こんな自由にお前は出会ったことがあるか――連続投資小説「おかねのかみさま」

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みなさまこんにゃちは大川です。

『おかねのかみさま』50回めです。

今回も六本木SLOW PLAYで書いてます。

※⇒前回「KRUG」

〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
美熟女(熟) 美琴が働く銀座の高級クラブ「サーティンスフロア」のママ
村田(村) 健太が師と崇めるノウサギ経済大学の先輩。元出版社勤務
ママ(マ) 蒲田のスナック「座礁」のママ。直球な物言いが信条
沼貝(沼) 杉ちゃんの先輩ベンチャー経営者で株主。脅迫事件の対処に勇躍
薄井(薄) 「アリファン」創業メンバー。アリンコの著作権に3億円要求
学長(学) 名前の由来は「学長になってもおかしくない歳のオッサン」の略

〈第50回 かきぴー〉
翌日 22:05 銀座 サーティーンスフロア

熟「いらっしゃいませー♡あら!ぬまぬま!お久しぶり!」

沼「こんばんはー!」

熟「3名さま?奥の席用意するからちょっとまっててね」

沼「ありがとう!」

薄「沼貝さん」

沼「はい!」

薄「こんなところ来なくてもいいですよ。僕もう帰ります」

沼「いいから!ね、ほら、もう問題が解決したんだから、こういうときはちゃんと乾杯をしておかないと」

薄「…」

熟「おまたせしました♡こちらへどうぞ」

沼「ありがとうございます!」

熟「ひさしぶりねぇ!いろんなお店行ってるのは聞いてるわよー」

沼「めっそうもございません。こちら薄井さん。僕らが今度一緒に上場させる会社の創業メンバーの方です」

熟「あらすごーい!おめでとうございます」

薄「あ、いや、その説明はおかしいですよ。だって…ぼくもう…」

沼「いいんです!さぁ飲みましょう!KRUGお願いします!」

熟「あらうれしい♡ KRUGおひとつ大至急ね」

死「カシコマリマシタ」

美「こんばんは…」

沼「こんばんはー!沼貝ともうします。ぬまぬまって呼んでね。君おなまえは?」

美「みことです♪ぬまぬまってかわいいですね」

沼「なにをおっしゃいますか。ミコトさんのほうがずっとお美しい!ねぇ!」

薄「…」

熟「ガミちゃん、グラスちょっと多くない?」

死「ギク」

沼「あ、いいですよ!ボーイさんもよろしければぜひ!」

死「イタダキマス!!!」

薄「あ、僕ちょっとでいいんで」

沼「アグリーです。じゃあこの少なめのやつね。みんな行き渡りましたか?いいですか?じゃあ、乾杯しましょうか。カンパーイ!」

熟「かんぱーい♡」
美「かんぱい♡」
死「ウェーイ!!!!」

同日 22:45 蒲田 スナック座礁

学「ママさんや」

マ「ナァに学長?」

学「わし、そろそろこの柿の種というものを食べはじめて40年くらいになるんじゃが」

マ「あらすごいわね」

学「飽きないもんじゃ」

マ「おいしいわよね」

学「でもな、たまにはなんか他のものがあってもいいんじゃないかともおもう」

マ「たとえば?」

学「そうだな。おせんべいで言えばぽたぽた焼きが好きなんじゃけどな」

マ「ぽたぽた焼きぃ〜?なんかオウチみたいになっちゃうじゃない。ここはスナックなんだからもっとこう緊張感もっていかないと」

学「ちがうんじゃママ。ちがう」

マ「なにが」

学「ワシがこの店にもとめているのはそんな夜の街っぽさじゃなくて、何も考えなくていい自由さなんじゃ」

マ「柿の種でもいいじゃない」

学「いいんじゃ。確かに柿の種でも。だけどこの小さめの入れ物に入った柿の種を三本くらいの指でつまむと必ず一粒落ちそうになるじゃろ。これがいけない」

マ「袋ごとどうぞ」

学「い…いいのか…わるいな…」

マ「どーーーーーーーーーーぞ」

学「ザー…モッシャモッシャ」

村「こんばんみー」

マ「あら村ちゃんいらっしゃい」

村「お、ジジイ、夜食か?」

学「自由だ。こんな自由にお前は出会ったことがあるか?」

村「よくわかんねぇけどお前は生まれつき自由だろ」

マ「むらちゃん今日は飲んでないのね?」

村「あ、うん、仕事長引いてな。マンションが売れなくて困ったもんだ」

マ「あらそうなの?」

村「明らかに売れなくなったなー。テレアポしてもガチャ切りが増えた」

マ「たいへんねぇ。景気わるくなるのかしら」

学「わるくなる。投資に値するものが市場からなくなってきた証拠じゃ」

マ「そうなの?」

学「回復まで10年くらいかかるがな。今回のはもう少し短いかもしれん。東京はな」

カランコロンカラーン

健「こ!こんばんは!」

マ「あらけんたくんいらっしゃーい」

村「おー起業家。どうした。バイトおわりか?」

健「それが…その…」

村「どうした?」

健「し、師匠!お金かしてください!!!」

村「は?」

次号へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

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〈イラスト/松原ひろみ〉