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親の世代は、住宅取得をして、子どもの教育費の準備を始め、一段落したら、自分たちの老後資金を貯める。これが一般的なライフプラン、マネープランでした。しかし、今の30代、40代は、これから一気に人生のイベントの山が訪れることになります。連載3回目は、いまどきの教育費の掛け方と、住宅購入の資金計画について、ファイナンシャル・プランナー畠中雅子さんにアドバイスをいただきました。【連載】40代から考える老後のお金
子どもの教育費や住宅購入など、今の40代は大きな出費が複合的に待ち構えている時期でもあります。さらに老後資金もとなると、ただただ不安に思ってしまう人も少なくありませんが、やみくもに不安になっても仕方がありません。安心して老後を迎えるために、今、やっておくべきことを全5回の連載で考えてみます。

教育費は掛け始めたらキリがない。進学先は親子で考える

子どもひとりにかかる教育費は、1000万円とも2000万円とも言われるなか、小学校、中学校から私立をと望む家庭もあり、そのような場合、教育費は大学だけ意識すればいい、という状況ではなくなっています。

「特に都市部では、公立よりも私立へ、という傾向が高いのですが、一度流れに乗ってしまうと、なかなか降りられないということを意識しておくべきです」と、畠中さんは、早い段階での決断は慎重にと言います。

「高校までは基本的には年収内、つまり家計から出すことになります。私立にかかる教育費負担は重くなりますが、それが無理のない範囲なのか冷静に考えてほしい、ということです。中学から私立を目指すなら、小学校から塾や補習など学校外の費用もかかります。みんなが行っているから、という理由で、教育費がかかるコースに乗ってしまうと、なかなかそこから降りるのは難しいのです」

大学卒業までが教育費と考えると、いかに大学進学時にお金を残せておけるかが大事になってきます。小・中学校から私立で、高校まではなんとかなった、けれど大学へは奨学金を使うことになる、というプランは、果たして正しいのでしょうか。

畠中さんは、「中学から私立にするのかというのが、最初の選択になりますが、高校から私立にする場合、悩むのは学費でしょう。しかし、私立では、塾と提携している学校も多く、非常に安いコストで補習を受けられ、塾代がかからない、というケースも増えています。高校をどうするか、これが親子で教育費を考える最大のポイントになるでしょう」とアドバイスします。

加えて、国の高校就学支援金制度や各都道府県の助成、例えば東京都なら私学財団の助成金もあり、所得制限はあるものの、年収350万〜590万円程度の世帯では、合計で年額約28万円の支援金、助成金を受けることができます。こうした制度を十分に活用することも、教育費を抑えるためには、非常に重要なことです。

公立が安いわけではない。支援金、助成金も活用する

40代であっても、自分たちが高校生、大学生のころとは、事情が変わっている点にも注意が必要です。下に、大学にかかるお金をコース別に紹介していますが、表面的な学費だけで判断しないようにと、畠中さんは言います。

【図1】子どもの教育費で一番かかるのが、大学入学時。国公立でも100万円近く必要になる。家計からまかなえるものではないので、早くから準備しておく必要があるが、自分たちの老後にどれだけお金を残せるかも大事。その兼ね合いを親子で話し合うようにしたい(出典:注記にあるデータに基づき、筆者が作成)

【図1】子どもの教育費で一番かかるのが、大学入学時。国公立でも100万円近く必要になる。家計からまかなえるものではないので、早くから準備しておく必要があるが、自分たちの老後にどれだけお金を残せるかも大事。その兼ね合いを親子で話し合うようにしたい(出典:注記にあるデータに基づき、筆者が作成)

「最近は、カタカナの学部も増えていますが、いったい何を学ぶところなのか、その先の就職はどんな業種、業界になるのかなど、国公立、私立ということではなく、その次のことまで考えておくべきです。海外留学がしたい、大学院に行きたいと子どもが希望すれば、叶えてあげたいのが親。でもゴールの見えないことに、お金をつぎ込んでいては、蛇口が閉まらない水道のようなものです。どこかで締める決断も大切なことです」

奨学金については、奨学金ありきではなく、足りない分を補うという考え方が大事。「学生支援機構」のサイトでは、奨学金の返済シミュレーションなども用意されています。自分たちの老後資金を取り崩して、子どもの奨学金の返済に回すようなことを防ぐためにも、親子で確認しておく必要があるでしょう。

