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2016年8月12日に、羽田空港で手荷物搬送用のベルトコンベアが故障して、全日空機が預託手荷物を積まないで離陸してしまう事態が発生した。だからというわけではないが、人を乗せる話の次は荷物・貨物を載せる話、という流れでいこう。

○民航機の貨物室

民航機の場合、円筒形の胴体の上半分が客室、下半分が貨物室というのが一般的なレイアウトになる。ただし、小型で胴体直径が小さいリージョナル機などでは上下2分割にするだけの高さをとれないため、客室の後部に荷物室を設ける。

飛行機に積む荷物や貨物のうち、最も身近なのは搭乗時に預ける預託手荷物だろう。これは、機内の貨物室にバラ積みする場合と、コンテナに入れて搭載する場合があり得る。

バラ積み貨物は輸送用の車両に載せて機体の横まで持っていって、ベルトコンベアを使って積み下ろしを行う。機体の姿勢変化によって荷物が暴れると面倒なことになるので、それを防ぐための対策が必要になる。大型機の場合、バラ積み貨物用の貨物室は機体後端の床下に設けるのが普通のようだ。

では、コンテナはどうか。コンテナといっても貨物船が搭載するISOコンテナ、あるいはJR貨物が使っている国鉄規格のコンテナとは別物で、LDシリーズという飛行機専用の規格がある。このLDコンテナは、円筒形の機体断面に合わせて下側の角を落とした独特の形状で、機体に合わせてサイズがいろいろある。

民航機というと旅客機を真っ先に思い浮かべるが、貨物専用機もある。こちらは上下2層とも貨物室になり、やはりLDシリーズのコンテナに収容した貨物を積み込むのが基本だ。ただし胴体断面は円筒形だから、それとの兼ね合いにより、上層貨物室用のコンテナは上側の左右いずれかで角を落とす。

また、コンテナに収容しないで、後述する軍用輸送機と同様にパレットに載せて搭載する場面もあり得る。

どちらにしても、飛行機は有蓋貨車や一部の大型トラックと異なり、側面が大きくガバッと開くわけではない。そんな開口部を設けたら構造設計が大変になり、しかも重くなってしまう。だから、側面のどこかに扉を設けて、そこから機内に入れたコンテナを前後方向に移動させて奥から詰める。

そのため、コンテナの前後移動を容易に行えるように、貨物室の床面には電動式のローラーをズラッと並べている。スイッチ操作によってローラーを回転させると、それによってコンテナが奥に行ったり、手前に出てきたりする。ピラミッドの建設工事では大きな石材をコロに載せて運んだというが、それと似たところがある。

○軍用輸送機の場合

同じ輸送機でも、軍用輸送機はだいぶ様相を異にする。

まず、貨物の積み方が違う。LD規格のコンテナは使わず、パレットに載せるのが通例だ。パレットとはその名の通り、貨物を載せるための大きな板で、荷崩れ防止用のネットやカバーを固定するためのフックがついている。

コンテナは空でも満杯でも同じサイズだが、パレットは貨物を降ろしてしまえばタダの板だから、場所をとらない。西側諸国の軍では463Lパレット(HCU-6/E)という統一規格品があり、サイズは88インチ(2,235mm)×108インチ(2,743mm)×2.25インチ(57.1mm)、重量290ポンド(131kg)。

ただし、そのうち利用可能な面積は84インチ(2,134mm)×104インチ(2,642mm)となっており、周囲に2インチずつの余裕がある。その余裕を梱包に利用する仕組みだ。1つのパレットに搭載できる貨物の重量は、最大10,000ポンド(4,540kg)となっている。

軍用輸送機の貨物室は、貨物を固定するための金具やチェーンをひっかけるために、タイダウン・ポイントなどと呼ばれる金具がたくさん設けてある。金具やチェーンの方は両側壁に収納してあり、必要に応じて取り出して使う。積荷が飛行中に動き出すと一大事だから、載せた後で他の貨物と同様にチェーンで固定するわけだ。

機体によっては、民間貨物機みたいに電動ローラーを設けている場合もあるが、常にローラーを使うわけではない。ローラーの上に車両を載せたら、ローラーが壊れてしまう。だから床部分をリバーシブルにして、ローラーがある面を表に出したり、裏返しにしたりする機体もある。

なんでこんな構造の違いが生じるかといえば、軍用輸送機は袋入りだったり箱入りだったり、あるいは車両や人間を載せたりと、多様な積荷を扱うからだ。積荷の種類が多様だから、特定の荷姿に最適化した設計にはできない。

実際、米空軍の輸送機は人員や一般的な貨物だけでなく、戦車や兵員輸送車などといった装甲戦闘車両(AFV : Armoured Fighting Vehicle)、ヘリコプター、しまいには潜水艦救難用の潜水艇まで運んでしまう。

軍用輸送機で兵員を運ぶ時は、トループシートと呼ばれる座席を設置する(壁に収納してあることもある)。通勤電車のロングシートと同じように両側壁に背中を向けて向かい合わせに座るが、機体断面が大きい機体だと、さらに中央部にも、背中合わせに両側壁に向けて座る座席を追加する。

このほか、戦地で負傷した兵士を本国の医療施設に搬送するために、機内に担架と医療機器を設置することもある。医療機器を動かすには電源が必要ということで、電源コンセントを追加設置した事例もある。

なお、貨物輸送機で貨物の揚搭に使うのは後部ランプだ。第5回で述べたように、軍用輸送機は床面の地上高を低くするように設計するため、後部ランプを降ろせばすぐに地面につく。だから、車両は自走で出入りできる。

このほか、軍用輸送機は兵員をパラシュート降下させることもある。その場面に備えて、両側面にも扉を設けてある。ただし、モノを投下する時は後部ランプを使うようだ。ここからBLU-82/B「デイジー・カッター」という、どでかい爆弾を投下した事例もある。大きすぎて戦闘機はおろか、爆撃機にも載らないのだ。

なお、軍用輸送機の変わった使い方として、「弾道ミサイル模擬標的の空中投下」がある。後部ランプから投下してロケットに点火、飛翔させる仕組み。要するに、輸送機を1段目のロケット代わりに使っているわけだ。

○機首に貨物室扉を持つ輸送機

なお、C-5ギャラクシーやAn-124といった大型輸送機は、コックピットを貨物室より一層上のレベルに上げてしまい、機首にも貨物揚搭用の扉とランプを設けている。

機首部分が上ヒンジでガバッと上方に向けて開き(この部分をバイザーという)、機内からランプがせり出してくる仕組みだ。さらに後部ランプを開けば、機内は前後に通り抜けられる巨大なトンネルと化す。

民航機で同様に機首にバイザーを設けているのが、ご存じボーイング747の貨物専用型。ただし、胴体内部は上下2層構造になっている。下層は旅客型と共通する貨物室、上層は旅客型だと客室になる部分。747の場合、その上にアッパーデッキが載り、コックピットもアッパーデッキのレベルにあるから、実質的には3層構造だ。ただし貨物型のアッパーデッキは旅客型のそれほど長くない。

実は、747の開発が始まった頃は「将来は超音速旅客機に取って代わられるのではないか」との予測があった。すると、747は旅客機としては用済みになってしまう可能性があるので、貨物輸送機に転用することが考えられた。

そこで、コックピットを上層に上げた設計にしたおかげで、機首にバイザーを設けて大型貨物の揚搭を容易に行えるようになった。ただし軍用輸送機と異なり、床面を低くする設計にはなっていない。だから、貨物を出し入れする際は側面貨物室扉からの出し入れと同様に、昇降機が必要になる。この辺は軍用輸送機と違う。

(井上孝司)