(写真提供=SPORTS KOREA)昨シーズンのKBLの様子

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バスケットボールの新リーグであるBリーグが華やかに幕を開けた。チケットの売れ行きは好調なようだし、バスケファンには待ちに待った、トップリーグとして、本当の意味でのプロバスケの誕生であるが、一般の人の関心は、どれほどのものだろうか。Jリーグ誕生の時と比べてはいけないのかもしれないが、どこか盛り上がりに欠けている感もある。

プロリーグ自体は、既にbjリーグがあった。1990年代には、漫画「スラムダンク」の影響で、バスケットボールは、かなり人気があった。90年代後半には、田臥勇太がスター選手として登場し、能代工業時代から、注目を集めていた。2006年には、バスケットボールの世界選手権が、日本で開催された。それでも日本には、最高峰のリーグとしてのプロリーグは誕生しなかった。

韓国では、今から20年近く前の1997年にバスケットボールのプロリーグが誕生した。

冬の寒さが長く厳しい韓国では、室内競技である、バレーボールとバスケットボールが、野球、サッカーがオフである冬のスポーツの華であった。

ただし80年代頃までは、どちらかと言えば、バレー人気の方が優勢であった。しかし90年代に入ると、韓国では空前のバスケットボールブームを迎える。

そのきっかけになったのは、日本漫画の「スラムダンク」であった。登場人物の設定などは韓国式にされ、最初は日本のものとは知らない人が多かったが、日本のものと分かっても、その人気は衰えなかった。

(参考記事:桜木花道は「カン・ベクホ」!? 韓国でもバスケブームを巻き起こした『スラムダンク』のすごさ)

さらに「スラムダンク」をモチーフに作られたとされるテレビドラマ「最後の勝負(邦題『ファイナルジャンプ』)」が94年初めに放送され、人気は決定的になった。

このドラマを通して、韓流スターのチャン・ドンゴンや、映画「八月のクリスマス」などに出演したシム・ウナが、青春スターとして脚光を浴びることになる。

この「最後の勝負」の実在のモデルとされ、実際ドラマにも登場するのが、当時韓国で最強であった延世大学のバスケットボール部であった。

このチームには、イ・サンミン、ウ・ジウォン、ムン・ギョンウンらイケメンが多く、かつ、大学、実業団を合わせての、最強チームを決める籠球デジャンチ(直訳すれば、バスケットボール大祭、日本の一般的な言い方だと、総合選手権)で優勝するなど、実力もあった。

この頃私は、延世大学の韓国語学堂に留学していたが、語学堂の近くにバスケットボール部の合宿所があり、連日女子中学、高校生が、集まっていた。延世大学のバスケットボール部は、当時としては異例である写真集が出されるほどの人気であった。

彼らが大学を卒業し、社会人になる時期に、韓国でプロリーグが誕生した。延世大学出身選手の中でもイ・サンミンは、サムスンの監督である今でも、選手よりも人気や注目度が高い存在で、当時の追っかけの女性の娘もファンというケースもある。

2002年の釜山アジア大会では、延世大学出身のイ・サンミン、ムン・ギョンウン、ソ・ジャンフンに、延世大学のライバル・高麗大学のスター選手であったヒョン・ジュヨプ、それに2000年代に入りプロ入りしたキム・スンヒョン、キム・ジュソンらの活躍で、中国を延長戦の末逆転で破り優勝したことは、釜山アジア大会のハイライトであり、韓国バスケのハイライトでもあった。

今でもそこそこの人気はあるが、90年代のような興奮はないように思う。その理由一つは、代表チームの不振であり、代表チーム不振の原因の一つが、センターの不在である。

プロリーグが始まった初期には、ソ・ジャンフン、キム・ジュソンというスター選手のセンターがいた。しかし、プロ化とともに、センターは外国人選手が占めることになり、アマチュア段階で、センター忌避現象が起きていた。

韓国では、野球もそうであったが、プロが誕生すると、高校や大学は、プロ選手を育てるファームのようになる。

となれば、プロで活躍できる可能性が高い、ポイントガードなどに人材が集まるのは、自然なことである。日本は韓国とは比較にならないほど底辺が広いので、韓国ほど極端にはならないだろう。それでも、高校バスケのウィンターカップなど、アマチュアの大会もしっかり育てていくことは重要である。

それから、審判の技量向上と、選手、監督の人間性も重要である。韓国では、判定を巡るトラブルが絶えない。誤審による審判の権威の失墜がある一方で、監督らも、審判に聞くに堪えない暴言を吐くなどして、顰蹙を買うことが少なくない。

さらに90年代は、人気のイ・サンミン、実力のカン・ドンヒと言っていいほど、韓国を代表するポイントカードであったカン・ドンヒが、東部監督時代の2013年に八百長容疑で逮捕されるという、衝撃的な事件も起きた。

その他にも、八百長事件は起きているし、八百長に至らなくても、違法賭博問題は、アマチュアにまで根を張る深刻な問題である。

また、韓国では国際大会で活躍してこそ、真のスター選手になれるが、国際大会の成績が不振だと、そうしたスターは生まれない。そこでいま期待されているのは、韓国代表監督であるホ・ジェと、ともに代表に選ばれているホ・ウン、ホ・フンという2人の息子である。

ホ・ジェは、「籠球大統領」と呼ばれ、1988年のソウル五輪では、選手宣誓をするなど、スター中のスターだ。その息子2人も若くして代表に選ばれるというのは、韓国バスケの歴史であると同時に、彼らに期待せざるを得ないのは、韓国バスケの窮状でもある。

プロリーグは、アマチュアも含め、その競技全体を活性化させ、代表チームの強化につなげてこそ、その存在意義を増すことができる。

日本のサッカーは、韓国より10年遅れてプロ化した。しかしJリーグの成功は韓国のプロリーグを刺激し、韓国のプロサッカーが改革される契機になった。いまバスケットボールでは、日本も韓国も、イランなど、中東勢に押されて、アジアの中でも、存在感を示せないでいる。Bリーグは、そうした状況を打開することができるか。日本だけでなく、韓国なども注目している。

(文=大島 裕史)

初出:ほぼ週刊 大島裕史のスポーツ&コリアウォチング