今回の相談は、不動産会社勤務の田辺順子さん(仮名・32歳)から。

「デスクワークをしているときに電話がかかってきても、絶対に取らない後輩がいます。電話は新人が取るのが常識だと思うんです。どう言ってやればいいでしょうか」

鈴木真理子先生に伺ってみましょう。

電話は3コール以内に出るのが基本のビジネスマナー

これまで、ビジネスにおいて、かかってきた電話には「すぐに出る」のがマナーとされてきました。相手を待たせることは、相手の時間を奪うことになるからです。「オフィスにかかってきた電話には、3コール以内に出る」ということを、新人研修で習った人も多いのではないしょうか。別の作業中で4コール以上鳴らしてしまった場合、「お待たせいたしました」というひと言を添えるのが、基本のビジネスマナーです。

ただし、近年はすこし様子が変わってきています。会社から個別に電話が支給される人が増え、打ち合わせや商談中にも直接電話がかかってくる場合がありますよね。

ビジネスでは、目の前の相手が最優先です。電話が鳴ったからといって、そちらを受けてしまうのは、逆にビジネスマナーとしてよろしくありません。

そういう場合は、出なくても問題はありませんが、鳴りっぱなしというのは、目の前の相手にも、電話をかけてきている相手にも失礼になります。電話に出られない状況の場合には、予め留守番電話サービスに切り替えておく必要はあるでしょう。

では、たとえば、急ぎのデスクワークを依頼されて、パソコン作業に集中しているときなどは、誰が電話にでるべきでしょうか。

「なんで出ないの?」という個人攻撃はNG

正解は「出られる人が出る」です。

田辺さんが主張している通り、電話は新人が取るものとされています。キャリアを積んだ先輩社員が自分の仕事を中断して電話を取るよりも、仕事がたどたどしい新人が電話を受けた方が、業務の効率がいいからです。電話の取次ぎをすることで先輩をサポートするという、ちゃんとした理由があるんですよ。若手とされている入社3年目くらいまでは、率先して電話に出た方がよいでしょう。

でも、25歳以上の人に、「後輩だから電話に出ろ」というのは気の毒というもの。当人だって鳴り続ける電話に出て、該当の方につないで、不在の場合にはメモを残す、なんてことをずっとし続けていたら、仕事になりませんよね。割合としては、後輩7、先輩3が好バランス。先輩でも、4回以上コールが鳴ったら電話を取りましょう。「なんで出ないの? 後輩なんだから出なさいよ」という個人攻撃はすべきではありません。「私だって仕事があるのに!」と反感を買うだけです。

職場全体で体制を整えている企業もある

電話に出る人を当番制にしている企業もあります。たとえば、午前中の仕事が捗る9時から10時に、ひとり、主に電話をとる人を決めて、それ以外の人は自分の作業に集中する。そうすると、「電話に出る、出ない」がトラブルの要因になることがありません。

電話番を数人残して、それ以外の人は作業をするためにパソコン持参で会議室など別室に移動したりして、物理的に電話に出られないスタイルを取っているところもあります。

社内全体が難しくても、チーム内で、「今から1時間、集中してやらなくてはいけない作業があるから、電話がなったら受けてくれる?」とお願いすることはできるはずです。

自分だけでなく、社員全員が、気持ちよく、仕事に集中するためにできることを、みんなで考え、整えていってみてください。



■賢人のまとめ
25歳以上の後輩に電話に出ろというのは反感を買うばかり。お互いに出る、という意識でオフィスの雰囲気改善に努めるのが賢いアラサーのマナーです。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『もう必要以上に仕事しない!時短シンプル仕事術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部に迫るヒットとなる。 

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