写真撮影/鈴木さや香

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とげぬき地蔵の門前町としてにぎわう「巣鴨」(東京都豊島区)の地蔵通商店街は、お年寄りが多く集まる「通称・おばあちゃんの原宿」として有名ですが、ここ数年、人の流れに若干変化が起きているようです。そう、意外なことにお年寄り軍団に混じって20〜30代の若い人の姿が増えてきているらしいのです。とはいっても、今どき風のカフェや、日本初上陸のスイーツ店が新しくオープンしたというわけではありません。商店街には大福や煎餅(せんべい)を売る和菓子店や、シニア向けの洋品店、純喫茶などが延々軒を連ねているだけで、若い人を引き付けるような要素はほとんど見当たらないのが現状です。それなのに、なぜここ数年、巣鴨を訪れる若者たちが増えてきたのでしょう?

レトロな商店街が若者たちの目には新鮮に映っている?

疑問を抱いた取材陣は、早速、とげぬき地蔵の縁日を狙って現場に足を運んでみることにしました。商店街を見回してみると、相変わらずおばあちゃんたちの姿が目立つものの、食堂の前に若者グループが列をつくっていたり、カップルがのんびり散策を楽しんでいたり……確かに若い人の姿もちらほら目につきます。カップルのひと組に「何を目的に巣鴨を訪れたのですか?」と声をかけてみたところ、こんな答えが返ってきました。

「恵比寿や代官山のカフェ巡りや、お台場のアミューズメントといった、いかにもなデートコースも嫌いじゃないけど、最近、二人の間では、昭和っぽいレトロな街をぶらぶらするのがブームなんです。なんでもない街でも好奇心を持って歩いてみると、いろんな発見があるんですよ」(男性・24歳)
「おばあちゃん世代にとっては巣鴨は懐かしい街に感じられるようですが、私たちの世代にとっては逆に刺激的。普段は足を踏み入れないような純喫茶に入ったり、塩大福や煎餅の食べ歩きを楽しんだり、ゆったりとした時間のなかで非日常的なデートを楽しめるのがいいんです」(女性・22歳)

一見、時代から取り残されたようにも見える昔ながらの商店街も、今どきの若者たちの目には、逆に新鮮に映っているようです。オヤジたちが集まるセンベロ居酒屋が密集する赤羽や北千住にわざわざ出かけていって飲むのも、最近の若者の間では静かなブームとなっているようですが、デートスポット選びについても同様の“ハズし傾向”が進みつつある、と考えていいのかも知れません。

【画像1】巣鴨名物の赤パンツを販売するマルジ洋品店にも若者の姿が目立つようになった。ちなみに千原ジュニアもこの店の赤パンツの愛用者だとか(写真撮影/鈴木さや香)

【画像1】巣鴨名物の赤パンツを販売するマルジ洋品店にも若者の姿が目立つようになった。ちなみに千原ジュニアもこの店の赤パンツの愛用者だとか(写真撮影/鈴木さや香)

都会では失われつつある人間的なふれあいがここには残っている

また、地蔵通商店街に今年5月にオープンした古着屋「humor(ユーモア)」の店主(27歳)に、「なぜ巣鴨を出店場所として選んだのでしょう?」と尋ねてみたところ、彼は次のように語ってくれました。

「最初にこの商店街を訪れたときに、人間臭くてすてきな街だなぁという印象を抱いたのがきっかけで、巣鴨に店を開くことにしたんです。昔ながらのレトロな雰囲気も魅力ですが、個人的には、都会でありながらも人間的なふれあいが今も残っているのがこの街の一番の魅力だと思うんです。風邪をひいたというと、頼んでもいないのに近所の店の人が薬を持って来てくれたり……この街では人と人との距離感がすごく近いんです。田舎育ちのせいでしょうか、そこに居心地の良さを感じちゃうんですよ」(humor店主・山本さん)

【画像2】熱く巣鴨愛を語る、古着屋「humor」店主の山本さん(岐阜県出身・27歳)。お店はとげぬき地蔵近くのビルの2階にある(写真撮影/鈴木さや香)

【画像2】熱く巣鴨愛を語る、古着屋「humor」店主の山本さん(岐阜県出身・27歳)。お店はとげぬき地蔵近くのビルの2階にある(写真撮影/鈴木さや香)

なるほど、若者たちが巣鴨の街に注目するようになったのは、昔ながらのレトロな商店街が残っていて散策が楽しめるだけでなく、そこで暮らすハートウォーミングな人々との心のふれあいにもあったようです。
一昔前までは、都会で暮らす若者たちは、最先端のものに憧れ、クールな個人主義をよしと考える人が多かったはずですが、ここ数年は、逆のベクトルへと向かう「揺り戻し現象」が起きていると考えることもできそうです。

ちなみに、とげぬき地蔵は、体の痛み(とげ)を抜いてくれる御利益があるとされ、今までは足腰や肩の痛みに悩むお年寄りに人気でしたが、今後は、巣鴨の街自体が、心のトゲを抜いてくれる癒やしのスポットとして、さらに広い世代に人気が高まっていきそうな気配です。そうなると、ご本尊はお地蔵様ではなく、商店街とそこに住む人間ってことになるのかなぁ……。いずれにせよ、巣鴨は、おばあちゃんたちだけに独り占めさせとくのはもったいない街であることは確かです。まだ出かけたことのない人は、ぜひ一度出かけてみてはいかが?

構成・取材・文/中村宏覚

SUUMO 次にくる住みたい街はここだっ! 〜巣鴨編〜