『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(橘玲/新潮社)

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「何をやっているんだ!」と怒鳴り声が自分に向けられた。仕事上でミスをしていたにもかかわらず、自分が犯した過ちを見たくないものだと目を背けていた結果。つまり、逃げ回った結果の叱責だった。この失敗で得たものは、見たくないものから目をそらし続けても害あれど利益は一つもないということ。しかし、多かれ少なかれ見たくないものを抱えているのが人間だろう。人の評価や出来の良くなかった模試の結果、最近めっきり冷たくなった彼女の本当の気持ちなど様々だ。

 そんな目を背けたい真実を伝える一冊が『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(橘玲/新潮社)だ。本書では、遺伝・見た目・教育にまつわる「不愉快な真実」を様々な研究結果や統計データをもとに伝えている。

 例えば、教育に関して幼児教育の記載がある。小学校に就学させる前に、英語に特化し、バイリンガルを目指す幼稚舎に通わせたり、小学校へのお受験に向けた“小学校受験専門塾”のような幼稚園に通わせたりする家庭も多い。しかし、「幼児教育はたしかに子どもの学力を向上させるが、その効果は就学後1年程度で消失してしまうのだ」という。もちろん幼児教育の全てが消失してしまうとは限らないだろうが、そのような真実の側面があることを知っておいて損はないだろう。

 また、反社会的な人間は「心拍数が低い」傾向にあるということも述べられている。心拍数が低い人は「恐怖心の欠如」「共感力の低さ」「刺激の追求」の3つの特徴が表れ、結果として、犯罪行為に手を染めてしまう傾向があるという。その反面、ベンチャー企業の立ち上げなどの成功者は、失敗するかもしれないという恐怖が欠如した心拍数が低い人間が有利なのではないかとも語っており、一概に悪い傾向であるということではないようだ。

 中でも最も興味深かった真実は人の見た目による「美貌格差」の説明だ。

 顔の美しい・醜いが損得に直結することは想像に難くない。顔が美しい女性は、多くの男性からアプローチされ、言うなればイケメンで金持ちの男性と結ばれてという図式が思い浮かぶ。もちろん男性も見た目が悪ければ、女性に相手されず生物学的に子孫を残すという目的を達成しにくくなるだろう。実際にどれほどの損得が生じているかというと、本書によると美人は8%の得、不美人であれば4%の損。具体的に20代女性、平均年収300万円で考えると、美人は年24万円を受け取り、不美人は年12万円のペナルティを支払う計算だ。年単位でこれほどの差が生まれるのかと感じていたが、一生涯で計算するとさらにその差は広がり、3600万円にも及ぶという。

 ここまでの「美貌格差」についての結果は、正直想像の範囲内。しかし、男性の「美貌格差」の真実には驚きを隠せなかった。美形の男性は普通の見た目の男性に比べ4%ほど収入が高いが、容姿の劣る男性の場合には13%の損をするという結果だった。つまり女性よりも男性の方が、見た目に対する世間の風当たりが強いということになる。美醜を気にするのは主に女性で、男性は心で勝負だなどと呑気なことを言っていられない。

 綺麗ごとは居心地がいい。いつも自分のことを褒めてくれるような人と一緒にいれば、その場が楽しく傷つくこともないが、成長もない。自分を成長させるのはいつも本書に書かれているような「不愉快な真実」だ。仕事でミスをしたならば次回はそうならないよう努めなければいけない。冷たい態度をとる恋人とは相手の気持ちと向き合い、何ができるかを必死に考えるべきだ。自分の見た目にコンプレックスがあるのであれば、清潔な服装・体型維持などを心がけるだけで印象はぐっと変わるはず。本書を読み、目を背けたい真実との向き合い方を再認識することができた。

文=布施貴広(Office Ti+)