仕事のストレスで胃に穴が開きそう…。サラリーマンなどは、そう思うことが一度や二度はある。ところが最近は、この胃に穴が開く「穿孔」自体が減る傾向にあるという。それは、ピロリ菌除菌の普及や、不況で会食の機会が減って暴飲暴食が少なくなったことも影響している。
 しかし、代わって今注目を集めているのが、大腸の穿孔だ。食生活や生活スタイルが変わり便秘が激増していることや、大腸内視鏡検査の普及などによって、目立つようになったのだ。

 日本消化器病学会の評議員を務める、世田谷医療クリニックの村林康三院長はこう言う。
 「消化管で穿孔が多いところといえば、胃や十二指腸。ただし、胃や十二指腸は、胃液の消毒作用もあって細菌が繁殖しづらく、穴が開いて内容物が漏れても、すぐには重症の腹膜炎を起こしにくい。ところが、大腸の穿孔は大変危険です。大腸は下水道と同じで、体内の排せつ物が移動する。病原性の細菌も繁殖しやすいため、中のものが漏れ出すと、すぐに重症の腹膜炎を起こしかねないのです」
 腹膜炎を起こすと、敗血症(感染症)からエンドトキシンショックとなり、死に至ることもある。

 では、大腸穿孔の原因となる病には、どのようなものがあるのか。
 前出の村林院長が続ける。
 「潰瘍性大腸炎や虫垂炎(盲腸炎)など、腸に起こった炎症が悪化したケースが多いのですが、最近増えているのが動脈硬化の進んだ高齢者の大腸穿孔。動脈硬化が進むと大腸の血液循環が悪くなり、必要な酸素や栄養素が通わないため、大腸の粘膜に潰瘍ができる虚血性大腸炎になります。また、血管が詰まる腸間膜動脈閉塞性という病もある。そうなると、血液が通わなくなった腸が破れやすくなるのです」

 これに便秘が加わると、大腸穿孔のリスクはさらに高くなるという。
 「例えば突然の腹痛や下痢、血便、さらに発熱、腹部膨満があったら要注意です。ただでさえ高齢者は大腸の働きが悪いうえ、水分を取らない生活をしていると、便が出ないばかりか、石のようにカチカチになる。これが大腸を圧迫して傷つけ、穴が開くことがあるのです」

 とはいえ、こうした高齢者に浣腸をすることは注意が必要だ。たまたま大腸が弱っている部分が肛門に近い場合、浣腸で圧力が高まり、簡単に穴が開いてしまう恐れがあるためだ。
 また、大腸を襲う病としてやはり恐ろしいのは、がんだ。厚労省の『平成26年人口動態統計』のがん死因では、胃がんを抜いて大腸がんが2位となった。

 大腸がんで注意すべきは、突然襲う「めまい」。その要因に、腸の異変が関係している場合があるためだ。
 「めまいの原因はいろいろあるが、腸に関係しているのは、突然クラッとする立ちくらみのような症状を言う。消化管で持続的に出血して貧血に陥ると、脳への血流不足となり、突如めまいを伴う症状が出ることがあるのです。人間ドックを受診された男性で、『貧血気味』と感じている人、便潜血検査が“陽性”と出た場合は要注意です」(血液関係に詳しい専門家)