反腐敗運動の大嵐が巻き起こる中国で、窃盗団による犯行発覚や、腐敗官僚の愛人による暴露により、汚職の事実が発覚するという事例が相次いでいる。(Bullion Vault/flickr)

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 「彼らも盗んできたのだ」。合肥市の裁判所で開かれた公判で、窃盗団の一人である被告は、開き直りを見せた。伝えられるところによると、この窃盗団は、役人高官が汚職で手にした裏金や賄賂品のみを狙って、窃盗を繰り返していたという。まるで「ルパン三世」一味に例えられそうなこの窃盗団を、中国国内では英雄視する声さえあるという。

  中国では、習近平主席が反腐敗運動をまい進させている。こうしたなか、窃盗団による犯行で、腐敗官僚の汚職が発覚するという事例が相次いでいる。この現象は「泥棒反腐(腐敗に反対する泥棒)」と呼ばれている。

 「彼らも盗んできたのだ」開きなおる窃盗団

 9月10日、中国メディアの新京報が報じたところによると、合肥市の裁判所で窃盗罪に問われている窃盗グループ4人に対する公判が始まった。

 窃盗団は、2006年から高官や役人関係者のオフィスや自宅のみに狙いを定めて、浙江省、河南省、湖北省、山西省など複数の省にまたがり25件にも及ぶ窃盗を繰り返していた。

 窃盗グループがターゲットにしていたのは、汚職官僚のオフィスに隠されていた高級タバコや金券、高級腕時計、携帯電話、パソコン、各種ブランド品、宝飾品、冬虫夏草(非常に高価なことで知られる漢方薬で、賄賂によく使われる)、現金など。

 窃盗団は逮捕された場合のことも考え、犯行現場で誰からどの品を盗んだか写真に記録していた。汚職を取り締まる規律検査委員会へこうした証拠を提出することにより、自身の情状酌量を狙う意図があったとみられている。

 唐水燕容疑者は、マスコミの取材に対し「彼らはみな汚職官僚だ。私は彼らからしか盗んでいないが、彼らも盗んできたのだ」と語り、こうした賄賂の品々は、持ち主が不当な手段で手に入れたものであることを強調している。

  今回の裁判で、一連の盗難事件の主犯格、林暁君容疑者には無期懲役、唐水燕容疑者、房雲雲容疑者の2人には10年以上の有罪判決、唐燕平容疑者には禁固3年の有罪判決が下された。

窃盗団の余罪追及で、複数の汚職が明るみに

 この窃盗団の余罪を追及する中で、複数の汚職事件が明るみに出た。窃盗団が汚職官僚の名前を党の紀律検査委員会に報告したため、取り調べが始まったケースもある。

 例えば2013年5月、同窃盗グループは当時中国建設銀行安徽省支店の機構業務部副代表を務めていた張瑞紅の自宅に侵入し、60万元(約920万円)相当の高級品や金券などを盗み出した。

 被害を受けた張は、当初警察に対し被害総額は150万元(約2300万円)と報告した。だが警察が現場検証に訪れると、数千元(約数万円)の被害にとどまったと被害総額を大幅に訂正した。

 その後、張とその夫である当時中国銀行業監督管理委員会安徽監管局の副局長を務めていた胡沅の汚職が明るみに出たため、2014年10月及び2015年3月、張と胡はそれぞれ贈賄の罪により立件された。

 またこの事件以外にも、ここ数年で、盗難事件を発端に盗難被害者の汚職が明るみに出るといったケースが相次いでいることが報じられている。

 

7億円相当を盗まれた党書記

 2011年11月13日、中国でも有数のコークス生産企業である山西焦煤集団の前董事長で、党書記も務めていた白培中の自宅から大量の現金が盗まれた。白培中の妻が警察に届けた被害総額は300万人民元(約4581万円)だった。

 しかし、申し出た額よりも被害は大きかったことが発覚。翌日、逮捕された容疑者2人の供述によると、600万人民元(約9192万円)、100万元香港ドル(約1318万円)、27万米ドル(約2760万円)、300万ユーロ(約3億4222万円)に加え、金の延べ棒7〜8キロ、高級腕時計、ダイヤモンドの指輪、ネックレス、その他の宝飾品を盗んでいたことが明ら。実際の被害総額は被害届けに記載された金額の約17倍に相当する、5000万元(約7億6356万円)にも上ることが明らかになった。この事件で白培中の財産問題が明るみに出て、1カ月後に白培中は罷免された。

 また2003年3月5日早朝、貴州省長順県の中国人民政治協商会議元副主席兼計画局局長を務める胡方瑜の自宅で、窓の外に干してあった胡のズボンが盗まれた。

 犯人は現金を抜き取った後、ズボンをある病院裏口に捨てた。のちに警察に届けられたこのズボンを調べると、ベルトに細工が施され、中に預金証明4通が隠されていた。うち2通は胡方瑜本人の名義、残りの2通はそれぞれその息子と父親名義で、預金総額は42万800元(約640万円)だった。

 この事件により3月13日、胡方瑜は当局から汚職について厳しい尋問を受けることになった。

 あるネットユーザは、12件の「泥棒反腐」を分析。事件背景は、腐敗官僚の愛人が、待遇の不満や別れの恨みを持って、相手の男性のスキャンダルを暴露し、失脚させる「情婦反腐」と似ている。現代中国においては、泥棒や愛人が時には思わぬ伏兵となって、反腐敗運動の強力なサポータとなっていると論じた。

(翻訳編集・島津彰浩)