400年ぶりに書きかわる世界の「OS」:ブロックチェーンは大いなる変化の序章にすぎない #wiredcon

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10月19日(水)に開催される「WIRED CONFERENCE 2016」。登壇者のひとりであるインターネット研究者・斉藤賢爾は、文明史の観点からブロックチェーンという分散型台帳技術を捉えていた。彼はその技術が400年ぶりに世界のシステムを書き換えうると考えているのだ。この世界が書き換えられたあとに、一体どんな「オルタナティヴ」な未来が待ち受けているというのだろうか。

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斉藤賢爾|KENJI SAITO
1964年生まれ。日立ソフト(現日立ソリューションズ)などにエンジニアとして勤めたのち、2000年より慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)へ。主な研究領域は「インターネットと社会」。「地球規模オペレーティングシステム外殻の開発と応用」で独立行政法人 情報処理推進機構 07年度II期 未踏ソフトウェア創造事業 スーパークリエータ/天才プログラマーに認定される。慶應義塾大学 デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構プロジェクト委員長、同大学院 政策・メディア研究科 特任講師を経て、現在、慶應義塾大学 SFC 研究所 上席所員、関東学院大学 人間環境学部 非常勤講師、一般社団法人アカデミーキャンプ 代表理事、特定非営利活動法人あんしんプロヴィジョン 理事。

「ブロックチェーンのような分散型台帳によって変わるのは、金融だけではありません。わたしたちの社会の根底にある貨幣経済システムから、全て変わってしまうんです」

10月11日(火)に発売される『WIRED』VOL.25上で、ブロックチェーンによってどう社会が変わるか予想し、「WIRED CONFERENCE 2016」でも自身の考える「オルタナティヴ」な未来を語ってくれる慶應義塾大学SFC研究所の斉藤賢爾。彼はブロックチェーンが改善され正しく機能すれば、この社会を支えているシステムは全くの別物になってしまうと語る。そしてその鍵となるのが「分散型台帳」という技術だ。

ブロックチェーンや分散型台帳によってもたらされる「オルタナティヴ」な未来について考えるためには、ブロックチェーンがどのようなものか理解するだけでなく、ぼくらの社会がどのようなシステムによって成り立っているのか理解しておく必要があるだろう。斉藤が語ってくれた言葉のなかには、この社会を支えるシステムと、これからやってくる新しいシステムについて考えるヒントがたくさん隠されていた。

400年間続いてきた貨幣経済というシステム

われわれの社会の根底には貨幣経済システムがある。その影響は経済だけに留まらず、政府なども含めた全てが貨幣経済システムのうえに成り立っている。そしてわれわれの活動の目に見えやすい部分は、貨幣経済システム上で行われている。斉藤はこの状況を踏まえ、貨幣経済は“現代社会のOS(オペレーティングシステム)”なのだと話す。

では、一体いつからわれわれのOSは貨幣経済システムになったのだろうか。斉藤によれば、それは約400年前に起きた東インド会社をはじめとする株式会社の誕生や、さらにはその基礎を生み出すに至った活版印刷技術の誕生まで遡ることができるという。

ルネサンス三大発明のひとつとされる活版印刷技術は情報革命を起こし、科学の発展を促した。例えば著作権のような、現代のわれわれにとっては当たり前に思われるものも、活版印刷により情報を複製するコストが下がったことで生まれてきた概念だ。そして、同じものを大量に複製するという考え方は現代の大量生産・大量消費の基礎でもある。そうして株式会社や中央銀行のようなものが生まれ、産業化を経て出来上がった近代社会が、いまわれわれが生きている現代の社会へとつながっているのだ。

「新しく生まれた技術が、従来の技術による効果を否定してあたかも逆行しているようにみえることがあります。インターネットも同様で、活版印刷のような正確さで情報を複製するというより、写本のように曖昧な複製を生み出しているところがある。時代の流れをひっくり返しているのがいまの技術で、ブロックチェーンのような分散型台帳もそのひとつです」

INFORMATION

10/19開催! オルタナティヴな未来を考える1dayカンファレンス「FUTURE DAYS」

ビジネス+カルチャー+テックのオルタナティヴな未来を夢想・構想する越境型カンファレンス、WIRED CONFERENCE 2016「Future Days」は10/19開催! 人工知能、ブロックチェーン、IoT…。新たなテクノロジーがもたらす可能性を語り、いまとは決定的に異なった「未来の日々=Future Days」を夢見る1日。

ぼくらのOSは地球規模にアップデートされる

分散型台帳は、こうして400年も続いてきた現代のOSを崩壊させるという。なぜそんなことが可能なのかといえば、その根幹には個人と個人の取引を実現させるP2P(ピアツーピア)の思想があるからだ。あらゆる局面でP2Pのやり取りが実現すれば、かつて中央にあった組織は崩壊していかざるをえないだろう。すべての取引が個人同士で行われるようになれば、その取引をまとめていた銀行も会社も役所も、その存在意義は薄れていく。

デジタル通貨が普及すれば、個人間の取引が楽になり簡単に海外送金もできるようになる──。そんな話を、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。しかし、同じことはあらゆる局面で起きるのだ。給料や不動産、結婚、もしかしたら、国籍でさえも。あるいは、タクシーのようなサーヴィス業でも同じことが起きるかもしれない。その社会で駆動するOSは、400年ぶりにアップデートされた“地球規模のOS”なのだと斉藤は語る。

「貨幣経済システムはOSとしてほとんど機能していませんでした。分散型台帳や人工知能がつくるOSは空気のように働いていて、みんなの資源をみんなが使うことで動いていく。だから誰かが止まったとしても全体まで止まることはないんです。そうした世界では、さまざまなことが効率化の名のもとに変化していくでしょう」

「オルタナティヴ」な未来は確実に訪れる

もちろん、OSの入れ替えにはまだ時間がかかる。障壁も多いだろう。なにせ、斉藤の話す世界が実現するとしたら、ぼくらがいま慣れ親しんでいる会社や機関がすべてなくなってしまうかもしれないのだから。しかし、さまざまな場所でブロックチェーンのような分散型台帳が取り入れられようとしているのも事実だ。

「歴史の圧力のようなものがあって、どうあがいても社会は変わっていきます。いまは過渡期なので貨幣経済システムのなかでみんなが生きていますが、分散型台帳はそのシステムと相反する存在。いまの変化をチャンスと捉えて儲けようとすればするほど、自分が依存しているシステムは壊れていってしまうんです」

ブロックチェーンをはじめとする分散型台帳がもたらす「オルタナティヴ」な未来、それがどんなものなのか想像することは非常に難しい。しかし、幸いにもヒントはたくさんある。「WIRED CONFERENCE 2016」は、あなただけのオルタナティヴな未来を構想するのにうってつけの場となるだろう。その未来から決して目を背けてはいけない。ゆっくりと、そして確実に、その未来は訪れるのだから。

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