(写真提供=SPORTS KOREA)

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この夏韓国女子バスケットボール界は、リオ五輪の出場を逃しただけでなく、とんでもない不正が発覚し、大揺れに揺れた。

特別帰化(スポーツなど、特定の分野で優れた能力を持つ者に対し、元の国籍を維持したまま、韓国籍を取得できる制度)の申請手続きの過程で、とんでもない不正が発覚したのだ。

韓国系ということで帰化手続きするも、驚愕の事実が!!

渦中の人物は、チェリー・リーというアメリカ人。祖母が韓国人として、昨シーズンから韓国の女子プロリーグ・WKBLのKEBハナ銀行でプレーしていた。

民族の血統を重んじる韓国では、男子のプロバスケットボール・KBLでは父か母が韓国人なら、外国籍であっても、外国人選手の枠外、つまり韓国人選手と同等の立場でプレーできる。WKBLでは、父母に加えて、祖父か祖母が韓国人であれば、在外同胞の資格でプレーできる。

祖母が韓国人で、在外同胞としてプレーしていたチェリーーの活躍は目覚ましく、リバウンドは1位、得点は5位ながら、上位4人は外国人選手だったので、外国人選手を除けばトップで、新人王を獲得。チーム貢献度は高く、ハナ銀行が準優勝する原動力になった。

さらに2015年の4月には、大韓体育会から特別帰化の承認を受け、後は法務部(省)で事務手続きさえ終えれば、韓国代表としてリオ五輪の予選に出場できるはずであった。

偽造された出生証明書と死亡証明書

ところが、提出された書類のうち、チェリーーの出生証明書は偽造。父親の出生証明書に関しては、そもそも実在しない人物のものであった。

そして、死亡証明書が提出されている韓国人の祖母に関しても、その女性が存在したのは確かだが、唯一の家族である養女は、母親がアメリカ人と結婚したり、他の子どもを産んだ事実はないと陳述しているという。

韓国代表どころか、公文書偽造など司法問題にまで発展したのは言うまでもない。

しかも、本来出場資格のない選手が虚偽の身分で試合に出ていたことになり、チェリー本人の記録だけでなく、チェリーからアシストやブロックなどを受けた選手、さらにはチームの成績の正統性も問われることになり、WKBLはかなり混乱した。

国籍ならともかく、民族の血統を証明するというのは、そう簡単なことでない。その地に定住した1世が生きていたり、韓国との親戚関係が続いていたり、その地の韓国人社会で生きていれば、そう極端な嘘はつけないだろう。

かつて韓国プロ野球でも似たようなことが・・・

しかしチェリーの場合、幼い時に養子になって韓国系であることは知らなかったが、ヨーロッパでプレーするにあたって、偶然韓国系であることを知ったという。となると、書類さえ揃えばどうにでもなるということだ。

かつてプロ野球では、事実上の在日枠である、在外韓国人制度があった。

これは、韓国人または父系が韓国人の者を対象にした制度だ。広島などで活躍した福士明夫や巨人などで活躍した新浦寿夫らも、この制度により韓国でプレーした。

ところがある投手が日本に戻った後、自分は韓国系ではないことを表明して、波紋が広がったことがあった。

韓国のプロ野球は1998年から外国人選手の登録が始まったが、外国人とは別枠で韓国でプレーできる在外同胞は、韓国籍のみとなり、さらに近年、韓国のドラフト会議を経ることが義務付けられた。

韓国のドラフト会議は日本より早い8月半ばに行われるため、韓国でプレーする在日韓国人選手は、独立リーグの選手から出ないとは限らないが、出る可能性は、ほとんどなくなった。

彼女は永久追放に。もっとも悪いのは誰か

チェリーーの件で気になるのは、彼女はただエージェントなどに利用された被害者なのか、ある程度積極的に加担していたかということだ。

その真相は定かではないが、2016年7月に彼女はWKBLから永久除名され、前出した個人記録が削除されたばかりでなく、チームの準優勝も白紙に。35試合が没収試合となり、最下位に書き直された。

それにしても国籍はどうであれ、本人に韓国系である意識や感情があるならばともかく、幼い時に養子に出て、韓国系であることを知らないで育った選手を、民族の血統を受け継いでるとして、特別扱いすること自体どうなのだろう。

しかも近年は、平昌五輪に備え、ウィンタースポーツを中心に特別帰化が安易に行われ過ぎている感は否めない。そういう意味でも、チェリー・リー事件が投げかける問いは、あまりに重かった。

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(文=大島 裕史)