写真家たちがとらえた「Black Lives Matter」

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黒人射殺事件をきっかけに、アメリカ各地で行われた抗議デモ。「Black Lives Matter」という名の下、人々が怒りや悲しみの声をあげる様子をとらえたフォトグラファーたちは、シャッターを切るその瞬間に何を思ったのか。

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2/5「7月9日、市庁舎から1マイルにわたるデモ行進の終着点である、ルイジアナ州の議事堂にわたしはいた。約1,000人が集まっており、全員が祈りを捧げていた。午後遅く、太陽が雲に隠れたので、空に掲げられた人々の腕が影となり、オバマ大統領とマーティン・ルーサー・キング・Jr. のポスターがよく目立っていた。見たことがあるポスターだったが、抗議者たちの腕とポスターに描かれた顔のコントラストが印象的で、わたしはこの写真を撮ってGetty Imagesにポストした」(マーク・ウォールヘイザー)
PHOTO:GETTY IMAGES

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3/5「7月9日、バトンルージュ警察本部に近いエアラインズハイウェイの車道を、抗議者たちの一群がせき止めた。警官たちが人々を路肩へ集め、こう言った。『交通を妨害するのであれば、われわれはあなた方を逮捕せねばなりません』。デモの参加者たちは怒り、うろたえた。人々は警察と口論を続け、わたしがその様子を写真に撮っていたときだった。誰かが『なんてことだ、あの人逮捕されるぞ!』と叫んだのだ。わたしは肩越しに振り返り、そこに立っている女性を見て、彼女を撮影する場所を探した。その女性は何も言わなかった。本当に落ち着いていた。彼女は抵抗しなかったし、何も言わなかった。ただ逮捕されることを受け入れていた。警官たちがやって来て、彼女の腕を掴み、警察署へと連れて戻った。人々はうろたえていたが、誰一人暴力に訴える者はいなかった」(ジョナサン・バックマン)
PHOTO:REUTERS / AFLO

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4/5「7月9日の夜、ミネソタ州セントポールの I-94で数百人の抗議者たちが交通をせき止めた。ハイウェイを埋め尽くした人々は、歩道橋に殺到し、堤防沿いのフェンスに沿って集まった。すでに西行きの車道を解放した警察たちは、少しずつ東行きの車道の抗議者たちのところへと進んでいた。わたしは警官の隊列の後ろへすべりこみ、非常口ランプの上にのぼった。そこで堤防の上の家の横に、この人影があらわれたのに気が付いた。影の主はそれほど離れていないところで子どもを抱いていた父親で、この状況をじっと見降ろしていた。警察がサーチライトを周囲に向け、ほんの一瞬だけ、人々が強い光のなかに浮かび上がった。わたしがさっと数枚の写真を撮ると、すぐに親子は闇に消えた」(ステファン・マタレン)
PHOTO:GETTY IMAGES

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5/5「7月9日、ミネソタ州セントポールでI-94を占拠した人々に対し、警察は何度も逮捕の警告を行った。彼らが刺激剤と、暴動鎮圧のための武器を使用したとき、わたしは人でいっぱいの歩道橋を無理やり登って、コンコルディア通りとグロット通りの交差点で状況を見下ろした。警官たちは発砲しながら、解散を命じていた。多くの人々が立ち去らずに残っていたのにわたしは驚いた。50人に近い抗議者たちが逮捕された」(アナベル・アルコビ)
PHOTO: AP / AFLO

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スマートフォンで撮影された動画を通じて、誰もがアルトン・スターリングとフィランド・キャスティルの死を目撃することになった。人の死を見るというのは、打ちのめされるような感覚をおぼえるものであるにもかかわらず、それを拒絶することは不可能だった。

そしてこれこそが、動画というものが孕む問題でもある。あまりにも直接的で、自分が見たものについて熟考する余裕をほとんど与えてくれない。しかし写真であれば、それをじっくりと眺め、そこから呼び起こされる強烈な感情を、自分のなかで処理することができる。

2つの黒人射殺事件は、米国全土でデモの波を引き起こした。何千もの人々が路上へ出て、ときには警察と衝突しながら声を上げ続けた。デモ行進は数え切れないほどの動画として記録され、テレビで放映され、ソーシャルメディアに投稿された。そして、ウィル・ワイドマーやマーク・ウォールヘイザーといった写真家たちが、数多くの写真を撮影した。

彼らの写真は、はかない一瞬を捉えている。挑戦的なプラカードを掲げた少女、何も言わずに警察に従う女性、サーチライトの明かりに照らし出された親子。これらの写真はアメリカを揺さぶる痛み、不満、怒りをあらわにし、見る者に熟考を促す。この動画の時代にあっても、写真はいまだ替えの効かないものであり続けている。

INFORMATION

ブラックパワーと公権力:ソーシャルメディアによる新たな闘争

機会平等・人権差別撤廃が謳われた公民権法成立から50年。アメリカではいまもなお、マイノリティたちの闘いが続いている。闘いのたびにメディアやテクノロジーを駆使してきたアクティヴィストたちはいま、ソーシャルメディアという新しい武器を手に入れた。「#blacklivesmatter」というハッシュタグを通じた組織なき闘いの意義、ヘイトや暴力に立ち向かうツールとしてのテクノロジーの価値を、いま改めて問う。