【プロダクトヒストリー】整髪料 〜ヘアスタイルの流行とともに進化〜

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ムースにジェル、ワックスにグリースなど、十代の頃から使ってきた整髪料。長年お世話になっておきながら、その歴史や起源はまったく知りませんでした。

そこで創業400年、日本で一番長い歴史を持つ化粧品メーカーの柳屋本店へ伺い、流行した髪型を振り返るとともに、スタイリングに欠かせなかった整髪料の歴史を振り返りってみましょう。

 

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■日本における整髪料の隆盛は江戸時代から始まった

「日本における整髪料の発展は、江戸時代の髷(まげ)を束ねて艶を与えるための鬢付け油や鬢水(びんみず)でした。日本では古来より黒々とした艶のある黒髪が美しいとされていました。また、道は舗装されていないためほこりっぽく、家に風呂はなく毎日髪を洗えないので、髪に艶を与える鬢付け油が重宝されたのです」(柳屋本店研究所所長・正田潔さん、以下同)

そして大きな変革があったのが明治時代。「断髪令」により男性が髷を結わなくて良くなります。

「男性の髪型が大きく変わり、ポマードが台頭します。その後は、時代とともにさまざまな髪型が流行し、その髪型に合わせて整髪しやすいスタイリング剤が次々に発売されてきました。男性は若いときに使っていた整髪料をそのまま何十年も使い続ける傾向があります。さらに時代に合わせて新商品が発売されるため、今日ではバリエーションがどんどん増えています。今後も、ヘアスタイルの流行や化学の進歩によって増え続けるでしょうね」

続いては、ヘアスタイルの歴史を紐解きながら、その時代にヒットした整髪料を振り返っていきましょう。

 

■時代の移ろいとともに進化した整髪料

▼江戸後期<鬢付け油>

03_リュウセイコウ江戸時代の男性は、ちょんまげなど長髪が基本。これを結うために固形の鬢付け油を使用していました。香りを付けた柳清香(りゅうせいこう)は大人気商品になり、黎明期の柳屋を盛り立てたそうです。なお、鬢付け油は今でも一部メーカーで少量生産しており、力士の大銀杏などに使われています。力士特有の香りの元は、これだったんですね。

 

▼明治後期<ポマード>

04_F0A4608ポマードと聞くと昭和世代のリーゼントを思い浮かべますが、日本で作られるようになったのは明治時代でした。

1871年に新政府より発令された断髪令により、男性の髪はちょんまげから近代の長さに。しかし、日本人の髪は非常に硬く、西洋人のようになでつけるのが難しい。そこで粘着力が強いポマードが重宝したのです。

特に、液状のひまし油とワックス成分の木蝋(もくろう)を主成分とした良質の「柳屋ポマード」はヒット。その後も、1947年頃にイギリスで流行したリーゼントスタイルが日本でもブームになるなど、度々ポマードが注目されています。

 

■現代に近づくにつれバリエーションが豊かに!

▼1950年代<ヘアクリーム>

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水と油と乳化剤を混ぜた液体。近年はヘアケアに使われていますが、当時の製品は近年のものより硬く、整髪料として使われていました。これまでの油だけだった整髪料よりも軽くべたつかず、やわらかく自然な艶に仕上がるのが特徴です。

当初は女性をターゲットにしていましたが、次第に男性にも広まりました。元内閣総理大臣の橋本龍太郎のオールバックはポマードと思われがちですが、実はヘアクリームでセットしていたそうです。

 

▼1960年代<ヘアリキッド>

加山雄三に代表されるスポーティな七三分けのアイビールックや、銀座のみゆき通りに集まる「みゆき族」が流行し、ポマードよりも自然な艶で、ふっくらと仕上げられる液体油をアルコール水に溶かしたヘアリキッドが流行します。特にバイタリス(ライオン)が人気でした。

また、それまで単品だった男性化粧品がスキンケアも含めたブランド展開するようになります。MG5(資生堂)や、ハリウッドスターのチャールズ・ブロンソンを起用したマンダムのCMが話題になりました。

 

▼1980年代<ジェル、スプレー、フォーム>

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シブがき隊などアイドルが取り入れていたパーマや、X JAPANといったバンドに見られた長髪を立ち上げたスタイルなど、髪型は多様化します。それらの髪型を長時間維持するため、樹脂でコーティングする整髪料が誕生しました。

形状によりジェル、スプレー、フォームの3種類があり、ジェルは柳屋の「ジェルドライ」、スプレーはサンスターの「VO5フォーメン」、ムースは資生堂の「メンズムース」やマンダムの「ギャツビー」が代表的でした。

 

▼1990年代<ワックス>

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毛束をねじって根元から立ち上げる、美容院で流行り始めていた髪型を素人でも作りやすいワックスが市販化されました。固形の蝋(ワックス)を主体としており、髪型をキープしながらも樹脂のように固まらないので整髪後に崩れても整えられます。

2000年代になると、英国人サッカー選手のデビッド・ベッカムのソフトモヒカン(ベッカムヘア)など、立体的なスタイルが若者の間で主流となりました。

 

▼2010年代<グリース>

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サイドとバックを刈り上げたツーブロックやオシャレな七三分けなど、タイトなバーバースタイルが流行し始めると、艶があり髪をタイトにまとめられるグリースが注目されるようになりました。

グリースはポマードに水を加えて扱いやすくした「水性ポマード」の進化形で、1970年代の頃から売られていましたが、最近のものはよりハードで使用感がワックスに近いものなど、バリエーションが豊富になっています。

(文中敬称略)

 

柳屋本店 >> http://www.yanagiya-cosme.co.jp

 

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(文・写真/山口清憲)

やまぐちきよのり/エディター・ライター やまぐちきよのり/エディター・ライター

1978年生まれ。大学工学部卒業後、自動車専門誌の編集部勤務を経て2010年に独立。主に乗りものやメカニズム系のジャンルを得意としている