犬の肝臓のがん

肝臓がんとは、肝臓にできる悪性の腫瘍のことです。

肝臓は沈黙の臓器と言われており、肝臓にがんがあったとしても症状として出てきた時には末期のがん、ということも多いと言われています。また、肝臓は血管が豊富なため、血液を経由してがんが運ばれることも多いのです。

肝臓がんの悪化を抑えるためには早期発見が重要です。

犬の肝臓がんの原因と種類

原因

肝臓がんは、ある種の化学物質(発がん性物質)によって誘発されることが知られています。
洗剤や農薬、その他化学物質を使った製品に含まれているため、特定は難しく、また環境要因(発がん性物質を含んだ塗料や廃棄物等の近くで暮らしている場合)も考えられるため、事前に知らない場合は、これらを予防するのは難しいでしょう。
また、稀にこのような要因を含まず自然に発生する場合があるようですが、この原因は不明とされています。

種類

肝臓がんは肝臓そのものにできる「原発性」と、血液にのって遠隔転移の結果できる「転移性」の2つに分けられます。

「原発性」のがん

原発性のがんには肝臓の細胞由来の肝細胞癌、肝臓近くにある胆管由来の肝内胆管癌、肝臓の血管由来の血管肉腫などの種類があります。

「転移性」のがん

転移性のがんは肝臓に近い消化管や膵臓、乳腺がん、肝臓以外の臓器に発生した血管肉腫、リンパ腫や骨髄疾患、肥満細胞腫といったものから遠隔転移して起こります。

犬の肝臓がんの症状

肝臓がんの症状は、末期になってから現れることが多く、お腹が張ってるなと気づいた時には、腫れあがった末期がんが存在していたということがよくあります。

初期症状

肝臓は血管が豊富で、体内の有害物質を一気に引き受け、解毒する作用を持ちます。
これは、予備能力といって、一部の肝臓の細胞が障害を受けたとしても、その他の細胞が機能できるようになっています。そのため、広範囲に重度の障害を受けない限りは症状として出てこないのです。
肝臓が障害を受けた初期には、なんとなく元気がない、食欲がない、といったようにあまり特徴的な症状は出てきません。

つまり、軽度の肝臓がんは、「症状で判断する事がほぼ不可能」と、言えるでしょう。

なお、胆管由来のがんであれば、ある程度症状にでるため、判断が出来ます。
がんの増殖によって胆管狭くなり、分泌物の胆汁が詰まって、目や皮膚などが黄色くなる黄疸の症状として出てきます。

末期症状

肝臓の障害が重度になってくると上記のような症状に加え、がんの腫大や炎症によってお腹が張る、腹水が貯まる、嘔吐、下痢などの症状が出てきます。

また、肝臓は、凝固系といって、出血時に止血するように働く凝固因子を産生する場でもあるため、肝臓が障害を受けた際には内出血を起こしやすいなどの出血傾向に陥ります。

犬の肝臓がんの検査

肝臓になんらかの病気が疑われる場合、その原因を的確に判定できる簡単な検査はありません。

そのため、問診や身体検査に加え以下のような検査を行う必要があります。

尿検査糞便検査血液検査腹部のレントゲン検査エコー検査肝生検 ...等

これらを組み合わせて行います。レントゲン検査では肝臓のサイズや形、エコー検査では肝臓がんの場所や形態などを見ていきます。

肝臓がんは胆管や血管由来のこともありますので、細かい組織をみるために、時にはCT検査が必要になってくることもあります。
肝臓は組織の55%以上ががんなどで侵されないと全体的な肝機能障害として検査にひっかからない場合があるので注意が必要ですが、血液検査も肝臓の機能を評価できる項目があり、有用です。

健康診断の血液検査結果で肝臓の項目に異常が見られたら、画像検査などの追加検査を行うことが好ましいです。

また、肝生検は、エコーをみながら腹部からアプローチして肝臓に細い針を刺し、肝臓の細胞を採取する検査です。これは腫瘍の種類や進行度合いを知るのに重要な検査です。

この検査は時には犬に鎮静剤を投与して行うこともありますので、リスクや時間がかかる事を覚えておきましょう。

犬の肝臓がんの治療法

外科手術

肝臓がんの治療は、原発性でかつ限局している病変であれば、外科手術で取り除くことになります。全てをうまく取り除くことができれば、寿命を全うすることも可能です。

しかし、肝臓がんが複数存在していたり、転移性のがんであれば、たとえ見える範囲でがんを手術で取り除いたとしても、再発の可能性が十分に考えられます。

そのため、手術で成功するのはごく一部のがんと言ってもいいでしょう。さらに開腹手術は時間がかかりますので麻酔のリスクもありますし、胆管を触る手術では、近くの膵臓に炎症をもたらす可能性もあり、術後膵炎になるケースもあります。

抗がん剤治療

人間同様に抗がん剤治療もありますが、これによって肝臓がんが完治することはありませんし、肝臓がんに特に有効とされている抗がん剤もありません。
肝臓がんの種類によっては抗がん剤が選択されることもありますが、肝臓がんを小さくするといった意味では有用かもしれません。

また、リンパ腫による転移性の肝臓がんでしたら、抗がん剤治療が効く可能性があります。抗がん剤によって、完治ではないですが、寛解(あたかも病変が消えたように症状も落ち着くようになること)に至るケースも見られます。

放射線治療

放射線治療も肝臓がんの治療に含まれます。
この治療によって、肝臓がんの退縮や症状の緩和が期待できます。しかし大きな動物病院や大学病院に通うことになりますし、治療には全身麻酔が必要ですので、1回の治療にもリスクを伴います。

支持療法

最終的には肝臓がんの症状の緩和を目的とした、支持療法になることが多いです。
例えば、肝臓がんになったことで食餌をとることが出来なくなった時には、点滴をしたり、鼻から食道にかけてカテーテルを入れてカテーテルから給餌したりします。

また、消化器症状や痛みなどが出れば薬で緩和したり、肝臓の保護の為にBCAA製剤(アミノ酸製剤)のようなサプリメントを与えたりします。

まとめ

肝臓がんは広範囲になるとほとんどは有効な治療がないため、早期発見が重要です。
しかし、初期では症状として出てくることはまれですから、中〜高齢犬は、半年に1回程度の健康診断をお勧めします。高齢になると免疫も低下しますから、がんの進行を早めてしまいます。家庭では栄養面でもサポートできるといいですね。

肝臓には高タンパク、低脂肪の食餌が良いですし、ミネラルバランスにも配慮するとなお良いです。
肝臓がんの治療には選択肢も複数あるため、愛犬にとってどれが1番良い選択か、獣医師とも十分に話し合って下さいね。