『アドバイス罪という考え方 〜あきまんのネットメディア百年戦争〜』(あきまん/一迅社)

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 TwitterやLINE、Facebook、mixiといったソーシャルネットワークサービス(SNS)を使用している人が多い現代。その中で、SNSで煩わしさを感じたことがある人は多いはずだ。LINEで既読スルーされたり、Facebookで「いいね!」が少なかったり、Twitterで知り合いにブロックされたり…。便利で楽しいはずのSNSが、現代人に新しいストレスをもたらしているのである。

『アドバイス罪という考え方 〜あきまんのネットメディア百年戦争〜』(あきまん/一迅社)では、そんなSNSで感じるストレスとの付き合い方を、著者が体験を踏まえて教えてくれる。SNSでのコミュニケーションに悩んでいる人たちには、心が楽になる考え方に気づかせてくれることだろう。

 作者のあきまん氏は、数々のゲームやアニメの制作に関わってきたイラストレーターだ。90年代のインターネット普及期からその革新性に気づき、ホームページを作るなど積極的に関わってきたあきまん氏は、mixi、TwitterといったSNSにも当然のようにハマっていく。エゴサーチを一日100回行っているというのだから、そのハマり具合は相当なものだ。しかし、SNSを楽しむ一方で、あきまん氏はフォロワーのリプライにストレスを感じるようになっていく。

「あなたの行き先はあっちです」
「カスが!」

 これはあきまん氏が、SNS上におけるストレスの一例を表現した一コママンガの台詞である。にこやかに「あなたの〜」とアドバイスを送ってくる見ず知らずの人間に対し、あきまん氏もまたにこやかな顔で悪態を返している。互いのキャラクターに浮かんだ笑顔は、本当の人間性を読み取れないSNS上のやりとりを絶妙に表していて、怖い。

アドバイスって、こちらを気にしてくれているということだから、原則的にはすごくいいことなんですよ。でも、僕の行き先を知っていて、それを指示できる人は、少なくとも知らない人や会ったことのないフォロワーではないだろう、という話です。

 あきまん氏の書き込みに対ししたり顔でアドバイスを送ってくる見ず知らずの人間、これをあきまん氏は「アドバイス罪」と名付ける。気軽なつぶやきにも一斉に送られてくるリプライの面倒臭さや、つぶやきの内容に関して一切の利害関係がない部外者からのアドバイスは、確かに煩わしく感じても不思議ではない。SNSでは会ったことのない相手でも距離を近く捉えがちだが、結果、無責任な言葉を他人に向けやすくなってしまう。あきまん氏が体験したのはまさしく、そんな問題だった。

 あきまん氏がアドバイス罪への対処法として提唱するのは、まず粛々とブロックを続けてタイムラインを自分の楽しめるものへと変えること。次に、他人の意見をやすやすと受け入れないこと。ベテランネットユーザーとして、クリエーターとしての矜持が感じられる納得の対処法である。

 その他、あきまん氏は一方的に要求を突きつけてくる「リクエスト罪」、wwwをつけすぎる人に適用する「草罪」など、次々にSNSにおける新しい罪状を命名していく。「あるある」と共感を覚える一方で、自分が罪状に当てはまっているのではないかとドキリともさせられる。

 また、本書の後半では「炎上に遭遇したらどうしますか?」と「ネットメディアを仕事に活用するには?」という、二つの疑問についても考察がなされている。特に、炎上について「誰にも振りかかるもの」としたうえで、「気に病む必要はない」、「世間には謝らなくてよい」と述べていくくだり は目から鱗だ。実際に炎上問題に直面している人からすれば、心を晴れやかにしてくれることだろう。

 あきまん氏の文章や、挿入される解説マンガの数々は冷静にインターネットコミュニケーションの注意点を明確にしていく。そこから感じとれるのは、ストレスもネットの一部だと認めたうえで、「いかに自分がストレスから解放されて楽しむか」という主体的な姿勢である。他人に振り回されるのではなく、自分が心底楽しめるようにSNSと向き合ってみることが、最終的にはトラブルを回避する方法にもなるのではないだろうか。

文=石塚就一