レスター・シティの岡崎慎司が、2試合連続で出番を与えられなかった。

 9月17日に行なわれたバーンリー戦で、「ベンチスタート+出番なし」。昨季も出番のない試合はあったが、2試合連続はレスター加入以来、初めてのことである。しかも2トップは、前回のクラブ・ブルージュとのCLグループリーグ第1節に続き、ジェイミー・バーディーとイスラム・スリマニのふたり。ローテーション制を採用せず、新加入のスリマニを連続起用した。

 試合結果は3−0の快勝で、そのスリマニが2ゴールを挙げた。ベンチ入りした岡崎、アーメド・ムサ、レオナルド・ウジョアのFW3人を最後まで起用しなかったことからも、クラウディオ・ラニエリ監督が試合内容と新2トップの出来に満足しているのが伝わってきた。

 こうした状況に、タッチライン際でアップを繰り返していた岡崎も危機感を募らせる。クラブ・ブルージュ戦後は欠場に対して落胆の色が強かったが、バーンリー戦後は起用されない事実を重く受け止めていた。

「ここまで2トップがフィットされたら、結構、今までにないくらい......なんていうんですかね......今日は出番すらもらえなかったわけじゃないですか。現状維持じゃ、もう(試合に)出られないのは間違いない。スリマニ? 点が獲れて、ボールも収められて、プレッシャーもかけられる選手が現れた。(全体的なプレーの)水準が高く、プレッシャーの強度もウジョアより高い。

(セットプレーからのヘディングシュートで)1点を獲れるのが、スリマニのよさ。それ以外のプレーもよかった。ゴール前で力を発揮したんで、何も言うことはない。しかも、コイツ(運を)持っているなと思う。持っていないと、あそこで決められない」

 セットプレーからの1点目、クロスボールを泥臭く押し込んでの2点目と、スリマニはストライカーとして本領を発揮した。得点以外でも、前線でポストプレーをこなしたり、サイドのスペースに流れてパスを引き出したり、スルーパスで好機を演出したりと、多彩な才能を示した。岡崎ほどではないが、敵のパス回しを追いかけるハードワークも兼備。2トップでコンビを組むバーディーとは、柔らかいボールタッチで良質なコンビネーションを奏(かな)でた。

 公式戦2連勝を飾ったことで、「ここからの何試合かは今のメンバーで行くでしょう」と岡崎は言う。突如出現した強力なライバルにポジションを奪われた格好になるが、冷静に今の状況を捉えてもいる。頭のなかを整理して考えた結果、「必然だった」との結論に達したという。

「去年は(実質的にライバルとなる強力なFWが)いないし、チームも勝っていたから、自分が試合に出られていたところはあった。結局、出場チャンスをもらいながら、ゴールを獲り切れなかった。そのツケが回ってきた。チームとして、新しいFWを獲らざるを得なかったんだと思う。悔しいけど、今の現実をそう受け止めている。

 昨季からゴールを求めていたけど、チームがハマって負けなかったことに、自分が助けられていた部分はあった。でも、チームが求めていたストライカーがやって来て、今ハマったわけじゃないですか? ある意味、必然じゃないですか、チームが求めていた選手が入ったというのは。

 現実的に考えて、サブからのスタートになる。プレミアリーグで24ゴールを挙げたバーディー、ポルトガルで27ゴールを奪ったスリマニというふたりのストライカーがいて、ムサもロシアリーグで13ゴール決めている。そういう実力のある選手、強力なストライカーとの戦いになるってこと。レスターに来たっていうのは、忘れたほうがいい。もう、次のレベルでの戦いに入った。昨季とはまったく違うレギュラー争いですね」

 そう考えるようになったからこそ、CL初戦となったクラブ・ブルージュ戦に対する認識も変わった。試合直後は、「この監督はそんなことするのか?」と、落胆や怒りやさまざまな感情が沸いてきたが、結果が重視されるプロの世界である以上、「自分がもうひとつ上のレベルに行かなきゃいけない」現実として受け止めるようになった。

 第4節のリバプール戦で大敗したように、レスターの戦術は対戦相手に研究され、十分な対策をとられるようになった。この件については、シーズン開幕前の時点でラニエリ監督が指摘しており、「違うプランを用意しなければ」と警戒心を強めていた。そして、スリマニが加入した今、彼の高さと強さを生かした攻めが主流になっていく公算は大きい。

 シンプルにクロスボールを入れて、スリマニの頭に合わせる。あるいは水準以上の足技を生かし、バーディーやリヤド・マフレズとのコンビネーションで崩し切る。ハードワークも十分こなすことから、昨季のベースを劇的に変える必要がないのも利点だ。

 しかし岡崎は、こうした状況に闘志を燃やしている。やるしかないという気持ちが、彼を突き動かしているのだ。

「今までにないくらい、厳しいFW争いやなと。だから個人的には、スゲー開き直れるシチュエーション。ここからやな、俺のプレミアリーグの第2ステージは。そんな感じですね。まずは何らかの結果を残して、ラッキーボーイ的な感じで見てもらえるようにならないと。

 今日の試合も、他のFWを起用しなかった。昨季からそうですけど、ラニエリ監督にはベンチの選手を気持ちよくさせる考えがない。サブの選手のモチベーション上げるために、FWの選手を入れる考えはない。だから自分で、(チャンスを)掴んでいくしかない。そういう意味では、本当に厳しい状況になったなぁと改めて思います」

 バーディーとスリマニの2トップに割って入る糸口は、岡崎起用時に増大する躍動感にあるように思う。攻守両面でスイッチを入れるアグレッシブな動きで、チームにダイナミズムを注入する。こうした動きは、レスターで岡崎がもっとも得意としている。実際にバーンリー戦も、前半はチーム全体の動き出しが少なく、陣形が間延びしている印象を残した。そして、何より大事なのはネットを揺らすこと。昨季5点に終わった岡崎としては、こちらのほうが重要度が高い。

 今季はCLとの二足の草鞋(わらじ)を履きこなすため試合数が多く、日本代表FWとしてもアピールのチャンスは残されている。与えられた出番で、いかに結果とインパクトを残すか──。ここが分岐点になってくる。

田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke