石原慎太郎・元東京都知事が謝罪した(写真は16年5月撮影)

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石原慎太郎・元東京都知事は2016年9月21日、報道各社に文書を送り、築地市場の移転先である豊洲市場の盛り土問題で、自身が知事時代に、一部の敷地で盛り土ではなく、地下空間の利用を提言したとする発言がブレて、混乱していることについて釈明・謝罪した。

当時から10数年がたっていることや高齢を理由に、記憶が薄れ、勘違いの可能性もあり、「無用な混乱を招く恐れがある」として、今後は取材に答えることは控えさせていただくとした。

「だまされた」「都は伏魔殿」から一転

豊洲の盛り土をめぐっては、どういう経緯で盛り土がなされず、地下空間を作ることになったのか、関係者の証言が食い違い、小池百合子知事がプロジェクトチームを設けて事実関係を調べている。また、豊洲市場のコンクリート空間のたまり水からは、微量のヒ素やシアンなども検出され、豊洲への移転自体が宙に浮く事態になっている。

問題が起きてから、石原氏は13日のテレビ番組で、盛り土をしないとの報告を都から受けていたかとの質問に、「だまされた。都の役人は腐っている」と発言し、そうした報告を受けていないと否定した。

しかし、その後、都知事だった2008年5月の定例記者会見で、専門家の発言を紹介しながら、「コンクリートの箱を埋め込む」案を、自ら都側に提案していたことが明らかになった。

これについて、石原氏は15日に報道陣の取材に対して、「専門家じゃないんだから、俺はしてない」などと否定。「役人からそういう情報を聞いたので、取り次いだだけ」と説明し、さらに「東京都は伏魔殿だ」と、都を厳しく批判した。

ところが、石原氏は17日になると、

「元秘書が詳細を覚えていた」

として、コンクリート箱などの地下利用案について、自らが提案したと、訂正。発言のブレが混乱に拍車をかけていた。

「検証」には全面的に協力

石原氏は21日の文書の冒頭で、

「私の東京都知事在任中の件で、皆様に多大な混乱やご懸念を生じさせるなどしておりまして、誠に申し訳なく思っております」

と謝罪した。それに続けて、この間の一連の取材での発言についての「心境」として、

「十数年というかなりの時間が経過している上、(中略)間もなく84歳になる年齢の影響もあって、たとえ重大な事柄であっても記憶が薄れたり、勘違いをしたりすることも考えられます」

と説明。そのうえで、取材にその都度応じることは、

「無用な混乱を招くおそれがあることから、控えさせていただくことにしました」

としている。

そのうえで、豊洲の移転と土壌汚染などの問題は「私個人が自分の知見のみで部下に指示して事にあたることはできない、専門的かつ複雑な問題」とし、都庁の担当職員などに事情を聴けば何があったかは明らかになるとして、都の「検証」には、全面的に協力するとしている。

そして、石原氏が土壌汚染を無視して強引にコンクリートによる地下空間にさせたという一部報道による「指摘」を取り上げ、「そのような事実は断じてありません」と強く否定した。

文書の最後では

「ともあれ、私の都知事在任中の件に端を発してこのような事態になっていることについては責任を痛感いたしております」

と結んでいる。