BLTサンドとは、ベーコンで味付けされたトマトを味わうサンドイッチである。

目にしたとたん、全身に鳥肌が走った。この一節は、ニッチな自身のBLTサンドイッチに対する偏愛ぶりをフード情報サイト「Serious Eats」に書きつづった、文筆家で料理研究家のJ. Kenji López-Alt氏の言葉。

当然ながら届く人にしか届かない。それでも、最後まで(本文は15,000文字の大作)読破した者の一人として伝えなければならない。この記事は、BLTサンドをもっとも美味しく食べるための世界で最初のマニフェストだ。

 目を向けるべきは、
ベーコンではなくトマトである

初めて最高に美味しいトマトを食べたのは22歳。このとき本当の意味でのBLTの魅力を私は理解した。それまでサンドイッチやサラダに入るトマトを許す事が出来なかったというのに。

この衝撃をもっと具体的に説明するなら、BLTは味付きベーコンのサンドイッチではなく、トマトが主役のサンドイッチであり、その味付けにベーコンはある。これが礎となって、他の具材が存在するということ。

目を向けるべきは、ベーコンではなくトマトだということを見誤ってはいけない。BLTの世界に多数決も話し合いも存在しない。まさに独裁主義としか呼べない世界。その最高位に君臨しているものこそトマトなのだ。

最高のカプレーゼを料理するのと同じように極上のBLTをつくることは、じつに簡単。旬のトマトを手に入れ、それをスライスしたらベーコン、レタス、マヨネーズとともにおいしく焼いたパンではさむ。これだけ。

パサパサで季節外れのトマトを使うなんて許されざる罪ということだけは覚えておいて欲しい。

 ルールその01:
トマトの旬を知り
最高のものをかぎ分けろ

BLTには旬がある。長い夏が終わりに近づき少しずつ陽が短くなり始めた8月下旬から9月にかけて、トマトが市場に出回る時期(もちろん、自分の庭で収穫するのだっていい)。

他のどんな野菜や果物よりも、季節によって左右されるのがじつはトマトだ。季節外れのものは暖かいビニールハウスで育てられ、成熟する前に収穫されたもので、エチレンガス(実を成熟させるため植物が自然に出すガスのこと)にあてられ陳列棚へと向かう。

だが、本当にうまいトマトとは収穫前に成熟し、その味や甘みを果肉内に蓄えているもののことを指す。どっしりとして水風船のようにふっくらしたものをチョイスしよう。大きさの割に軽いものほど中はスカスカだ。

BLTにおいて大切なトマトとは、サンドイッチをかじった際に腕にしたたるほどのジューシーなものをいう。

 ルールその02:
ひとつまみの塩が
トマトにうまみを与える

こんな実験をしてみて欲しい。最良のトマトに出会えたら、それをまずは半分に切り分け食べてみる。どんなに甘く、香り豊かで、ジューシーなのかをメモしておく。次は、残りの半分に粗挽きの塩をひとつまみ。単にしょっぱくなるだけでなく、より甘く、香り高く、ジューシーになったはずだ。

塩は知覚を高める調味料。食べもの本来の甘みを引き出すことができる。ひとつまみの塩がトマトの水分を引き出し、唾液腺を活発にし、トマトのうまみを味覚にまで届けてくれる。さらに塩は苦味の感覚を抑える特性も。これにより、トマトがより甘く感じるはずだ。

もう一歩先まで踏み込みたい人は、挽きたての黒コショウを。甘さにシャープな刺激が加わる。

最初の味付けは、スライスしたトマトにひとつまみの塩。うまみを引き出すことだ。

  ルールその03:
分厚く良質なベーコンは不要

完璧なBLTもベーコン1枚の差でまったくの別物となる。そのことは肝に銘じて置かなければならない。

安もののベーコンには塩漬け加工を施すための塩漬剤が含まれているものが多い。それこそピンクで着色し、我々の望む塩味でスモーキーな肉。1日どころか数時間で完成させてしまう秘訣がそこにある。

よくベーコンから多分な水分が出てくるのも、均一に焦がしてカリカリにしたいのに料理の最中に端っこが丸まってしまうのも、ここに理由がある。ゆえに私は個人的に避けるようにしている。

ではおすすめのベーコンといえば、「湿塩漬法」を用いて製造されたものだ。塩分を直接注入するのではなく数日かけて塩漬にしたもの。密度が高くてしっかりとした塩味、焼いても比較的縮んだり丸まったりしないのもいい。

肉厚のベーコンは避けたい。せっかくのトマトを台無しにしてしまったり、サンドイッチにかぶりつくのが難しく、肝心のトマトをテーブルに落としてしまう危険性があるからだ。

質が良くあまり肉肉しくないベーコンこそBLTに。枚数は3枚が基本。

  ルールその04:
ベーコンは平たく
カリカリに焼くこと

さて、ベーコンを焼くにはいつくかの方法がある。ちゃっちゃと火が通る電子レンジを使う人がもしいるならば、それは絶対にNG。なぜなら、失われたベーコンの油分を集める方法がないから。そうすると、このあと話すパンの計画までもぶち壊しになってしまう。

BTLに必要なのは、噛んだときカリカリと砕け散るほどクリスピーなベーコン。これが、柔らかくみずみずしいトマトとコントラストを生み出す。欲を言えば、バーガープレスのように上下からしっかり押さえつけて圧縮できるといい。もちろん金ごてでも問題なし。

