『世界ぐるっとひとり旅、ひとりメシ(だいわ文庫)』(西川治/大和書房)

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 台湾と韓国――私が今まで訪れたことがある2か国だ。台湾であれば小籠包などの飲茶、韓国であれば焼き肉・チヂミといった韓国料理が有名どころ。もちろん、どれも現地で味わうことができた。だが、訪れた店はどれもガイドブックに載っているような海外旅行客向けのものばかり。今思うとどこも綺麗な店内で、同じ日本人が多く席に座っていた。日本で食べているのとさして変わらなかったのではないか。

 そのように考えてしまうのは『世界ぐるっとひとり旅、ひとりメシ(だいわ文庫)』(西川治/大和書房)を読んだことがきっかけだ。写真家であり、料理研究家である著者は、世界中の料理を食べ歩いてなんと50年。食にまつわる書籍は100冊以上というプロ中のプロだ。彼が求める料理は三つ星レストランでは食べることができない現地の人々が味わうもの。現地の言葉が飛び交う料理店を聞き込み、自らの足で見つけるという徹底ぶりだ。

 正直、まだ2か国しか海外に行ったことがない私にとって、相当ハードルが高い。しかし、国内旅行をするときにも地元の人御用達の店であれば、そこならではの料理が食べられたり、話が聞けたりするもの。海外旅行でも同じなのだろう。

 海外旅行の醍醐味の一つに、日本との違いが感じられることが挙げられる。有名な話では、海外の列車は少しの遅刻は当たり前。日本であれば数分の遅延でもしようものなら、客が烈火のごとく怒る。日本人の時間に対する感覚、国民性が感じられるが、本書を読むなかで飲食店でも同様に日本との違いが感じられるようだ。著者が訪れたスペインの裏通りにある居酒屋でのこと。店内では黒いかたまりのようにハエがぶんぶんと飛んでおり、飲んでいるワイングラスに入ってくるほどだったそうだ。また、床には紙くずが至る所に捨ててある。しかし、そういう居酒屋はおいしい店が多く、不思議と居心地がいいという。衛生面、清潔さを気にしてしまう日本ではなかなかお目にかかれない店だ。というよりも保健所の指導で営業停止になってしまうかもしれない。

 また、インドのカレーについてのエピソードは非常に興味深かった。著者はインドをひたすら縦断し、インド料理の神髄に迫ろうと試みたのだが、インドの北で食べようが南で食べようが日本人の口には同じようにしか感じなかったという。もちろんインド人からすると地域ごとに味は違うし、使っているスパイスの違いもある。結局、理解できたのは北から南に行くにしたがって辛さが増していくということだけで、インド料理に辟易してしまったそう。

 他にも、ベトナムコーヒーの甘さについて語っていたり、アメリカで食したアイスクリームの話ではアイスをのせるコーンについて語っていたりと、日本で味わうことができない珍しいものから素朴なものまで幅広い。さらに掲載されている料理写真が食欲をそそる。自分も是非著者のように現地の言葉が飛び交う、現地の人に人気の店を訪ねてみたい。ひとまず、本書の中から食べたいものを探してから、どの国にいくか決めることにしよう。

文=布施貴広(Office Ti+)