住宅購入は、頭金不足よりも「時間のリスク」を優先する

これから住宅購入を考えている場合、何歳で住宅ローンが完済できるのかと同時に、子どもの進学時期も考慮したほうがいいでしょう。

従来は、物件価格の2割を頭金として準備するのがセオリーでした。しかし、最近のマイナス金利政策の影響で、住宅ローン金利も過去最低水準まで下がっています。この状況下で、頭金が2割貯まるのを待つよりも、1割でもいいので、早めに取得することを畠中さんは勧めます。

「頭金を貯めるペースが遅く、購入時期を延ばしてしまうと、子どもが高校生から大学生になる前の時間が短くなり、繰上返済できる回数が減ってしまう可能性が高くなります。また、購入時の年齢が遅くなればなるほど、完済時の年齢も遅くなり、退職後にも住宅ローンが残る、というケースが増えています。時間のリスク、ということを考えてほしいです」

畠中さんが、頭金2割のケースと1割のケースでシミュレーションしたのが図2です。

【図2】住宅購入、返済計画は、子どもの進学時期、自分の年齢を書き出してみると、より明確になる。お金が貯められる時期、繰上返済ができる時期、家族の状況によっても異なるだろう。返済までのシミュレーションは一度やっておくといい(出典:畠中雅子さん作成による試算例)

【図2】住宅購入、返済計画は、子どもの進学時期、自分の年齢を書き出してみると、より明確になる。お金が貯められる時期、繰上返済ができる時期、家族の状況によっても異なるだろう。返済までのシミュレーションは一度やっておくといい(出典:畠中雅子さん作成による試算例)

物件価格4000万円で、頭金1割の400万円、住宅ローン3600万円で購入する場合と、5年かけて頭金を2割の800万円貯め、住宅ローン3200万円で購入した場合の比較です。

頭金1割の場合、毎月の返済額は10万162円で、頭金2割の場合は9万331円と頭金1割のほうが当然高くなります。しかし、本来頭金として用意したかった残りの1割、400万円を5年後に繰上返済に回した場合、返済期間は4年4カ月短縮できます。

仮に、現在35歳で35年返済だった場合、当初完済年齢は70歳。それが65歳と少しで完済になるのです。つまり、購入時期の5年の差と合わせると約9年も早く、住宅ローンの返済が終わります。総返済額でも、頭金1割のほうが、約108万円も少なくなる計算になります。

「必ず繰上返済ができるとは限りませんが、預貯金金利が低い今、預けっぱなしにしておくよりも、頭金が1割程度あるなら、早めに購入に踏み切るのもいいのではないでしょうか。子どもの教育費との兼ね合いもありますが、先送りすればするほど、お金が貯められない時期に重なることを理解して、退職金頼みではない、住宅購入の計画を立てることをおすすめします」

また、60歳の退職時に残っている住宅ローンを比較しても、頭金1割で繰上返済した場合は、約671万円。頭金2割の場合は1508万円残っている計算になります。住宅ローンの残りは退職金で清算する、という人も多いのですが、ここでも、自分たちの老後資金を使ってしまうことになるのです。

子どもの教育にもお金をかけたい、住宅取得も慎重に行いたい、あれもこれも、すべてを全力でこなしていくのは、難しい時代です。どこかで折り合いをつけていかないと、問題は先送りされるばかりです。今、40代にとって必要なことは、早め早めの決断、ということが言えるでしょう。

●取材協力/畠中雅子さん
ファイナンシャル・プランナー、生活経済ジャーナリスト。新聞・雑誌・ネットで多数の連載を持ち、セミナー講師や個人の家計相談でも活躍中。生活実感のある家計アドバイスに定評がある。著書は『どっちがお得? 定年後のお金』など60冊を数える。「子どもにかけるお金を考える会」、高齢者施設への住み替え資金アドバイスをおこなう「高齢期のお金を考える会」、ニートやひきこもりのお子さんを持つご家庭に生活設計アドバイスをおこなう「働けない子どものお金を考える会」を主宰している。
子どもにかけるお金を考える会HP●参考
・文部科学省/高校生等への修学支援
・(公財)東京都私学財団/私立高等学校等授業料軽減助成金事業