ちなみに私のやり方は、冷たい鉄板かフライパンにベーコンを並べ、金ごてを当てて、中火〜弱火でゆっくりと火を入れていく。脂を溶かしつつ各ベーコンに均一に焼き目を入れることを心がけている。

 ルールその05:
高級パンはNG、理想は食パン

芳醇で食べ応えのあるパンはBLTには向かない。最優先されるべきことを無視してしまうから。トマトの命を奪ってしまい、サンドイッチの楽しみを根本からぶち壊しかねない。

もし、あなたの住む土地でも日本のベーカリーにアクセスできるようならば、ぜひ試して欲しいのが「SHOKUPAN(食パン)」だ。トーストした食パンこそバターの“約束の地”。スーパーで売っているようなサンドイッチ用の良質なスライスパンこそ、BLTにおける最高のパンである。

 ルールその06:
パンはベーコンの脂で
トーストせよ

ところで、「BLTには焼いていない白パンを」と言い続ける人たちがいる。どんなパンだって焼かれているというのに。

私のメソッドはこう。パンを焼く際には目の前にベーコンを焼いた後にたまった脂分があること。「1+1が3になる」とは、まさにこのこと。

グリルチーズサンド同様、均一にしっかりと茶色くパンを焼きたければ、弱火でじっくりとベーコンの脂で焼いていくこと。そうそう、こんなコツがある。歌を1曲歌い終わる前にパンが茶色くなってしまうなら、それは熱すぎだし早すぎる。

 ルールその07:
マヨネーズには
自分の好みを出せ

さて、最も重要な部分はこれまでにカバーできたろうから、ここからは好みの世界に突入していこう。

まずはマヨネーズ。これは手づくりにこだわりたい。食用油、酢、卵があれば簡単にできたてが味わえる。もしも、店頭で買うのであれあ、好みのタイプを選ぶことだ。マヨネーズとひと口に言っても、その種類は豊富だ。

クリーミーなタイプもあれば酸味の強いものもある。ただひとつ大切なことは、BLT用にトーストした2枚ともケチらずたっぷり塗ることだ。

  ルールその08:
レタスは千切り、
シャキシャキ感を演出せよ

では、BLTにおける「L」は必要ないか?レタスが余計な訳がない。決して飾り付けや時間つぶしでもない。あれは、サンドイッチの口当たりという面で非常に重要な役割を果たしている。

正しいレタスのチョイスをすれば、サンドイッチに水分を加えてくれるし、さっぱりとした口当たりはベーコンの脂っぽさやトマトのみずみずしい柔らかさを支えるものとなる。他の味がうまく渾然一体となるよう後ろからサポート役に回る、そんな存在がレタスだ。

それを細切れにすると、またもうひとつの重要な役目を果たすことができる。それはサンドイッチをしっかりと固定する要となる。千切りのレタスがあれば、トマトが横からずり落ちてしまうことも防げるし、したたるトマトのエキスがトーストをべちゃべちゃにすることもない。

ポイントはシャキシャキの歯ごたえを活かすことだ。

 ルールその09:
重ねる順番を見誤るな

BLTの重ね方こそ、じつは私が最も葛藤する部分。このサンドの仕方も後半の山場と言えよう。

当然ながらレタスはトーストに当たる一番外側。両面に配し、トマトとベーコンをはさむのが常套手段だ。これは何度も実験を繰り返した結果、辿り着いた境地であり、サンドイッチを的確に組み立てる最善の方法であり、こすうれば全てが崩れる前に口に入れることができる可能性が最も高まる。

しかしもう一方で、「トマトはマヨネーズに直接触れているべき」とする意見も聞こえてくる。サンドイッチの真ん中にマヨネーズを加えるとか、トーストに直接置いてもべちょべちょにならないよう、トマトを開く(私から言わせれば愚行)など、実験をしたものの納得のいく答えは得られなかった。

どんな重ね方をしようと、次に紹介するルールこそあらゆる食べ物に通づる不変のルールかもしれない。

 ルールその10:
カットは三角形にこだわれ

ピザにパイ、切り分けられたケサディヤ、おにぎり、そしてサンドイッチ。三角の端っこは口に入れやすいなど諸説あるが、なかなか納得のいく説明は無いものだ。

ならば純粋にこう言おう。三角形で表現される食べものはうまい、と。BLTも例外ではない。

 ルールその11:
BとLとTがすべて
余計なものを加えない

BLTを完璧なものにするための方法よりも、それを台無しにしてしまうことの方が多い。悲劇を回避するための最善策は、余計な装飾はしないこと。

シチャラーソース(ホットチリソース)やローストトマトソースを足したり、チーズや目玉焼きを合わせたい衝動を私に否定する権利はない。確かにグリルドチーズが入れば、いっそううまくなるだろう。でも、それはBLTじゃない。

投稿サイトRedditユーザーの言葉をそのまま借りて表現するなら、「BLTをリスペクトし、自分の好きなものを追加してバリエーションを出すのではなく、ありのままを愛すること」。

BLTに何かをはさむことは、とてもシンプルで純粋で美しいもので遊ぼうとしている行為に等しい。そしてこの地球上において、シンプルに純粋で美しいものはなかなか見つけられない、ということを。

Licensed material used with permission by Serious Eats