「不安な気持ち」に克つために

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執筆:近藤 俊明(東京未来大学教授、副学長)


私たちは、人と関わることが好きな人から苦手な人まで様々です。

誰もが皆、社交上手・社交好きである必要はなく、一人で居ることが好きであっても、それは個人の好みです。一人で居ることを楽しむことが出来るのは、人間的成熟の一つの特性であるとも言われます。

しかし、お母さんが人との関わりが苦手で、子どもの授業参観に出るのがつらいとか、誰かと話したいけれど人が怖い、などとなると事情は少し違ってきます。

不安症における2つのパターン

ほとんどの社交場面を避けたり、大変苦痛を感じながらでないと人と一緒に何も出来ないとなると、社交不安症と呼ばれる状態である可能性があります。

自分の表情や話し方などが、相手を嫌がらせているのでは、などと心配するようになると対人恐怖症と呼ばれることもあります。
そして、これらの不安症においても、基本的に他者が居る場面自体が不安である場合と、特に他者と話したりやり取りすることが怖い場合とに分けられます。

今回は他者とやり取りする以前に、人のいる場面自体が怖い・不安である場合の対応についてお話しします。

不安に慣れていくためには:その1

例えば、子どもの学校の参観日に参加するなどを避けたいと思う原因は、多くの場合、人前に出るときの不安感にあります。そして、このような不安への効果的な対応は大きく分けて2つあります。

1つは、不安を避けず、それに慣れてゆくこと。
もう1つは、不安になるような考え方に気づき、それをより事実に基づいた考え方に変えてゆくことです。

不安に慣れていくためには、いくつか方法があります。

不安になる状況を、不安感の低いものから次第に高いものへと10〜15シーンほど書き出し、リストにします。これを「不安階層表」と呼びます。
そして、リラックスした状態で(通常、リラックスするために腹式呼吸や漸進的筋弛緩法などのリラクセーショントレーニングなどを行います)、不安感の最も低いものを最初に選び、そのシーンを心の中で7秒間イメージします。
イメージしている間に不安にならなければ、次に不安感の強いシーンのイメージへと移っていきます。

不安になったら、同じシーンをもう一度繰り返しイメージします。

これを、1日1回、3〜4シーン(15〜20分ほど)毎日行い、最も不安の強いシーンが比較的楽に感じられるまで繰り返します。
この方法は、精神科医・ジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe)により考案され、「系統的脱感作法(けいとうてきだっかんさほう)」と呼ばれます。

不安に慣れていくためには:その2

また、同じリストを使って、イメージではなく実際に行うことを、「現実的脱感作法」と呼びます。イメージで行う系統的脱感作法が不安階層表の半分ほどまで来た頃、最初のシーンからもう一度実際に行うタイミングで、現実的脱感作法を始めるのが良いと言われます。

イメージでその状況に慣れていれば、実際に行うときにはかなり楽にできるようになっています。

現実の場面で行うときは、気をつけることがあります。
1つは、感情のコントロール。

実際に行っているとき、不安感がかなり強くなってこれ以上は自分で感情がコントロールできなくなりそうだと感じたら、そうなる前にストップすることです。
そして、少し時間をおいてリラックスしてから、または次の日に、もう一度同じことをやってみます。こうしながら、最後の最も強い不安を感じる場面までを、実際に行います。毎日20〜30分、無理をしないで、何週間かかけて行います。

もう1つは、練習したいときに必ずしも現実の場面が存在しないときもあることです。
スーパーの人ごみや、電車に乗るなどはいつでも経験出来ますが、学校の参観日などはそうはいきません。ご近所や、マンションの集会など、よく似た場面を探して積極的に参加するというような工夫が必要になります。

事実に基づいた考え方で物事を見る

次は別の不安に克つ方法をご紹介しましょう。それは「事実に基づいた考え方をする」ことです。

人によく思われないといけない、または、人から変な人だと思われたらどうしよう(それはいやだ、我慢できない)、などは本人が無意識のうちに、自分で自分を不安にしている考え方です。

事実は、人にそれほどよく思われても、思われなくても、特にどうというほどのことはありません。ましてや「この世の終わり」では決してありません。この、「事実」に基づいた考え方を、気がつくたびに自分に言い聞かせる練習をすることです。

またコミュニケーションの技術も必要になります。コミュニケ-ションの基本は、相手と関わることです。関わり行動(よく関わるための技法)や傾聴の技法と言われる技術などを身につけることは、人との関わりを楽に、有意義にするために役に立つと思われます。また、自分の思ったことを相手に伝える技術を修得するための、自己主張訓練などがあります。

不安感が強い時は専門家のサポートを

最後に一言。
これまで見てきた一連のことを行うには、誰にでも容易なことかというとそうでもなく、独力で行うには困難が予測されます。

特に、普段の不安感が強いときは、無理をせず、認知行動療法などになじんだカウンセラーや臨床心理士、精神科医などの手助けを受けることを考えると良いでしょう。専門家のサポートを受けながら、時間をかけて行えば、効果の高い方法です。


<執筆者プロフィール>
近藤俊明(こんどう・としあき)
東京未来大学教授、副学長: 早大一文、NY市立大学(修士)、ホフストラ大学(NY州、博士)卒業後、NY州にて特別支援学校、病院などに勤務、NY市にて心理クリニック開業、20年間滞米後、帰国。東京福祉大学を経て現職。サイコロジスト(NY州ライセンス)、スクールサイコロジスト(NY州資格)、臨床心理士、埼玉県スクールカウンセラー。