シン・ゴジラで活躍する自衛隊の現用装備「実写」ギャラリー (全部実物を撮ってきました)

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7月末の公開以来、興行収入70億円を超えるなど話題沸騰中の映画「シン・ゴジラ」。キャッチコピー「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」のとおり、今作はゴジラというフィクションに対してリアルな組織がリアルな装備で立ち向かいます。

自衛隊もメーサー砲(メーサー殺獣光線)のような架空兵器は持たず、あくまで現実の現有装備で対処します。ここでは「シン・ゴジラ」に登場する装備の数々を、筆者自身が観艦式や富士総合火力演習などのイベントで1年かけて撮った本物の写真で紹介したいと思います。

【ギャラリー】Godzilla (60枚)

メーサー砲など架空の兵器は登場せず。リアルな自衛隊の装備

シン・ゴジラでは、過去に怪獣が出現しなかった世界ということで、ゴジラに対峙する自衛隊などの装備も現有装備となります。ここでは、去年の観艦式や富士総合火力演習にて展示された自衛隊の装備より、劇中に登場した装備を紹介したいと思います。

最初にゴジラ(第3形態、通称:品川くん)が現れた時に対応するのが、「AH−1S対戦車ヘリコプター(通称:コブラ)」です。

この写真は毎年年初に行われる第一空挺団降下訓練始めにて撮影したもので、地上目標に攻撃するために急上昇、急降下の機動を行っている最中です。

AH−1Sと一緒に行動していたのは「OH−1 観測ヘリコプター」で、実際の任務では、敵陣の偵察や着弾観測などを行います。劇中でもその性能により重要な役割を果たしました。

2016年の総合火力演習では飛行停止の影響か登場しませんでした。こちらは2015年の総合火力演習時のものになります。

海に逃げたゴジラを捜索したのが海上自衛隊の護衛艦です。DD−111おおなみは、同型艦のDD−110たかなみ、イージス艦のDDG−174きりしま、DD-116てるづきとともに、単横陣で捜索活動を行っているシーンがありました。また、搭載している対潜ヘリSH−60J哨戒ヘリコプターによる探索シーンも描かれました。

たかなみ、おおなみ、てるづきは対潜哨戒ヘリコプター、イージス艦であるきりしまは、対潜ソナーなどで探索を行ったであろうと推察されます。

2015年の観艦式では揺れる甲板の上から望遠レンズで撮影するという難易度の高い撮影でした。また、気象条件や天候によって霞がかってしまうこともありましたが、Adobe Photoshop CCに実装された「かすみの除去」フィルターが大活躍しました。

就航したばかりのヘリ搭載型護衛艦DDH−183いずもは、東京から避難する車両を甲板に載せて航行するシーンで登場しました。同じく全通甲板をもつ輸送艦「おおすみ」も登場します。「いずも」や「いせ」などの全通甲板をもった艦船は、災害時の避難やけが人の収容などの役割も期待されていますので、あるべき運用が劇中でも描かれていたのだと思います。

再び上陸したゴジラ(第4形態、通称鎌倉さん)に対して、一番最初に攻撃を仕掛けたのがAH−1Sの20mmバルカン砲です。続いてAH−60D(アパッチ)の30mm機関砲に切り替え、効果がないと判明すると、ミサイル攻撃(武器の無制限使用)が許可されます。

自衛隊は「やられ役」の汚名を払拭

過去のゴジラを含む怪獣映画では、自衛隊はいわゆるやられ役で、弾やミサイルも外れる場合が多かったのですが、今回はリアルに全弾命中します。毎年8月末に行われる富士総合火力演習でも、TOT曳火射撃と呼ばれる複数の異なる射程の砲で、直線や富士山をかたどった着弾をする技術が展示されます。

対戦車ヘリコプターの攻撃が通じず、多摩川にさしかかったゴジラに対しては、第2段階作戦として、戦車や火砲による攻撃(タバ作戦)が開始されます。10式がずらりと並ぶ様子は圧巻ですが、戦車がすべて10式なのは、90式はその自重により一般道の通行が困難であることと、配備された駐屯地からの展開を考慮すると理にかなっているように思われます。

74式戦車が見当たりませんでしたが、代わりに同じ砲を搭載した16式機動戦闘車が登場しました。まだ正式に配備されていない装備ですが、将来の運用としては戦車の重要度が低い本州などの地域に代替装備として配備される予定ということで、もしかすると、シン・ゴジラの世界観は現在より少し未来の世界なのかもしれません。

公式サイトのムービーでも、CGにによる10式戦車がリアルに描かれておりました。IMAXや極上爆音上映など、7回ほど観劇しておりますが、該当シーンがCGだとは思いもよりませんでした。もちろん、アクションカムで撮影された実際の映像なども混ざっていたのもリアリティに貢献したのだと思います。

シンゴジラの撮影スタッフは富士の総合火力演習を取材していた!

