(写真提供=SPORTS KOREA)プロ野球試合中に地震が起こり、電光掲示板には避難時の告知が掲示された

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韓国で地震に対する恐怖が高まっている。きっかけは9月12日、韓国南部の慶尚北道・慶州付近を震源とするマグニチュード5.8の地震だ。韓国でM5.0を超える規模の地震は稀で、この慶州地震は過去最大級。地震発生から1週間が経った現在、余震は400回を超えており、9月19日20時半にはM4.5の地震が再び発生している。

幸い死者は出ていないが、近隣住民だけでなく韓国全土で不安は高まるばかり。韓国最大手ポータルサイト「NEVER」の社会ニュースは、ほとんどが地震関連のニュースになっているほどだ。

地震が起きたあとの韓国の混乱とは

韓国の人たちが地震を恐れるのは当然かもしれない。というのも、仮にソウルでM7.0クラスの地震が発生すると、死傷者が67万人という消防防災庁のシミュレーション結果もあるからだ。

韓国は長らく「地震安全地帯」と言われてきた。そんな驕りもあって、耐震への意識も低い。韓国に一度でも行ったことがある人ならわかると思うが、心配になるほどの超高層マンションやオフィスビルが多く、スタジアムのスタンドも耐震お構いなしの急斜面である。

しかし韓国気象庁によると、2015年に入ってマグニチュード2.0以上の地震が33回計測されたという。その規模の地震が観測されたのは、1980年代は16回にすぎなかったが、2000年代には44回、そして2010〜2014年は58回となっている。地震の回数が上昇するのに比例して、安全対策への関心も高まっていた。

韓国の国民安全庁に記されたずさんな行動要領

にもかかわらず、慶州地震が起きた直後の混乱は激しかった。

正確な震度は不明だが、慣れない体験に近隣住民たちはパニックに。さらに各所で発生したシステム障害や、メッセンジャーアプリの不具合などがさらなる不安を煽った。

韓国国民を必要以上のパニックや不安に陥れた一因としては、適切な地震対策マニュアルがないからという指摘がある。国民安全庁ホームページには地震発生時の「国民行動要領」10カ条がまとめられているのだが、その要約を見てみよう。

1.屋内の場合:テーブルの下で体を守る、火を消す、ドアを開けて出口を確保
2.屋外の場合:落下物に注意
3.商店街の場合:落ち着いて行動
4.エレベーターにいる場合:最も近い階から下りて退避
5.電車に乗っている場合:固定物を強く掴もう
6.運転している場合:道路の右側に停車
7.山や海にいる場合:山崩れなどの危険地域から迅速に退避
8.負傷者がいる場合:互いに協力して応急処置を
9.避難は最後の手段:退避は徒歩で荷物は最少で
10.正しい情報に従って行動:流言飛語に騙されない

なぜ、日本の防災ブックが注目を集めたのか

必要最低限の説明がなされているのみというのが、率直な印象だ。実際に、地震の備えや避難生活についての言及も見つけられなかった。

興味深いのは、そんな韓国で東京都の防災ブック『東京防災』が注目を集めているという点だ。「地震発生時は国民安全庁のホームページではなく、東京都のホームページを見よう」と皮肉る韓国メディアも出てくるほどだった。

(参考記事:いざというときは日本頼り!? 韓国人の必読書になった防災ブック『東京防災』

ちなみに、「国民行動要領」の最後に書かれている「流言飛語に騙されない」という部分も、韓国では重要かもしれない。SNSを中心に「9月30日に朝鮮半島と日本で大型地震が発生する」など、さらなる大地震の噂が尽きないのだ。これも正確で信用性の高い情報が少ないことが原因かもしれない。

慶州市は“特別被災地域”に指定される見通しだが、いずれにせよ、慶州地震をきっかけに地震対策にも注目が集まっている韓国。すでに「地震安全地帯」ではなくなっただけに、意識の切り替えが必要な時期になったのかもしれない。

(文=慎 武宏)