座学を行う某中国武装警察部隊(写真/大紀元写真データベース)

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 不当逮捕から過酷な獄中生活を経て釈放されたものの、未だ自宅軟禁生活を強いられている中国の著名な人権派弁護士、高智晟氏。高氏の新書『2017年、起来中国(中国よ、目を覚まして)』には、収監中に出会った武装警官についての記述がある。そこには、中国共産党がいかにして洗脳と恐怖によって兵士を操り、部隊から、正義感が強く真実を語れる人間性を持つ兵士を退役させていることが明らかにされた。

 正義感の強い人を排斥する 武装警官の試験

 高弁護士が出会った新兵らによると、部隊に入隊した新兵には、必ず統一試験が行われる。その目的は知らされず、試験の結果で、一部は当然、退役させられる。兵士たちの交流を通じて、退役した新兵はいずれも答案用紙に「真実」を記述しており、正義感の強いタイプだったことが分かった。

 退役の理由は不可解なもので、「心因性の病又は衝動的な傾向があるため」などの説明を受けた新兵らはいずれも呆然としていた。

 1年以上兵役についている古参の兵士なら、試験の目的は正直で正義感の強い人間を排除することだと知っている。

 この試験で排除されなかったとしても、十分な「狡猾さ」を身に付けられず、その後の軍隊生活で不用意にも真実を口にした場合には、所属する部隊全体に「災難」がもたらされる可能性がある。

 「真実を語るヤツは誰?」嘘つきを生み、真実を封殺する連帯責任システム

 高弁護士の監視任務に就いていた夏智成という武装警官は、「真実」を語ったため監視部隊に罰せれることとなる。殴られるなどの体罰に加え、彼の所属する収監場所の監視部隊全体が連帯責任を負うことになった。

 夏智成の所属する部隊に突然試験が実施された。試験前に上層部から来た担当官が「今回の試験では必ず真実を記述しなければならない。真実を語ることを恐れる必要はない。部隊はそのような人物を必ず守ることができる」と熱弁をふるった。これに騙されて、真実を語ったのはただ一人、善良さと純粋を持つ夏智成だけだった。

 試験前に真実を語れと熱く説いた試験係官がその場の採点を見て、みなに尋ねた。「夏智成とは誰かね?」

 夏智成は立ち上がって名乗り出た。

 「よろしい、君のような人物をようやく見つけることができた」。係官は、夏智成の答案を読み上げた。

 試験が終わり、夏智成が高弁護士を監視する番が回ってきた。夏は高弁護士の監禁室に入り、上司から褒められるだろうと期待していた。はたして30分ほどたって夏が呼び出された。だがやってきた交代人員は、彼に耳打ちした。「今、監視係の兵士ら全員が殴られており、お前もここを出たら殴られるのだ」と。

 それから30分後、夏智成はまた監視に戻ったが、この時、高弁護士には、彼の目にうかんでいだ恐怖の色をはっきりと見て取れた。あの目は生涯忘れることができないと高弁護士は語っている。部隊の兵士が殴られるのは日常茶飯事で、そのたびに高弁護士はひどく心を痛めていた。彼らはまだ若く、少し前まで子どもだったと言える年齢だったのだ。

 夏は高弁護士の独房を出た後、班長に空き部屋に引きずり込まれて、殴られた。だが、これだけでは収まらなかった。高氏を監視する全ての監視係の兵士が連帯責任を負わされ、罰として半日スクワットをさせられたうえ、昼食も食べられなかった。さらに今回の件は重大事件として大隊、師団、全師団にまで通達された。

 

 こういう連帯責任制を、高氏は中国軍で行われている邪悪な懲罰システムだと糾弾している。「一人が病めば、全員が薬を飲まなければならない」と称されるこの方法は部隊全員に罰を与えることにより、原因となった人物を皆が憎むように仕向けるからだ。結果として真実を語るものが部隊から淘汰され、残されたものも自身の利益のためにうそをつき、密告者がはびこる。

「戦車は丸腰の学生を後ろから襲った」 6.4天安門事件の体験者が語る

 真実を知りたい兵士たち

 1年9カ月に及んだ高弁護士の収監中に、興味深いできごともあった。監視係の新兵と親しくなると、必ず高弁護士に同じ質問を投げかけてくるのだ。それは1989年六四天安門事件に関することで、とりわけ、古参兵が退役する前には、最後の数日に「天安門事件の真相」を尋ねてくるのだという。

 もともと彼らは兵士になる前、天安門事件の話など聞いたこともなかったのだが、兵士向けの洗脳教育を受けたがために、事件の存在を知ることになった。ただし彼らは、学生が大勢の武装警官を殺したという政府の説明を全く信じていなかった。

 中国当局が洗脳教育の一環として兵士に見せる映像に、北京武装警察総隊のある隊長が涙ながらに語っているシーンがある。天安門事件の日、1万人以上もの部下を動員したが、800人しか生還しなかったというのだ。そして、学生らが兵士らに対して行った凄惨な殺戮の事実は、人類史上まれに見る陰惨なものだったと訴えている。

 だが、これを見た兵士らはある疑問を持つようになった。「軍事訓練を受けてきた軍人がこれほどたくさん死んだというのなら、死亡した学生はさらに多いのではないか?」「学生が死んだかどうかについての説明はないのか?」「学生の死亡者数がどれくらいであろうと、その数を我々に教えてもいいのではないか?」

 インターネットに詳しい兵士が、ネット封鎖を突破して天安門事件の真相にたどり着いた。真実を知った兵士はこういった。「加害者が被害者に罪をなすり付け、自身の罪から逃れようとするやり方は、中国共産党の得意とするところだ」。

(翻訳編集・島津彰浩)