何とも深刻な状況である。欧州でプレーする日本人選手の多くが、所属クラブで苦闘している。

 プレミア王者のレスターに在籍する岡崎慎司は、ジェイミー・ヴァーディのパートナーという立場を脅かされている。アルジェリア代表FWイスラム・スリマニに先行されているだけでなく、スリマニと同じ新加入のアーメド・ムサの追い上げも受けている。

 岡崎とともにプレミアリーグでプレーする吉田麻也は、ヨーロッパリーグ(EL)が主戦場となっている。リーグ戦をベンチから見つめる状況が続けば、次にプレーするには9月29日のEL第2節で、その次は10月20日の第3節となってしまう。

 イタリア・セリエAのACミランに在籍する本田圭佑は、リーグ戦4節終了時点で1試合しか出場できていない。それも途中出場で、わずか10分ほどである。

 インテルの長友佑都も、スタメン定着に至っていないのだ。チーム状態が芳しくないなかで、フランク・デブール監督の信頼をつかみ切れていない。

 ドルトムントの香川真司も、すっきりとしない日々を過ごしている。9月のW杯予選後は、リーグ戦とチャンピオンズリーグのいずれもスタメンから漏れている。選手層の厚いチームで、勢いのある若手選手に押されている印象だ。

 宇佐美貴史も難しい立場にある。アウクスブルクは4−2−3−1のシステムを基本布陣としており、彼は2列目のポジションを争う。だが、開幕から先発してきたブラジル人MFカイウビーが戦線離脱した9月18日の第3節マインツ戦でも、宇佐美に出場機会は巡ってこなかった。ディルク・シュスター監督の序列では、2列目の4番手ないしは5番手である。

 カイウビーの代役はまだ固まっておらず、今後のゲームでチャンスを与えられる可能性も残されている。それにしても、状況はシビアだ。ピッチに立ったゲームで、確かなインパクトを残さなければならない。
 
 所属クラブで出場機会の限られている海外組は、日本代表への招集を見送ってもいいのではないだろうか。ロシアW杯最終予選は、限られた準備期間で試合に臨まなければならない。長距離移動と時差による疲労に加え、ゲーム勘も鈍っている選手をピッチに並べるリスクは、先のUAE戦でも明らかになった。

 所属クラブで、ゲームに出ている選手はいる。9月のタイ戦で先制ゴールをあげた原口元気は、ヘルタ・ベルリンでも好調を維持する。酒井高徳と酒井宏樹もポジションをつかんでいる。フランクフルトのスタメンから、長谷部誠の名前が消えることもない。

 2部のシュツットガルトで欧州でのキャリアをスタートさせた浅野拓磨も、ヨス・ルフカイ監督辞任の状況下でゲームに絡んでいる。チームメイトの細貝萌も、オラフ・ヤンセン新監督の初陣でフル出場を飾った。

 存在感を取り戻しつつある選手もいる。大迫勇也だ。リーグ戦のゴールはまだ記録していないが、1FCケルンで勝利に貢献するプレーを見せている。
 
 本田や岡崎、長友や香川らを代表から外すことには、もちろんリスクが付きまとう。ただ、所属クラブでのアピールが代表招集につながり、なおかつ試合に出場することにもなるという基本的な競争原理を、無視してはいけないはずだ。クラブの実績が代表での立場に反映されないと、チームの一体感にもひびが入っていく。
 
 9月の2試合を終えたヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、「若い選手を信頼しなければならない」と話し、「経験のある選手と競争をさせていきたい」とも語った。自らの言葉に説得力を持たせるためにも、予定調和のメンバー選考は避けるべきだ。