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●GMO集客アップカプセルで時間と手間をかけずにキャンペーンを実現
○データ活用を目指してアプリを利用したPRを開始

首都圏を中心に親しまれている居酒屋「さくら水産」は、1980年に創業したテラケンが21年前から展開してきたブランドだ。手頃な価格で飲食を楽しめるにぎやかな店として、また昼時には魚を中心にしたヘルシーなランチが500円から食べられる店として、多くの人に利用されてきた。

「一時期は営業活動をしなくてもお客さまに来店いただけていたのですが、競争が厳しい今はそういう時代ではありません。これまで折り込みチラシや駅前でのティッシュ配布など、アナログな営業活動をしてきましたが、より効果的なものを求めて1年ほど前からIT活用を始めました」と語るのは、テラケン 代表取締役副社長の中西雅也氏だ。

当初はLINEなどを利用していたが、LINEの場合、ユーザーデータを店舗側で確認できない。マーケティング・ツールとしての不足を感じ、自社で顧客データの取得および活用ができるものを使いたいと考えてアプリ利用へとかじを切ったという。

「実際にいらっしゃるお客さまを見て50〜60代の男性が中心だと思っていましたが、それが事実かどうかはデータをとってみなければわかりません。そこで、集客に効くアプリを手軽に作ることができるサービス『GMO集客アップカプセル』を利用することにしました」と中西氏。

GMO集客アップカプセルは、GMO TECHが提供するスマートフォンの店舗向けオリジナルアプリを簡単な操作で制作・管理できるO2O集客支援サービスだ。

選定にあたっては、データが自社活用できること、大きな投資が不要であること、管理インタフェースが使いやすいこととともに、店舗のオペレーション負担が少ないことも重視された。接客などの本来の業務に注力しながら手軽に利用できるものとして、GMO集客アップカプセルに決定。当初は試験的に数店舗からの導入を計画していたが、スムーズな導入が可能そうだという手応えから、2015年末には一気に全店舗展開を行ったという。

○アプリのクーポンやスタンプ機能でリピーター獲得&昼客夜誘導を実現

「デジタルマーケティングを行う目的は、新規顧客の獲得、リピーターの獲得、そしてお客さま満足度の向上による客単価のアップです」と語るのは、テラケン 情報システム部 部長の海津匡志氏だ。これら3つの目的のうち、現在アプリが効果を発揮しているのはリピーターの獲得だという。

「アプリのプッシュ機能を利用してタイムリーな情報を配信しています。例えば、雨の日に"今日来店してくれたら、このメニューをプレゼント"と送ったり、大きなスポーツイベントに合わせて一緒に盛り上がろうと提案しつつ特別メニューを提供したりといった具合です。店舗にテレビが置いてあるわけではありませんが、今はスマートフォンのワンセグ機能などを利用できますから、席で盛り上がってくださいというような提案になります」と海津氏。気軽に集まり、騒げるというさくら水産の雰囲気に合わせたPRだ。

また、ランチのみを利用している人を夜の利用者へと成長させる試みもアプリで行われている。ランチ利用でたまるスタンプを居酒屋で生ビールなどと交換できる仕組みだ。

「現在、昼夜それぞれ月間25万人程度に利用いただいていますが、客層が分離しているという実情があります。そこで、ランチスタンプ5つでビール1杯や刺し身盛り合わせをプレゼントするというキャンペーンを行っています。そのほか、期間を指定してアプリを持っていれば割引というサービスを実施した時も好評でした。元々客単価の低い店なので、1品サービスや割引が響くのだと思います」と中西氏は語る。

アプリの構築はGMO TECHのサポートを受けて実施。さくら水産として以前から利用していたオリジナルキャラクターのLINEスタンプがあったことから、画像をうまく流用して楽しい雰囲気の画面を作りだした。

○少ない負担でタイムリーなキャンペーンを打って客をつかむ

配信する情報やキャンペーンの内容、営業企画担当と営業部で行われる定期ミーティングで決定。実施が決まれば、即座に対応するクーポン画面が作られ、適切なタイミングを待ってプッシュ通知などが行われる仕組みのため、スピード感をもって実行できるのが特徴だ。

「チラシの印刷にかかる時間やコスト、配布の手間もなくなりました。また、チラシはどれくらい反響があったのかを店舗で集計する必要があったのですが、これもアプリなら自動です。店舗スタッフには、できることなら100%の力を接客に向けてほしいと思っています。システム対応に割く時間や労力をできるだけ減らして、本来業務に注力できる環境を作るという意味での業務効率化を目指しているのですが、アプリはそれに貢献してくれていると思います」と中西氏は導入の効果を語る。

●次の課題は、アプリのダウンロード促進で新規顧客獲得
さらに、データ活用も始まっている。例えば、ユーザーはダウンロード時にプロフィールと自分の利用する店舗の登録を行うが、意外なデータも見えてきたという。

「創業時は若者が多い店だったのですが、長年愛用していただいている分、お客さまの年齢層が上がってきています。アプリなら若い層にアピールできるのではないかと考えましたが、想定通り、アプリを利用して来店くださるのは、20〜30代の方が多いです。意外だったのは、一部のエリアで20代女性が多かったことですね」と海津氏。ランチメインの利用者などのほかに、住宅地に近いエリアで主婦層が利用している様子なども見えてきたという。

現在のところ、ダウンロードしたユーザーの4分の1程度がアプリのクーポンを利用しているという。そして、利用するユーザーは繰り返し使う傾向が高く、リピーターへの浸透度は高まってきているようだ。

○地力アピールとダウンロード促進で新規顧客増加を狙う

今後の課題は、新規顧客の獲得になるだろう。アプリはあくまでもダウンロードしたユーザーに対するアピールがメインになるため、さくら水産を普段利用していない人にリーチするための施策も必要だという。

「新規顧客の獲得はなかなか難しいと考えています。例えば、ビーコンを利用してプッシュで情報配信を行うという方法もありますが、特に気に入っているわけでもない店からいきなりプッシュ通知が来ても気持ちが悪いですよね。アプリもダウンロード数が増えればやれることは広がると思いますが、それとは別の方法もGMO TECHと一緒に考えていきたいと思っています」と中西氏は語る。

現在考えているのは、Web検索からアプリへの誘導だ。多くの人が、店を探す時にスマートフォンで検索をする時代だけに、検索で興味を持ってもらった上で店舗やアプリに対する誘導を行うという流れが有効になると考えられる。

「例えば、今は社内SNS向けにだけ流している情報なのですが、築地に近い東銀座店では新鮮な魚を買い付けて台車で直接運んだりしている様子を紹介しています。こうした新鮮な魚を楽しめる店ということなどを積極的に発信していきたいですね」と海津氏。

9月5日からは、「海産物居酒屋」としての実力をアピールするキャンペーンとして、さかなクンを応援団長に迎えた「新鮮力プロジェクト」が発足。全国の漁港や産地から目利きのバイヤーが仕入れた食材を、新鮮なまま安価でおいしく提供していることを強調する取り組みだ。こうした地力のアピールから興味を持ってもらい、アプリ取得や来店を促し、さらにアプリで再訪を促すという形が理想と言えるだろう。

「今のところ、自社サイトや席に置いてあるPOPのQRコード、注文用タブレットのアイドル時のスライド表示などでアプリを紹介していますが、これからいかにダウンロードを増やしていくかが課題です。ダウンロード数が増えればやれることはもっと増えて行くと思います」と、中西氏は今後の抱負を語った。

(エースラッシュ)