トリプタンは片頭痛治療の救世主(shutterstock.com)

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 「良薬は口に苦し」と言いますが、今回は片頭痛の急性期に使う薬の話です。頭痛の治療薬は大きく分けて、発作の痛い時に飲む「急性期薬」と、痛みの回数や程度を少なくする「予防薬」の2種類があります。今回、取り上げる「トリプタン」は急性期薬で、片頭痛治療において患者さんの日常生活(QOL)を大きく変えるほどインパクトがあります。

 この薬が日本で発売されるようになったのは2000年の前半。それまで頭痛発作が始まると寝込んでしまい、仕事や生活にも支障をきたしてきた多くの患者さんが、この薬によって開放されました。内服のタイミングさえ間違わなければ、寝込んでしまうことがなくなったのです。また、重篤な副作用も少なく安全性も高い薬で、一部のトリプタンには飲みやすいよう味付けがしてあります。

日本で使用されているトリプタンは5種類

 現在、日本では、「スマトリプタン」「ゾルミトリプタン」「リザトリプタン」「エレトリプタン」「ナラトリプタン」(すべて薬剤名)の5種類のトリプタンが使用できますが、いずれも医師の処方箋が必要な薬です。どのトリプタンを使用するかは、それぞれの特徴をもとに患者さんと相談して選択しています。

 「スマトリプタン(商品名:イミグラン)」は、錠剤(50mg)、点鼻薬(20mg)、注射薬(3mg)と、最も剤型の多い薬剤です。効果現れる時間は、注射薬が最も早く(数分)、次に点鼻薬(10〜15分)、錠剤の順になります。点鼻薬は鼻腔から口腔に流れてくると「苦い味」がすることがありますが、使い方に慣れると問題はなくなります。小児・妊婦での使用例の報告もあります。

 「ゾルミトリプタン(商品名:ゾーミッグ)」は、錠剤(2.5mg)と口腔内速溶錠=RM錠(2.5mg)の2種類の剤型があります。オレンジ味に味付けされているため女性に好まれ、ゾルミトリプタンを指定される患者さんも多くいらっしゃいます。

 「リザトリプタン(商品名:マクサルト)」は、錠剤(10mg)、口腔内崩壊錠=RPD錠(10mg)の2種類の剤型があります。この薬剤は「ミント味」で、好みが分かれます。総じてミント味が嫌いな方が多い関西では人気がないと噂されています。しかし、効果発現の立ち上がりが早く、頭痛に対する速効性があるため、この薬を必要とされる患者さんも多数います。

 「エレトリプタン(商品名:レルパックス)」は、無味無臭の薬剤です。この5種類の薬剤の中では目立たない存在ですが、日本でのトリプタンの中では売上がNo1となっています。

 「ナラトリプタン(アマージ)」は、効果発現はゆっくりですが、効果の持続が期待できる薬剤です。片頭痛の痛み時間が長い患者さんや片頭痛が一旦おさまっても再発が多い患者さんに使用すると良い薬です。

 トリプタン共通して多い副作用が、のどと胸のつかえ感や締めつけ感、圧迫感などの症状です。また、めまい、眠気、吐き気なども多い症状です。このような副作用の症状は、トリプタンの種類の変更や、飲み方のタイミングによって改善できることも多いので、処方された先生とよくご相談ください。
5種類のトリプタンの使い分けは?

 では、これらトリプタンをそのように使い分けて服用したらいいのでしょうか?

 オレンジ味の「ゾルミトリプタン(商品名:ゾーミッグ)」とミント味の「リザトリプタン(商品名:マクサルト)」は水なしで口腔内に溶けるので、どこでも飲めるメリットがあります。そのため仕事中など水が近くにない時に使いやすいと言われています。ただし、口腔から吸収される訳ではないので、唾液と溶けた薬剤を早く飲み込む必要があることを忘れないでください。

 早い効果の「リザトリプタン(商品名:マクサルト)」と効果の長い「ナラトリプタン(商品名:アマージ)」は、自分の片頭痛発作時のタイミングを熟知して服用しましょう。たとえば「このまま痛みが続くと、この後で寝込むくらい頭痛が痛くなる」と予測できたら、早い効果のマクサルトを内服しましょう。そうすれば寝込む頭痛を抑えることができるなど、自分の頭痛と内服薬剤の相性のようなものがあります。また、一旦おさまった片頭痛が再度ぶり返して痛みが強くなるようなタイプの頭痛が多い人には、アマージが良い適応かもしれません。

 吐き気や嘔吐をともなう片頭痛発作で水も飲めないような場合は、内服薬ではなく点鼻薬や注射薬があるスマトリプタン(商品名:イミグラン)が有効です。

 これらトリプタンは医師の処方箋のいる薬剤ですので、医療機関の医師とよく相談されて、みなさんの片頭痛発作の痛みをうまくコントロールされることを期待しています。


西郷和真(さいごう・かずまさ)
1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授、近畿大学医学部附属病院神経内科。
東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。
日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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