のちに取材した際確認できたのですが、シン・ゴジラの撮影スタッフは、2015年の総合火力演習を撮影していたということです。詳細は別記事で触れたいと思いますが、こういった細かな部分がリアリティにつながったのだと思います。

99式自走155mmりゅう弾砲などの火砲による同時弾着射撃(Time On Target)も、タバ作戦におけるハイライトのひとつです。複数の砲によって同時に着弾することで、最大限の威力を発揮しますが、それでも有効なダメージを与えられなかったというゴジラの防御力の高さを表現します。また、防衛ラインを突破されてしまった後でも、御殿場に展開する特科火砲(MLRS)は機能しているなど、部隊配置もリアルに設定されていました。

自衛隊の装備で最も効果があったのがF−2戦闘機によるJDAM(爆弾)攻撃でした。結果としてゴジラの進撃を阻むには至りませんでしたが、10式の脚部への攻撃とあわせて、最終決戦へとつながるフィードバックを得ることができました。このF−2は2015年の総合火力演習時のもので、天気に恵まれていたことと、飛行高度が低かったことで、ナイスな写真が撮れました。

政治家・官僚の武器としてのパソコン・OA機器

登場人物や、各省庁が使用するPCにも個性や特徴が現れておりました。

巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)が結成された際に配備されたのはPanasonicのLet's Noteで、市川実日子が演じる環境省自然環境局 野生生物課課長補佐の尾頭ヒロミが使用するのは、同じくPanasonicのSZシリーズ(ブラックモデル)と思われます。

また、高橋一生が演じる文部科学省研究振興局基礎研究振興課長である安田龍彦はAppleマニアらしく、使用するPCはMacBook(おそらく個人PCを持ち込み申請して使用している)で、Apple Watch(ステンレススチール/ブラッククラシックバックル)を腕にはめています。このモデル(ブラッククラシックバックル)はすでに廃盤なので発売と同時に買っているのだと思います。使用するスマホはもちろんiPhone(iPhone SE?)です。

主人公の矢口や内閣府のスタッフが使用するのは富士通のパソコンでした。PCに貼られたリース管理番号やコンピュータ名などが記載された張り紙が備品感を醸し出しています。その他、自衛隊が作戦で使用するPCなどには、PanasonicのTOUGHBOOKやTOUGHPADが使用されておりました。

また、災害対策室が設置されたり、巨災対が設置された際に最初に設置される多数の複合機は、ハリウッド映画で海兵隊などの兵士が銃架からアサルトライフルを次々と取り出して装備してゆくシーンを彷彿させるほどに、事務屋の武器としての描かれ方が胸熱でした。

防護服やマスクにも組織ごとの特徴が!

最終決戦に向かう主人公を始め、政府関係者や自衛隊員は、ゴジラの放射能から身を守るために防護服とマスクを着用します。ここでも主人公をはじめとする政府関係者は、興研株式会社のサカヰ式防毒マスクにアゼアス株式会社の防護服を着用しています。

一方、石原さとみ演じるカヨコ・アン・パタースンや自衛隊関係者は、3Mの「6000F」と思われる面体に「60921-L3(L3グレードの濾過材と有機ガス用吸収缶の一体型)」を装着しているように見えました。特に吸引缶は何度もアップになっているので間違いなさそうです。防護服にはタイベックのロゴが見て取れます。

その他にも重機クラスターや鉄道クラスターなど、各分野に精通した人にはここがリアルでここがフィクションとあれこれ指摘したくなる部分が随所にあるかと思います。まだ上映している劇場もあるということで、もう一度足を運んで気になるシーンをチェックしてみてはいかがでしょうか?

当初8月10日発売予定で、8月29日へ延期され、さらに9月20日へ延期、その後11月3日へと延期された公式記録集「ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ」には、当初の予定を超えて資料や写真、インタビューなどが収録されるということで、登場した装備や機器の詳細が判明することを期待しています。