男子テニス国別対抗戦デビスカップ・ワールドグループ(以下WG)プレーオフ「日本 vs. ウクライナ」が、大阪で開催され、日本(ITF国別ランキング16位、以下同)は、5戦全勝(初日にシングルス2勝、2日目にダブルス1勝、最終日にシングルス2勝)でチームの勝利を確定させ、WG残留を決めた。

 今回は日本のエースである錦織圭(ATPランキング5位、9月12日付け、以下同)が、シングルスを戦わず、ダブルス1試合だけをプレーし、若手2人がシングルスでプレーするという今までにない日本代表の布陣で臨み、違う形で勝利したことに意味がある。

 錦織はUS(全米)オープンでベスト4まで残ったため、当然のことながら翌週のデビスカップまでに回復せずに、夏に蓄積された疲労が残った。シングルスに初めて抜擢されたチーム最年少で20歳の西岡良仁(96位)は、「全米を見たが、疲れるのは間違いないですし、(錦織を)できれば休ませてあげたいなというのはありました」と先輩を慮(おもんぱか)った。

 オープニングマッチでは、ダニエル太郎(88位)が、セルギ・スタコフスキ(105位)に7−6(4)、7−6(2)、6−1、で勝利し、日本に貴重な1勝目をもたらした。

 3月のWG1回戦・イギリスとの試合で、日本チームが錦織だけに頼っているところがあると語ったのは、ダニエルだった。

「特にイギリス戦の時は、相手が(アンディ・)マリー(2位)たちだったので、やっぱりさすがに勝つのはタフだと思っていたし、あそこは錦織選手に頼らないといけなかった。今回は錦織選手がいなくても、僕たちで勝てるチャンスがある相手。とにかく勝ててよかった」

 自らの勝利によって、ダニエルは日本代表チームの中で存在感をアピールでき、大きな一歩になったと胸を張った。

 さらに第2試合は、西岡がイリヤ・マルチェンコ(50位)を6−4、5−7、6−4、7−5で勝利し、デビスカップのシングルス初出場で初勝利を挙げた。

「今までは正直、錦織選手の(シングルスの)2勝を前提とした勝ち方であったと思う。(今回は)錦織選手をこうやって温存することができた。チームとしてまた強くなったと思います」

 26歳の錦織を使わずに、23歳のダニエルと20歳の西岡をシングルスに起用したデビスカップ日本代表の植田実監督の采配は的中した。日本は初日を2勝で終え、最高のスタートを切った。

「2−0狙いでいくんですけど、もちろん0−2も覚悟していた。若い2人が僕らの想像をも超えた力を発揮する可能性を優先しました。たぶん錦織も、それに賭けていくことが必要だと、きっと思っていたと思う」

 2日目のダブルスでは、錦織が杉田祐一(98位)と初めてのペアを組んだが、スタコフスキ/アルテム・スミルノフ(321位)組を6−3、6−0、6−3で破り、日本は最終日を待たずにWGプレーオフで初めて3連勝でチームの勝利を手にした。

 今回の代表メンバー4人全員で勝ち取った勝利を一番喜んでいたのは錦織のように見えた。これまでは錦織がシングルスで2勝しても、それを活かしきれないことがあり、WGでの日本の負けパターンになっていた。錦織のワンマンではチームとしての限界があったのだ。

「チームのみんながレベルアップして、自分自身も杉田選手とダブルスをして、新たな道も見えた。今回日本チームとして得たものがすごく大きかった」

 錦織はチーム全員での勝利の中で、とりわけ若手2人によるシングルスの勝利に日本代表チームのレベルアップの手ごたえを感じたようだ。

 今回の戦いでは、日本代表4人全員がトップ100という布陣で初めて臨み、WG残留を決めた。「WGにいることが、選手たちのモチベーションをよりつないでくれる」と植田監督は語るとともに、今後WGで日本がより勝っていくには、まだ課題が多いと指摘する。

「デビスカップでベスト8、ベスト4まで行きたいと願った時に、正直なところ戦力としてはまだ揃っていない。今、錦織がトップ5にいますが、少なくとも30位ぐらいに1人いて、50位ぐらいに1人いて、というところを目指して、一人ひとりが上げていければ、チャンスは来ると思う。今は(WGに)とにかく居続けることが、まず大切だと思う」

 錦織以外の日本選手は、まだトップ100に入ったり落ちたりするかもしれないが、そこに定着する選手で臨めるデビスカップにしたいと、植田監督は来シーズンを見据える。

 錦織のデビスカップでの目標設定も非常に高い。WGにとどまり、そこでトッププレーヤーたちと対戦することは、たとえ負けても日本代表の今後のレベルアップには欠かせないことだからだ。

「欲を言えば、まだまだベスト4の(他国の)メンバーを見ても、(日本には)まだまだ足りないところがたくさんあります。(日本は)まだ数年、残留、(WG)1回戦、上下するでしょうが、多分時がくれば、どんどん上に行けるチームになるかなと思う。今しばらく耐えて、WGにいることがやっぱり最低限の目標。そこから上は、たぶんみんなの調子だったり、ドロー運が傾けば、必然的に上に行けるチームになっていけるかなと思います」

 錦織がいなかった10年前の日本代表は、WGプレーオフ進出が現実的な目標で、WG昇格は夢だった。それが今はWGにとどまることが最低限の目標となっている。この大きな変化をもたらしたのは錦織であり、彼の日本のエースとしてふさわしい実力と意識の高さが、日本代表を牽引し、チームのレベルアップを促してきた。

 若手の成長を自分への刺激にもしている錦織は、チームリーダーらしく力強く宣言する。

「もっともっとみんなで強くなっていけたらいいですね。このまま日本が強くなっていくのは、絶対だと思う」

 この錦織の言葉に引っ張られるように、2017年にひと回り強くなった日本代表がWGで活躍することを楽しみにしたい。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi