なぜ“涙”を誘う? ロングセラー育児書『子どもへのまなざし』に込められたメッセージとは

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福音館書店から発刊されている『子どもへのまなざし』は、1998年に初版が出て以降、55刷以上も版を重ねているロングセラーの育児書です。

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著者は、児童精神科医の佐々木正美氏。約300ページの中に、乳幼児期を中心とした子ども時代に、親がどのように我が子と接していけばいいかというアドバイスがぎっしりと詰まっています。

心理学の理論や、豊富な臨床経験に基づいた知識が読みやすい文章で綴られているため、説得力があるのが特徴。

いわば子育ての基本書なのですが、amazonなどの読者レビューを見ると、「参考になった」「役に立った」以外に、「癒やされる」「涙が出た」といった育児書の感想らしからぬ声も目につきます。

この本のどんなところが、ママたちの心に響くでしょうか。
本に綴られた数々のメッセージの中でも、特に印象的なものをご紹介します。

(1) 子どもの「ありのまま」を受け止めよう

著者の佐々木氏は本の中で、人はできるだけ早い時期に、誰かから無条件に、全面的に受容されることが必要だと説きます。

幼少期に十分に受容された子どもは、安心して思うままに行動し、自信を持って生きていけるのだそう。

しかし親はしばしば、子どもの将来を思うあまりに、欠点ばかりを厳しく注意しすぎたり、過剰な期待をかけたりすることがあります。
そうした姿勢が行きすぎると、子どもを否定し、自発性や自由な発達を妨げることにつながるそうです。

子どものありのままの姿を見つめて愛すること。

それは育児の原点といえるでしょう。

(2) 「過保護」と「過剰干渉」は違う

一般的に、過保護や子どもを甘やかすことはよくないとされています。

ところがこの本には、乳幼児期の子どもの育児は「過保護なくらいがいい」と書かれています。

ここでの過保護とは、「子どもが望むことを望む通りに、やりすぎなくらいやってあげること」。
たとえば、おんぶと言われたらおんぶし、テレビを見ながら抱っこしていてほしいと言われたら飽きるまで膝に乗せておいてあげることだといいます。

過保護に育てても、子どもの依頼心が強くなることはなく、かえって人を信じる力が身につき、自立心が芽生えていくのだそう。

ただし、過剰干渉となると話は別です。
過剰干渉とは、「子どもが望んでもいないことをやらせすぎること」。

たとえば、ママの趣味でお人形のように着飾らせることや、子どもには興味のない習い事をさせることは、度がすぎれば過剰干渉になるでしょう。

子どもの自立心を妨げる原因になるのは、過保護ではなく、こうした過剰な干渉なのだそうです。

(3) しつけとは、繰り返し教えて待つこと

しつけというと、厳しく叱るというイメージがあります。

しかしこの本によると、本来のしつけとは、トイレや食事の仕方などを繰り返し教えて、あとは子どもが自分で実行するのを待つことだといいます。

たとえばトイレトレーニングで「おしっこが出るまで立っちゃダメ」というような、強制を伴うしつけをすると、成功は早くなりますが、自律性(自分で自分の衝動や感情をコントロールすること)が育たないのだとか。

時間がかかっても、子どもができるようになる時期を焦らず待つことで、子どもは自律心を養っていけるのだそうです。

(4) まずは親が幸せに

思いやりのある子に育てたい。
それは多くの親に共通する願いでしょう。

しかし、親が思いやりを持っていないと、子どもに思いやりは育ちません。

そんな見落としがちな真実を、この本は教えてくれます。

さらに、幸せな人ほど相手を思いやることができますが、不幸な人ほど、他人の不幸を見て安心してしまう傾向がある、ということも。

子どもにとっての良い見本となり、共感力や思いやりを持った子どもに育てるためには、まず親自身が幸せでいなければいけないのです。

読むうちに、じんわり涙腺がゆるんでくるワケ

以上、今回は4つの点に絞ってご紹介しましたが、厚みのある一冊の中には、ほかにも、育児に関する新鮮な視点や感動的なエピソードが満載。

読み進めていくうちに、じんわり涙腺がゆるんでくるのは、おそらく、すべてのメッセージが、かつて子どもだった親も含めた“子どもたち”への温かいまなざしであふれているからなのでしょう。

子どもの頃、親の期待に応えようと必死で勉強や習い事をがんばってきたママは、「もっとありのままの自分を認めてほしかった…」という想いから、切なくなってしまうかもしれません。

そんなママも、本を読んでその教え通りに子どもに接することで、のびのびとした子ども時代を生き直し、心を解放できるのではないかと思います。

現代の生活では、すべてこの本の通りにすることは難しいかもしれませんが、子育てに悩んだときに原点に帰るために、そばに置いておきたい一冊です。