仕事場にベッドを持ち込み働く花山「とと姉ちゃん」150話

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連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第25週「常子、大きな家を建てる」第150回 9月24日(土)放送より。 
脚本:西田征史 演出:深川貴志


入社試験でも使われたベートーベンの「運命」が流れ、合格通知を受け取るたまき(吉本実憂)。この1、2回、急に演出のトーンが変わっている気がするのはなぜかはさておき、花山(唐沢寿明)もたまきの可能性に太鼓判を押した。たまきはなかなか優秀らしい。鞠子(相楽樹)の血を受け継いでいるのか。

病気の花山


昭和49年4月。
ビビッドな柄の70年代ファッションが素敵なあなたの暮し出版のひとたち。
だが花山の体調は思わしくなかった。5年前に心筋梗塞を煩ってから弱っていた花山。ちょっと編集部員を怒ったら具合が悪くなって編集長室のベッドに横たわってしまう。

最近は体にさわらないよう感情を抑えるようにしているという花山を見ていて、5月に亡くなった演出家の蜷川幸雄を思い出した。蜷川も声を張り上げて怒ることで有名だったが、晩年は健康のためにも感情を高ぶらせないように気をつけていたようだ。97年に心筋梗塞で、09年には脳梗塞、12年に狭心症・・・と数々の病にかかり、この数年は楽屋の一室や芸術監督室にいつでも体を休められる環境を整えながら仕事をしていた。そんな蜷川と何度も仕事をし、俳優としての可能性を大きく広げた唐沢だから、病床の花山に蜷川さんを少し投影して演じたのでないだろうか。
なんてことを思ったのは、宇多田ヒカルの歌う主題歌「花束を君に」が亡くなった人への想いのこもった歌だからかもしれない。

病気の花山


150回では花山伝説が語られる。
いつも文字数ぴったりに書いて、最後の1行までぴったり埋まっているというエピソードだ。出版社編に入ってから10週めにしてようやく編集者独特の仕事の話が登場したと感慨深かった。

ウェブの記事が増えてきたいまでは文字数ピッタリに書く行為のありがたみは減った。
ウェブは読み手の環境でレイアウトが変わってしまうが、紙媒体はそうはいかない。
1行が何文字で、それを何行書くか、デザイナーが指定した「レイアウト」に合わせて記者は原稿を書く。例えば17文字×15行と指定されていたら、17文字×14行で終わらせるわけにはいかない。
15行あればいいんでしょと、15行目に1文字だけでもあればいいわけでもなく、1行17文字ぴったりが好ましいが、せめてその半分以上は埋めるようにと編集の仕事をはじめたときに教わる。なかには15字くらいまでは書けと厳しい編集者もいる。
ひとかたまりの数字(年号とか)や単語が行の最後と次の行の頭に別れることも避けるため、文章を変更して調整したりもする。
せっかく原稿できちっと17文字×15行に収めたにもかかわらず、入稿前の文字校正などによって文字が詰まってしまうこともある。ゲラ(試しに印刷されたもの)が出てきたときに、最後の行の文字が足りなくなっていたら、なんとしても埋めなくてはならない。当然ながら文字が15行以上にはみ出していたら全力で文章を縮める。

雑誌や新聞の記者は原稿を好きな分量だけ書く仕事ではなく、限られた範囲の中で必要なことを書くのが仕事。でも入稿ギリギリにこれをやる作業はけっこう大変・・・。
時々、新聞のラテ欄で行頭を読むとメッセージが隠れていることが話題になるが、それは、レイアウトに合わせてぴったり原稿を仕上げるテクニックの賜物である。

さて、
常子は、寿美子(趣里)から仕事と家庭の両立が難しく辞めたいと聞き、女性がもっと暮しやすくするために社内の仕組みを変えようと考える。

いよいよ残り1週! 最後の6回、ぴったり締めていただきたい。
(木俣冬)