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米Oracleは9月18日から4日間、米サンフランシスコで年次イベント「Oracle OpenWorld 2016」を開催している。同社はこのところパブリッククラウドに大きくシフトしており、イベントもクラウドの話題が多くを占めた。19日の基調講演で、同社のCEOを務めるMark Hurd氏は、昨年発表した「2025年のクラウド予想」に3つの項目を追加、「クラウドへの移行が進み、企業所有のデータセンターは80%減少するだろう」と予想した。

○軌道に乗るOracleのクラウド事業 - IaaSでAWSに対抗

長年オンプレミスのデータベースライセンスを提供してきたOracleだが、ここ数年のクラウドへの徹底したフォーカスが実を結びつつあるようだ。

直近の四半期(2016年6月-8月期)で、IaaS、PaaS、SaaSを合わせたクラウド事業の売上が9億6900万ドルになり、全体の10%以上に達している。顧客は2万社以上、PaaSとSaaSの合計の前年同期からの増加率は82%に上るという。

なお、IaaSを中心にパブリッククラウドを展開するAmazon Web Services(AWS)の売上高は28億8600万ドル、前年同期比58%増と発表されている(2016年4月-6月期)。

OpenWorldでは前日、経営執行役会長兼CTOのLarry Ellison氏が、「第2世代」と呼ぶベアメタル対応のクラウドインフラを発表、「Amazonのリードは終わる」と述べた。

対するHurd氏の基調講演は、営業部門を統括している同氏らしく、世界経済からクラウドの必要性を説いた。主要国の経済成長は中国6.7%、米国は2.4%、欧州は1.9%、日本は0.5%と軒並み低く、ロシアとブラジルは約3%のマイナス成長が予想されている。このような状況の下、企業の売上は伸び悩んでおり、製品やサービスでのイノベーションを起こすのと同時に支出を減らすことを余儀なくされている。

また、企業のイノベーションのカギを握るのがITと言われているが、企業のIT予算の80%がメンテナンス、つまりイノベーションにつながる部分に投資されていないという状況だ。「S&P500企業の平均のソフトウェア使用期間は21年、これが5年半前に調達したインフラの上で動いている」とHurd氏。さらに、セキュリティが"攻め"のIT投資を難しくしている。

なお、最終的に経営責任をとらなければならないのがCEOだが、現在、CEOの平均任期は18四半期だという。

このような状況が、クラウドのニーズをもたらしている。実際、企業のIT支出の成長率がほぼ0%であるのに対し、上位クラウド事業者は44%増で成長しているという。

○コスト管理を目的にクラウドに移行したHSBC

そこで、Hurd氏はあらためてクラウドのメリットを示した。月額サブスクリプション形式で提供されるクラウドは、資本支出と労働コストを下げ、メンテナンス、アップグレードなどの作業は不要だ。「オンプレミスのシステムと同じことが低コストでできる」とHurd氏。

だが、それだけではない。セキュリティ、信頼性、拡張性などのメリットもある。これはイノベーションへの取り組みにつながる。「製品やサービスを迅速に市場に投入でき、アプリケーションを高速に拡張し、顧客が求めているものをスピーディーに満たすことができる」とHurd氏。「クラウドへのシフトは単に技術的なシフトではない。これまでとは異なる経済モデルにおけるシフトで、これにより企業のビジネスモデルを変革できる」と続けた。

Oracleは52億ドルをクラウドの研究開発に投資しているが、売上比ではクラウドベンダーで最大の規模だという。データセンターは世界19カ所に達している、とHurd氏は報告する。強みは、IaaS、PaaS、SaaSとフルスタックを持つこと、そしてオンプレミスとクラウドの共存をサポートできることだ。

基調講演中、顧客の1社として登場したのがHSBCだ。同社はこれまでスクラッチでシステムを構築したり、購入したアプリケーションをカスタマイズしたりしていたが、「技術を最新に保つためのコストが非常に高くなり、作業も複雑になってきた」と、HSBC Global ServicesのCFO、Joanna Fielding氏はクラウドの道を選んだ経緯を説明した。コンサルティングファームであるDeloitteの協力を得て、「Velocity(速力)」というプロジェクトのした、2年前よりクラウドの導入を進めており、「Oracle Fusion」をクラウドで実装し、ERPなどのSaaSの導入を進めている。

「きちんとコストを管理し、削減し、コスト周りの透明性を改善したい」とFielding氏は狙いを語った。

○2025年のITに関する5+3の予言

Hurd氏は昨年のOpenWorldで、2025年のクラウドについて次のように予言した。

1. 運用環境にある80%のアプリがクラウドで動くようになる
2. SaaS市場は、2、3社のスイートプロバイダーが80%のシェアをとる
3. 100%の開発とテスト環境がクラウドで動くようになる
4. ほぼすべての企業のデータがクラウドに保存されるようになる
5. エンタープライズクラウドは最も安全なITとなる

開発・テスト環境については、2016年の時点で40%がすでにクラウドに移行済みまたは移行予定となっていることから、「2025年前に実現するのでは」とも述べた。また、5のセキュリティは、数年前まで企業がクラウドに移行しない大きな理由だったが、Hurd氏は、「セキュリティがむしろクラウドを決定する要因になっている」と述べた。

今年は上記5つに、3つの予言を足した。

1つ目は、「IT予算の80%がクラウドに費やされる」だ。新規のアプリケーションはほぼすべてSaaSになるだろうと付け加えた。

2つ目は、「企業が所有するデータセンターは80%減る」だ。ワークロードがクラウドに移行するにつれて、データセンターは不要になっていく。「残るのは、商用の代替がないレガシーアプリケーション」とHurd氏。これにより、「メンテナンスからイノベーションに予算が切り替わる」と続けた。

そして3つ目が、「CIOは80%のIT予算をイノベーションに費やす」だ。現在、企業のIT予算の80%はメンテナンスに流れていると先述したが、これが不要となればイノベーションに解放されるというのがHurd氏の予想の背景だ。「メンテナンスのコストと複雑性は、クラウド事業者が引き受ける」という。

「CEOやCFOは、クラウドのインパクトが単に技術的なものではなく、ビジネスモデルの変更を起こす戦略的なものであると理解すべきだ」と、Hurd氏は講演を結んだ。

(末岡洋子)