この現実世界は、脳が電気信号として感じているだけの幻覚ではないのか?

取り止めもなく荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが、現実に多くの物理学者、宇宙学者、技術者たちがこの意見を口にしています。「この世界はそもそもがシミュレーションである」と。

マトリックスが現実のものとなる!?

人間が悪の力によって、「本物」だと信じ込まされているバーチャルな世界の中に捕らわれていた…。

1999年に公開された映画『マトリックス』は、わかりやすく(あれでも)電脳の仮想現実を描くことで大ヒット。当時イマイチ理解できなかったバーチャルリアリティも、人工知能やビッグデータが進化した今の状況を当て込んで考えてみると、奥深さがいっそう増してオモシロい内容だと、改めて思います。

ところで、そのストーリーのSF的、哲学的と思われていたアプローチが、今では科学がこの意見を受け入れるようになってきました。例えば、「われわれは巨大なコンピューター・シミュレーションの中で暮らしており、リアルなものと勘違いをしながら、マトリックスのようなバーチャルな世界を体験している」といった意見です。

われわれ人間は、
完全にシミュレートされた存在

こうした科学者たちの意見を支持するのが、イーロン・マスク。2016年6月「Vox Media」のカンファレンスにおいて、彼は「我々が "基底現実" に生きている確率は "極めて低い" 」と主張。コンピューター・シミュレーション説を、この40年のテレビゲームの進化になぞらえ持論を展開しました。

詳細はこちらの動画から。 

彼の主張をかいつまんで説明すると、私たちはビデオゲームのキャラクターのように巨大なコンピューターの中で操作されている情報にすぎない。そこでは、私たちの脳さえもがシミュレーションされていて、人工的なインプットに反応しているだけで、シミュレーションそのものが新たなシミュレーションを作り出す世界に生きているんだそう。

この考えを広げていくと、地球を含めた宇宙すらシミュレーションが生み出した仮想現実のひとつとしても不思議はない、という考え方のようです。

シミュレーション漬けの現代社会

これがテクノロジー事業の寵児の妄想でないことは、GoogleでAIの総指揮をとるレイ・カーツワイルの次の言葉からも明らか。「もしかしたら我々の宇宙は、他の宇宙の中学生がおこなった科学実験の産物かもしれない」こんな意見も。

やはりコンピューター・シミュレーション説を支持する同氏は、人間の大脳新皮質をスーパーコンピューターを使って模擬実験する、「Neocortex Simulator」の実用化に取り組んでいる人物です。

私たちは日々、社会、銀河、宇宙、素粒子など、さまざまなレベルでコンピューターを用いたシミュレーションを繰り返しています。より優れたテクノロジーがあれば、自我をもったエージェントに疑似体験させることで、それを受け入れるというプロセスに基づく考え方のよう。もう、頭の上に「?」が3つも4つもついてしまう内容なんですが…。

それでも、現代においてもはやシミュレーションはゲームの中のものではなくリアルな世界の道標である、という認識は確かにあります。多少比喩的ではあるものの、仮想現実の中なのか、それともリアルな現実世界にあるのか。VRヘッドセットを初めて体験した時、私はいまの自分の立ち位置すらも原形をとどめない危ういもののように思えました。 

どこまでが幻想?
どこからがリアル?

結局、人間は(あるいは世界は)シミュレーションの中を生きているのかいないのか。その結論がどこにあるのかも分からない。そこでこれまでの話を受けて『マトリックス』以前の映画を3本紹介します。

人間が空想の中で作り出した仮想現実、幻覚と現実の境界線、バーチャルに洗脳されていく人間…。テクノロジー進化のずっと前から、私たち人間ががある種シミュレーションの中に生きていることを実感させられる3作です。

秋の夜長どうぞ。そして、こんな問いかけを。どうやって私たちは事実に気づくのか?そもそも、それは重要なことなのでしょうか?

 『未来世紀ブラジル』

監督:テリー・ギリアム(1985年)
情報統制がなされた「20世紀どこかの国」。満たされない現実から逃れるため、空想の世界にふける主人公サム。空想と現実を行き来するストーリーそのものが、すべて彼の妄想の中にあった。

いかに現実社会が進歩発展しようとも、脳内にある空想世界を超越することはできないことを、ギリアムの真骨頂であるユーモラスな社会風刺で表現している。

 『ヴィデオドローム』

監督:デイヴィッド・クローネンバーグ(1983年)
ケーブルTV局の社長を務める主人公マックスは、ある日「ヴィデオドローム」なる海賊番組のビデオテープを入手する。だがそれは、視聴するものの現実を変容させ幻覚を見せていく。

拷問や殺人シーンのスナッフビデオを目にしたものは、幻覚と現実の区別が分からなくなり、人体に腫瘍(のようなもの)をつくるプログラミングがなされていた。「禁断のテープを見てしまうと…」という展開、日本のホラー映画『リング』もこの作品から多大な影響を受けたそうだ。

 『バーチャル・ウォーズ』

監督:ブレット・レナード(1992年)
脳の活性化を研究する主人公アンジェロ博士は、知的発達障害をもった男ジョーブの脳に、コンピューターを用いたバーチャル空間を見せることで活性化を目論む。しかし、実験の結果ジョーブは恐ろしい力を手にしてしまう。

原作はスティーヴン・キング『芝刈り機の男』だが、バーチャル空間を支配することによって世界を征服するという設定は、映画オリジナル。その後スーパーファミコンのゲームソフトにも。

Reference:BBC,thecultbox,murdlok,Ricardo ZapataVallarino