カルシウムサプリが認知症を招く?(shutterstock.com)

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 骨の中がスカスカになってもろくなり、ちょっとしたことで骨折しやすくなってしまう骨粗鬆症。

 特に更年期以降の女性に多く、我が国の50歳以上の女性の3人に1人がかかっており、もはや国民病といってもいい。そして、高齢者が要介護になる原因の約1割が、骨粗鬆症による骨折だ。

 そこで現在は骨粗鬆症を予防するために、医療機関でカルシウムサプリメントが広く処方されている。だが、そのカルシウムサプリメントにより、高齢女性が認知症になるリスクが上昇してしまう可能性があることが、新たな研究で示された。

脳卒中を経験者は認知症のリスクが7倍に

 今回の研究を率いたのは、スウェーデン・ヨーテボリ大学のSilke Kern氏。「カルシウムサプリメントが健康に与える影響は、近年、疑問視されてきた。

 別の研究でも、カルシウムサプリメントが女性の心筋梗塞や脳卒中のリスクを上昇させる可能性が示唆されている」とその背景を述べている。

 今回の研究は、認知症ではない70〜92歳の女性700人を2000年から5年間にわたって追跡。研究の開始時と終了時に、記憶力や思考力などの複数の検査を実施した。

 また、研究を開始する時に447人に脳のCT検査を実施したところ、71%の人に脳血管疾患の兆候とも言われている「白質病変」が見られた。

 そして、開始時点では98人がカルシウムサプリメントを使用しており、既に54人が脳卒中の既往者だった。追跡期間中に54人が脳卒中を発症し、さらに59人が認知症を発症した。

 その結果、まずカルシウムサプリメントを飲んでいた女性は、そうでない女性に比べておよそ2倍、認知症を発症しやすいことが判った。さらに詳しく調べると、脳卒中の既往歴を持つ人や、白質病変のある人だけがこのリスク上昇に寄与していることが判明した。

 脳卒中の既往歴があってサプリメントを摂取していた人では、同じく既往歴があってサプリメントを摂取していなかった人に比べて、認知症発症のリスクが7倍近くに跳ね上がった。

 白質病変が見られる女性の間では、サプリメントを摂取していると認知症の発症リスクが約3倍に。そして、脳卒中の既往歴がなく白質病変もない女性では、カルシウムのサプリメント摂取による影響は見られなかったという。

 一連の結果の理由は不明だが、「カルシウムは細胞死において重要な役割を担っており、血中カルシウムが高いとニューロンの早期死滅が促進される可能性がある」とKern氏は説明。過剰なカルシウムが、脳血管に何らかの影響を及ぼす可能性もあるという。

 ところが一方で、「この研究は観測で得られたものだということを強調する必要がある」とし、カルシウムのサプリメントが認知症の原因であるとの推測には慎重な姿勢を示している。

 米ラッシュ大学医療センター(シカゴ)のNeelum Aggarwal氏も「カルシウムが脳の化学的性質にも影響する可能性がある」との考えを示す一方、「カルシウムだけではなく、複数の栄養素の組み合わせに着目してさらに研究を重ねる必要がある」と指摘している。
カルシウムはできるだけ食品から摂取

 今回の報告は、あくまでもカルシウムのサプリメントが認知症リスクを高める可能性を明らかにしただけで、はっきりとしたことはまだわからない。そしてこのような論文が発表されたからと言って、カルシウムの摂取自体を避ける必要はない。

 Kern博士も「食べ物から摂取するカルシウムは脳にとって安全であり、血管を保護する作用もある」ことを強調している。日本国内の研究でも、乳製品から摂取するカルシウムが血圧を下げ、脳卒中を予防する可能性が指摘されている。

 特に女性はできるだけ食品からカルシウムを摂る食習慣を心がけて、サプリに頼りすぎないほうがいいだろう。「まだ若いから骨粗鬆症は無関係」などと油断してはいけない。若いうちから骨量を増やしておくことが大事だ。

 成人が1日に必要なカルシウム摂取量はだいたい600〜700mg。しかし、それに対して、日本人は平均500mg弱しか摂取できていない。平均摂取量と推奨量から考えると、普段の食事に加えて1日あたり200〜400mgを余計に摂取するといい。

 食品100g当たりのカルシウム含有量が多いのは、煮干2200mg、エンドウ豆1300mg、プロセスチーズ630mg、シラス干し520mg、シシャモ350mg、油揚げ300mg、牛乳110mgなど。

 毎日の食事で無理なく摂るには、特に牛乳や乳製品、豆製品が効率が良い。若いうちからのプラスαを習慣にしよう。
(文=編集部)