連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第25週「常子、大きな家を建てる」第145回 9月19日(月)放送より。 
脚本:西田征史 演出:深川貴志


ついに、あと2週、12回を残すのみとなった「とと姉ちゃん」。
10代で、家長である父を亡くしたヒロイン・常子(高畑充希)は、父の遺言に従って家長となり、母とふたりの妹を守って生きてきた。
彼女の目標は、家族を守ること、妹を嫁に出すこと、家を建てること。
戦争という大変な出来事をくぐり抜け、出版社を立ち上げて、1933年、末の妹を嫁にだし、39年には、長らくそこで暮らしてきた土地を買いあげて大きな家を建てた。
25週のサブタイトルは「常子、大きな家を建てる」だったが、実のところ「常子、大きな家を建てた」(過去形)だった。

仏壇も大きくリッパになった気がする。
大きなテーブルに、小橋家、水田家、南家と3家族が囲み、にぎやかにご飯。
生涯独身の長女、専業主婦の次女、仕事と家庭を両立する三女と三者三様の女の生き方を三姉妹が体現している。
それぞれの幸せを抱きながら生活する常子たちのところに顔を出す近所の人たちは、戦中から変わらない。でもあの意地悪な班長さんは終戦以降、一度も顔を見せない。

あなたの暮し出版も順風満帆で、もうすぐ100万部を突破しそう。綾(阿部純子)がついに正社員として入社している。
花山(唐沢寿明)は編集長室でとうとう珈琲を煎れて飲んでいた。戦後、喫茶店を経営していたにもかかわらず、いまのいままで珈琲に関する話題が一度も出てなかった花山。常子に「君にしか書けないもの を書いてみないか」と提案する。「台所の原稿も好評」だったって初期の話過ぎない? 
かか・君子(木村多江)が「このところ会社に顔ださんが」と花山が言うのも謎。よく顔出してたのか! と驚いた。おうちにずっといるものとばかり。

そのかかが急に孫のための衣裳をつくり出す。
ほか、急に歌を口ずさむ登場人物たち。季節の風物詩も色々出てくる。
なんだろう、残り2週間だから、今まで入れられなかったものを後悔のないようにめいっぱい入れておこうという試みだろうか。まるで、閉店セールのような感じがした。

そして、かかはカラダの不調を訴える。
衣裳づくりの話になるとき、「それよりあれどうなった」って聞いて、まさか認知症? と一瞬思わせて、不治の病だった・・・。
いよいよ薄幸女優の本領発揮である。木村多江は顔が若く見えてしまうのは仕方ないとして、老いの細やかな動きを地味ながらていねいに作り込んでいる。

病名をひた隠す常子たち。広い個室に入院したかかだったが、なんでもないなら「退院したい。ここでひとりは寂しくてね」と願う。

「退院したい。ここでひとりは寂しくてね」

嗚呼。この一言で、常子がずっと独身でいたわけ・・・妹たちが一緒に暮らしたがったわけが痛いほどわかった。
早くに夫(西島秀俊)を亡くしたかか。ちょっと抜けていてひとりじゃ心配なかか。そんな彼女を守りたい一心で常子はここまでがむしゃらに生きてきたのだ。そう思うといじらしくなる。
ここから先は、常子が家長としてのすべての目標を達成し、自分しか書けない文章に何を選ぶかが描かれるのか。その彼女しか書けないものこそが「とと姉ちゃん」にとってすごく大事な部分だろうと期待している。
(木俣冬)