稲田朋美公式サイトより

写真拡大

「配偶者の資産公開、プライバシー公開は抵抗がある」

 20日の会見でそんな被害者面をしたのは、稲田朋美防衛相。9月16日、第3次安倍再改造内閣の閣僚の保有資産が公開されたのだが、稲田氏は10人の閣僚のなかで家族分を含めたその総資産額が最多(1億8178万円)だった。稲田防衛相は弁護士である夫・龍示氏と共同で、都内を中心に140平方メートル(2696万円)や116平方メートル(1396万円)など9件の宅地を所有、ガッポリとカネを溜め込んでいるというわけだ。

 まあ、もともと稲田氏は新人時代からBMWを乗り回していたという逸話があるほどの"金満政治家"であり、不動産を大量に所有していること自体はなんら不思議ではない。しかし、それよりも驚いたのが、夫名義で所有している株の銘柄だった。

 なんと稲田氏の夫は、2014年9月以降の約2年間で、政府が武器などを受注している防衛関連企業の株を大量に取得していたのだ。川崎重工6千株、三菱重工3千株、IHI8千株、三菱電機2千株、日立製作所3千株......。これら5銘柄は2015年度の防衛省との契約金額上位20社に含まれている。

 これは、明らかに軍事産業に力を入れる安倍政権の動向を見て、需要の増える防衛企業株を"先物買い"したように見える。この間、安倍政権は2014年4月に武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則を閣議決定すると、14年6月には防衛省が音頭をとって、世界最大級の武器見本市「ユーロサトリ」に日本が初めて本格参加。昨年10月には防衛装備庁を新たに発足し、武器輸出、そして国内軍需の発展へ大きく舵をきってきた。

 そうした流れのなか、安倍首相の覚えめでたく"将来の首相候補"とまで言われる稲田氏が、夫名義で防衛企業の株を大量取得していたのだ。もし、稲田氏が「あなた、これからこの銘柄が伸びるわよ」などと情報を提供していたとしたら、大問題だろう。ましてや先の内閣改造で稲田氏は防衛相に就任。防衛関係の予算や受注方針など権限が集中しているわけで、その気になれば、夫が保持する防衛企業の株価を意図的に吊り上げることだって可能だ。厳しく追及されて当然である。

 ところが、冒頭で触れたように稲田防衛相は会見でこう語ったのだ。

「配偶者は自分がずっと経済活動をしてきて、その資産を公開することについて、やはり配偶者自身のプライバシー、自分のプライバシーについてやや抵抗があったのも事実だ」

"夫がどんな銘柄の株を買っていたって関係ないでしょ""なんで公開しなきゃいけないの"と言わんばかり。

 いったい何を言ってるんだろう、この人は。どうも、自分の政治家としての活動と夫の経済活動は別として幕引きを図ろうとしているようだが、そもそも、弁護士だった稲田氏の政界入りのきっかけのひとつは、ほかならぬ夫の龍示氏の存在だ。

 産経新聞2014年10月27日付に掲載された記事「【単刀直言】特別編 稲田朋美・自民政調会長 朝日は「百人斬り」精査を」のなかに、東京・銀座の人気串かつ店で、稲田氏と記者、そして龍示氏の談笑の模様が掲載されているのだが、そこで稲田氏は龍二氏との関係をこんなふうに語っている。

〈稲田さんが「地元の酒を紹介したい」と、福井の地酒「花垣」の大吟醸を持ち出した。冷やを一口含むと、舌先を滑るような丸みと、濃縮したコメのうま味が溶け合う。
「主人が間もなく東京駅に着くのよ。ここに来てもいいかしら」
 携帯電話を閉じた稲田さんの目が輝く。稲田さんの政界進出へ背中を押したのは龍示さんだったという。
「平成17年の衆院選に出るにあたり、父からは『だれが子供の面倒を見るんだ』と批判されたが、主人は『君のやりたいことを実現するには自民党の衆院議員になるのが一番の近道』と言ってくれました」〉

 稲田氏は弁護士時代から歴史修正主義団体「自由主義史観研究会」に入会し、「百人斬り裁判」の原告側に参加するなど極右志向が顕著で、その縁で安倍晋三から直接出馬を要請されたことは有名な話だが、その彼女の政界入りの背中を押したのは、89年に結婚した夫の龍示だった、というのだ。

 事実、龍示氏は稲田氏の政界転身前後からその政治活動を陰でバックアップしてきた。05年の郵政選挙で刺客として稲田氏が初出馬した際の選挙運動では、「大きなリュックを背負い、聴衆の後ろから一人一人に丁重に頭を下げながら選挙ビラを手渡していた」。以後も、選挙戦でたすきに使う布を買いに走ったり、福井県の選挙事務所で「おしゃべり好きな来客」の聞き役を務めるなど、「黒子」として政治家・稲田朋美を支え続けたという(産経新聞13年6月7日付)。

 そして龍示氏は本職でも稲田氏の代理人弁護士として支援。昨年、稲田氏が選挙時に地元の献金企業などに「ともみの酒」とのラベルを貼った日本酒を贈呈していたと2回に分けて報じた「週刊新潮」(新潮社)に対し、慰謝料500万などを請求する名誉毀損裁判を起こしたことは記憶に新しい(16年4月大阪地裁で敗訴)。さらに、龍示氏はこの「ともみの酒」問題をめぐって、「週刊新潮」に圧力をかけていた。

「週刊新潮」15年4月9日号によれば、龍示氏は、「新潮」側が取材を申し込んだだけで記事掲載前にこんなファクスを送ってきたという。

〈仮に掲載を断行されるのであれば、直ちに貴社と編集長、記者に民事訴訟を提起し、併せて悪意による名誉毀損行為でありますから、刑事告訴するつもりであることをここに予め警告しておきます〉

 ようするに、訴訟を予告して記事掲載を阻もうとしたわけだ。しかも、逆にこの圧力行為を記事にされ、「弁護士バカ」と書かれたあげく、裁判長から「論評の域を逸脱しない」とお墨付きすらもらうというオチ付きである。

 いずれにせよ、龍示氏が、稲田氏の政治活動やメディア対策の面で身を粉にして働いてきたことは客観的な事実。秘密を共有し得る夫婦関係であることに加え、公的にも明確な支援者である龍示氏が、稲田朋美という有力政治家の資産と無関係なんて、誰がどう考えてもありえないのだ。

 だいたい、政治家の資産公開制度は、政治の透明化と民主主義の健全な発展のために行われるものだ。80年代に中曽根内閣が閣僚資産の公開を始めたがこれは慣例的なものに過ぎず、その後の宇野内閣で閣僚の資産公開は配偶者まで拡大、92年には「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」が制定された。リクルート事件や佐川急便事件など"政治とカネ"をめぐるスキャンダルが続発し、国民の政治不信を払拭するためだったと言われている。

 だが、こうした政治家の資産公開制度も、いまだに公開義務のない親族の名義や一族グループ企業などを経由することで"隠し財産"を簡単に保持することができるという杜撰なものだ(先日公開された閣僚の資産額が妙に少ないのもこれが一因だと思われる)。にもかかわらず、稲田氏は夫の防衛企業株大量購入をプライバシーの問題にすり替えて、私腹を肥やす"隠れミノ"を正当化しにかかる。これが普段、"国民は国のために血を流す覚悟をしろ"とがなりたてている政治家のやることだろうか。

 繰り返すが、いまや市ヶ谷のトップに君臨する稲田防衛相が、夫名義で防衛株を購入していた事実は、徹底して追及されなければならない大問題だ。また、防衛界隈ではこれまで国産企業と海外企業が政治家やエージェントを通じて激しく火花を散らしてきたが、安倍政権になってからは経団連の要請の元、武器輸出を進めるとともに国産企業に肩入れしているとも言われる。本サイトでは引き続き、稲田氏側が購入した銘柄の防衛企業も含め、この政権と軍事産業との癒着関係をレポートするつもりだ。
(宮島みつや)