World Life Style〜わたしの国の住まい事情〜 客人を迎え入れるゴージャスなサロンが魅力的、 典型的なモロッコスタイルのアパルトマンで暮らす三世代家族。

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海外の家や暮らしをリポートする「World Life Style」。第22回目はモロッコから。モロッコは北アフリカに位置する人口3,392万人の王国で、北部には地中海、南部にはサハラ砂漠と大西洋があり、古くからアフリカ、ヨーロッパ、中東の交易地として栄えた。夫婦と2人の子供の他、奥さんの弟と実母が同居する家族、シャラワニ一家は、伝統的なモロッコサロンがあるアパルトマンに暮らしている。

サロンに始まり、サロンに終わるモロッコの暮らし

モロッコ政府の住宅政策として、ここ数年、新興住宅街が多く建設されている。シャラワニ一家のアパルトマンもモロッコ第一の観光都市、マラケシュ郊外に作られた新興住宅街にある。
モロッコ人にとって、自分の家を持つのは大きな夢。
アパルトマンの急増に伴って、都市部では伝統的な一軒家に大家族で暮らすという今までのライフスタイルに、核家族化の変化が生じている。それでもまだ祖父母や未婚の兄弟姉妹が一緒に暮らすケースが多い。
シャラワニ一家が、2012年に購入したアパルトマンの間取りは2LDK。内装から玄関ドアやベランダなどの外壁に至るまで、かなり自由に作り変えることのできる物件で、購入してすぐに大規模な改築を行った。

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モロッコの家はサロンに始まり、サロンに終わると言っても過言ではないほど、サロン(リビング)が重要視される。大勢の来客をもてなすことが多いモロッコでは、どこの家に行っても、多くの人が座れるようにコの字型にソファとクッションを並べている。この様式こそがモロッコサロンの特徴である。
そして、部屋の広さに合わせてオーダーメイドで作るのが、ソファとクッション。女性たちの何よりの楽しみのひとつが生地選びだ。
この華やかな花柄生地を選んだのは、お婆ちゃんのズビダさん。モロッコ女性は派手好きで、どこの家も華やかさを競い、ゴージャスなソファとクッションが仕立ててある。モロッコ女性にとって無地などは地味の極地なのだ。

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何よりも目を引く天井の装飾は、モスクなど伝統的なイスラム建築の内装に使われる石膏装飾「グブス」。
元々の天井を壊し、電気の配線から変えて、ゴージャスな石膏装飾でサロンの天井から廊下まで改装した。

玄関は防犯用の鉄の扉と木の扉の2重ドア。モロッコでは窓でもドアでもこの美しい鉄柵がよく使われていて、様々なデザインがある。 玄関は防犯用の鉄の扉と木の扉の2重ドア。モロッコでは窓でもドアでもこの美しい鉄柵がよく使われていて、様々なデザインがある。

おもてなしに「手洗いセット」は必須

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サロンの奥に飾られていた銅製の骨董品たちも、お婆ちゃんが中古市場で購入してきたお気に入りだ。
来客に必ずふる舞うミントティー用のティーポット、大勢の来客が一人ひとり手を洗いに立つ必要がないように用意する手洗い用のやかんと桶のセット。これらのおもてなしの必需品がミニチュアになっている。

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こちらは実際の大きさの手洗い用のやかんと桶セット。モロッコは手で食事するため、来客の手前にこれを出し、食事前と後に手を洗ってもらうのが通例だ。
一日のメインの食事は昼食。招待されるのも大抵ランチで、14時ごろから食事が始まり、そのまま夕方までお喋り好きな人々の会話は止まない。最後にミントティーやカフェオレとパン系のおやつを頂いて、お開きというパターンが多い。

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モロッコの食卓では、金曜日にクスクスを食べるのが、お決まりの習慣だ。
シャラワニ一家も金曜には大皿に沢山の野菜とソースが盛られたクスクスを家族で食べる。ひとつの皿から分け合う食事スタイルは日本と相通ずるが、モロッコでは小皿に取り分けず、皆が直接手で食べるという。

個人の部屋は作らず、サロンで一日を過ごす

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メインのサロンは来客用で、普段の食事や就寝には使わない。生活用のサロンは別に設けられており、夫婦以外の家族が就寝したり、食事をとったりする。個人の部屋を作らないモロッコでは、夫婦の寝室の他は、すべてサロン形式にするのが一般的だ。ふとんや衣類はすべてクローゼットに片付け、サロンで寝たり、食事をしたりと生活感を出さないのが基本。
また、バスタブを使う習慣が無いため、トイレとシャワーのみの家も多い。シャラワニ一家もバスタブはなく、週に一度程度ハンマム(公衆浴場)に行く。モロッコではハンマムで垢すりするのが習慣で、小さな子供でも母親に優しく擦られている光景を見かける。

エントランスには、日本でも見慣れたモダンなソファセットが置いてある。ここは家族がテレビを見たり、短時間しか滞在しない来客が利用したりする、リビングのようなサロンだ。
エントランスには、日本でも見慣れたモダンなソファセットが置いてある。ここは家族がテレビを見たり、短時間しか滞在しない来客が利用したりする、リビングのようなサロンだ。

アシュラフさん(左)、ズビタさん(右)。
アシュラフさん(左)、ズビタさん(右)

■プロフィール■
シャラワニ ハキム(38歳)さんは、乳製品の加工会社で働き、妻のシャラワニ ナディア(33歳)さんとは再婚。2人の娘がおり、普段娘たちの面倒を見ているのは、祖母のズビダ(60歳・写真)さんだという。妻の弟であるアシュラフ(22歳)さんも同居しており、観光系の専門学校で勉強中。大変仲の良い三世代ファミリーだ。
〜住まいについて〜
面積:68平方メートル、2012年新築分譲アパルトマンを385,000DH(約400万円)で購入。個別トイレを壊し、大きなサロンにするなど内装を変更した。
間取り:2LDK

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■マラケシュの不動産事情■ 外国人が多く暮らすエリアでは日本並みの家賃の物件もあるが、モロッコ人が家を借りる場合は1,000DH(11,000円)〜1,500DH(16,500円)が相場。家賃は年間分を一括で支払う契約が主流で、月の家賃の他に15,000DH(約17万円)〜45,000DH(約50万円)の補償金が必要。新築アパルトマンの増加に伴い、ローンで家を購入する人が増えたが、まだまだ失業率が高く安定した職に就くことが難しいため、ローンが組める人も一部。
分譲アパルトマンは小さい間取りなら、250,000DH(約280万円)程度から。街の中心地では、1,000,000DH(約1,100万円)を軽く超す高級アパルトマンも多くある。庭付きの大きな一軒家でも郊外ならそれと同価格で手に入る。但し、どの物件を選んでもリフォームやメンテナンスは欠かせない。