『スーパーメンチ -時代をプロデュースした男!-』 (C)2013 NoMoneyFun Films Inc. and A&E Television Networks LLC. All Rights Reserved.

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…前編「炎上商法の元祖!?」より続く

【映画を聴く】『スーパーメンチ -時代をプロデュースした男!-』後編
スタローンやシュワルツェネッガーを自宅に招き、シャロン・ストーンと恋仲に

音楽界で数々のアーティストのマネジメントを手がけるいっぽう、リドリー・スコット監督の『デュエリスト/決闘者』のプロデュースを皮切りに、映画界にも進出。マイケル・ダグラスやアーノルド・シュワルツェネッガー、シルヴェスター・スタローンらと交流を持ち、シャロン・ストーンと恋仲になり、これまでに40作以上の製作に携わっているという。

今では普通になっている“カリスマシェフ”の存在を確立したのも彼だ。料理人に十分な対価が支払われていない現実に憤り、テレビを巻きこみながら、さまざまな調味料や調理具を販売。シェフの金銭的、職業的な立場を引き上げ、これまでに100人以上のカリスマシェフを世に送り出している。料理を芸術の領域で扱われる産業に押し上げたその功績は、音楽、映画業界でのそれに勝るとも劣らないものだ。

ユダヤ人でありながら仏教徒になり、チベット基金の活動を通じて知り合ったダライ・ラマに自ら料理を振る舞ったり、4人の孤児の父親となるなど、そのキャリアとは関係のないところでも彼の人間性を伝えるエピソードが豊富に伝えられている。やることは破天荒だが、その人柄はどこまでも穏やかで明るい。作中ではハワイ・マウイ島の自宅で、酒やドラッグ、女に溺れた苦いエピソードも隠さず話し、低い声で屈託なく笑うシェップの表情が印象的で、見終えた時には“他人を有名にすること”に人生を賭けてきたビジネスマンとしての彼の偉業の数々よりも、彼のシャイで愛すべきキャラクターが何より心に残っているはずだ。なお、シェップは撮影中に病に倒れ、生存率10%という死の淵をさまよったものの、現在は回復。これまで同様、“他人のために”身を削って仕事をしている。

監督のマイク・マイヤーズは、本人からこのドキュメンタリーのOKをもらうまでに10年がかかったというが、彼をそこまでさせたのもシェップの“スーパーメンチ”ぶりがあってのことだろう。本作には数多のビジネス書や自己啓発書からは学び取ることのできない、本質的なコミュニケーションの秘訣が詰まっている。(文:伊藤隆剛/ライター)

『スーパーメンチ -時代をプロデュースした男!-』は9月24日より公開。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。