撤去された銀歯が再利用されるケースもあるという

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 歯科治療には欠かせない、クラウン(被せもの)や入れ歯などを製作するのが「歯科技工士」だ。重要な役割を担っているにもかかわらず、低収入、長時間労働を強いられ、その結果、銀歯の精度が低下して虫歯の温床となる等、患者にも多大な影響が及んでいる。

 今回、東京、名古屋、大阪、神戸、福岡の歯科技工士から話を聞いたところ、共通して歯科医の理不尽な要求や、パワハラまがいの言動も挙った。

 技工指示書に疑問点があったので、歯科医に質問したところ、「機嫌悪くなって、『そんなの知るか! 出て行け!』って言われたことがあります。トラブルがあったわけでもないのに、その仕事は全部お返ししました」(神戸の歯科技工士)という。

 最も多かったのが、『再製』と呼ばれる作り直しを無料で要求されるケースだ。

「技工士を歯科医の奴隷と勘違いしている歯科医がいます。“クラウンの装着に失敗したから、やり直して下さい。再製です”とある歯科医が要求してきました。2回作ったら私らの利益はゼロです。そう言っても“他のラボは黙って作り直してくれる”って。腹に据えかねて“お前らの犬ちゃうぞ!”とケンカして関係は切れました」

 銀歯の場合、技工の精度が低かったり、長期間の経過で脱落するケースがある。そうした銀歯が、患者には知らされないまま“再利用”されているとの驚くべき証言もあった。

「歯科医が撤去した銀歯を集めて、技工所で溶かして再利用させるケースは沢山ありますよ。これは溶かした時に、とても臭い匂いが発生するんです。高温だから、雑菌はなくなるだろうけれど、私はやりたくはない。先生としては、保険で同じ額が請求できるから、金属代が丸々浮いて儲かる。本当はダメなはずですけど、業界の暗黙の了解です」(50代歯科技工士)

 保険の銀歯に使用されている金銀パラジウム合金は、価格が高騰して10年前の2倍になっている。これに目をつけた一部の歯科医が、許されざる不正行為を行なっているとの証言も複数得られた。

「技工指示書では金銀パラジウムと記入して、ニッケルクロム合金を使って銀歯を作らせる歯科医がいます。金銀パラジウムで保険の請求をするので、安いニッケルクロムとの差額が儲けになるわけです。可哀想なのは気づいていない患者さんです」(匿名・歯科技工士)

 クラウンの場合、診療報酬が定めた金銀パラジウム合金の材料料は4930円。一方、ニッケルクロム合金はわずか100円なので儲けは大きい。この手口については大阪、兵庫、九州で同様の証言があった。

 忘れてならないのは、ニッケルクロム合金の銀歯が、患者に様々な不利益をもたらす可能性だ。

 ニッケルクロム合金は、普通の銀歯に見えるが、極めて固く、噛み合わせの歯に悪影響を及ぼす可能性があり、ほとんど使用されていない。発がん性を指摘する専門家もいるし、異種金属によって発生するガルバニー電流の原因にもなる。こうした不正は一部の歯科医だと考えられるが、今も続いていることは確かだ。

「保険の不正請求になる行為なので、加担したくないが、仕事が切られるので断れない」(40代歯科技工士)

※週刊ポスト2016年9月30日号