで溢れている。

 吉田の小説『悪人』を李が映画化したのは2010年のこと。同作は「朝日新聞」夕刊に連載された犯罪ドラマだ。物語は、あるとき福岡市内で土木作業員として働く金髪の若い男・清水祐一が、出会い系サイトで出会った保険外交員の女性を殺害してしまうことから始まる。一方で佐賀市内に双子の妹と暮らす馬込光代は、平凡な生活から逃れるため出会い系サイトにアクセス。光代はそこで運命の相手と思える男に出会うが、その男は殺人を犯していた。

 光代は自首しようとする祐一を止め、一緒にいたいと強く願った。二人の動向と同時に、被害者と加害者に向けられた悪意にもスポットが当てられる。光代を駆り立てるものは一体何なのか、誰が悪人なのか、事件の果てに明かされる殺意の奥にあるものは一体――。

 一つの事件を軸に描かれる様々な人間の孤独や悪意、愛を希求する心などを多角的な視点で描いた同作には「最後の方で止めどなく自然に溢れ出る涙を拭うことも忘れてしまいました」「文句なしの傑作だった。メディアで取り上げられることのない市井の人々の感情が事件を発端に深く掘り下げられていくのがとても魅力的」「地方の閉そく感、そこから逃げ出したいと思う光代の単調な生活、被害者家族の悲痛な思い、すべてがリアルで、感情移入せずにはいられなかった」「殺人犯の祐一を一言で『ダメなやつ』と切り捨てることができない。それくらい血の通った人間が描かれていた…吉田修一恐るべし!」と多くの読者を魅了した。

 同作は読者の大きな反響に応じるように映画が製作され、祐一役を妻夫木聡が演じ、光代役を深津絵里が務めた。地方の寂れた風景やそこに住む人々の感情を巧みに映し出した同作に観客は「原作で描かれた空気感をここまで如実に表現するとは…圧巻でした!」「妻夫木の衝動的な殺意、深津の孤独感の表現に鳥肌が立った」「物語も役者も文句なしに素晴らしい! 温度が伝わってくる大作だった」と多くの観客を唸らせた。同作は「第34回モントリオール世界映画祭」で最優秀女優賞を獲得、「毎日映画コンクール」で日本映画大賞などを受賞し、映画界に名を刻む傑作として認められることに。

 そして2014年1月、小説『怒り』が生み出された。物語は2011年の夏に八王子郊外で尾木幸則・里佳子夫妻が惨殺されたことから始まる。血まみれの廊下には犯人の山神一也が書いた「怒」という血文字が残されていた。犯人の所在がわからないまま、事件から一年が経過。山上は整形を繰り返し、どこかへ隠れている。そんな中、房総半島で漁協に勤める槙洋平・愛子父子の前には田代と名乗る男が現れ、東京で大手企業に勤めるゲイの藤田優馬の前にはサウナで出会った直人が、母とともに沖縄の離島へ引っ越した小宮山泉の前には田中という男が現れる。前歴不詳の3人の男たちをめぐる周囲の人間模様が描かれた。

  3人の男たちの言動や、それぞれの出会いや別れが静謐な筆致で描かれた同作に「至極上質のミステリーだ! それと同時にとても深い人間ドラマだ!」「愛子がふらっと訪れた出所不明の男を愛し、『犯人ではないか』と疑念に悩まされる描写はとにかく切ない」「一つの事件を導火線にして3つの愛憎が燃え上がる…なんてドラマチックな小説!」「面白いと一言で言ってしまうには惜しい作品。ここ数年読んだ小説の中で間違いなくベストだった」と称賛の声が上がった。

 そんな同作を原作として制作された映画は、李監督のほか、槙洋平役を渡辺謙が、娘の愛子を宮崎あおいが、前歴不詳の男3人を綾野剛、松山ケンイチ、森山未來という日本映画界をけん引するキャストが務め、さらに音楽を坂本龍一が担当するという最強のチームが組まれた。

 映画は公開されるや否や大反響を呼び、観客からは「役者陣の熱演、最高だった!」「登場人物それぞれに感情移入できた。犯人にさえ共感できるほど人間の深いところが描かれていて胸が詰まった」「俳優陣の演技力、ズバ抜けています。こんなに辛い気持ちになり、こんなに優しい気持ちになれるとは…涙が止まりませんでした」「大力作であり、俳優の映画である」「原作とはまた違ったエネルギーを感じた。あの真に迫った演技…綾野、森山、松山はもちろん、広瀬すずや宮崎あおいの芝居に圧倒されっぱなしだった」「これはリピート確実の映画。友達と一緒に見て二人で大号泣!」「この映画は多くの人に見てほしい。絶対に後悔しないから」と、どこを向いても聞こえてくるのは称賛の声ばかりだ。

 実力派俳優陣の熱演によって心を掴まれた観客が続出した映画「怒り」。劇場に足を運び、どれほど圧倒されるか体験してみてはいかがだろうか。

■映画「怒り」
原作:吉田修一(中公文庫)
監督・脚本:李相日
出演者:渡辺謙、森山未來、綾野剛、松山ケンイチ、妻夫木聡、宮崎あおい(※「崎」は正式には「たつさき」)、広瀬すず ほか
音楽:坂本龍一
企画・プロデュース:川村元気