アパレル構造不況!「バーバリー」失った三陽商会の危機

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バーバリー失い過去最大の最終赤字

老舗アパレルが大きな岐路に差し掛かっている。百貨店を主たる販路としてきたビジネスモデルは崩れ、後手に回った事業改革のツケで軒並み事業縮小を余儀なくされているからだ。これに追い討ちをかけるように、百貨店大手に郊外・地方店の閉鎖が相次ぎ、老舗アパレルの事業存続には危うさが漂う。

構造不況の色濃い老舗アパレルを象徴するのは三陽商会だ。英高級ブランド「バーバリー」のライセンス契約が昨年6月に切れ、その穴を埋められず、7月末には2016年12月期の連結業績見通しの大幅な下方修正を迫られた。従来、3億円の黒字を予想していた最終損益は95億円の赤字と過去最大の損失に転落する見通しだ。

これに先立って表明していた全従業員の2割に当たる250人程度の早期退職者募集による事業構造費用も損失拡大の圧力となる。これに伴い、17年2月までに8ブランドを廃止し、売り場総数の1割に当たる190カ所を閉鎖する新たなリストラも打ち出した。これには杉浦昌彦社長は危機感を隠さず、「一からの出直し」と、18年12月期を最終年度に据えた中期経営計画の撤回を表明した。

しかし、老舗アパレルを襲う不況は三陽商会にとどまらない。イトキンは今年2月、国内投資ファンドのインテグラル(東京都千代田区)が買収し、ブランドと売り場を大幅削減し、経営立て直しの途上にある。また、東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合したTSIホールディングス、ワールドも既に大規模な売り場縮小や複数のブランド廃止と大規模リストラを余儀なくされた。

百貨店の相次ぐ閉店が突きつけた危機

遡れば、レナウンは10年に中国繊維大手である山東如意科技集団の傘下に入り、再建中だ。老舗アパレルが軒並み苦境に陥っている事態は、高度成長期からの旧態依然な百貨店販路に依存したビジネスモデルに改革の手を染めずにきた結果、傷口が広がったことを物語る。

さらに、「ユニクロ」に代表されるファストファッション、インターネットによる通信販売に市場を奪われ続けてきたうえに、安倍晋三政権が掲げる「デフレ脱却」に反してなかなか抜け出せない個人消費の低迷が打撃となり、構造不況色を一段と強めた。

一方、主要販路である百貨店の経営環境はここにきて大きく様変わりしてきており、老舗アパレルに新たな波紋を広げそうでもある。百貨店大手が今年から来年にかけて、相次ぎ郊外型店と地方店の閉鎖に乗り出しているからだ。セブン&アイ・ホールディングスは今年8月に入り、傘下の百貨店、そごう・西武の西武八尾店(大阪府八尾市)、西武筑波店(茨城県つくば市)の2店舗を来年2月に閉鎖することを決定した。これに先立ち、今年2月の西武春日部店(埼玉県春日部市)に続き、9月末には西武旭川店(北海道旭川市)、そごう柏店(千葉県柏市)を閉店する。

また、三越伊勢丹ホールディングスは傘下の三越伊勢丹は、三越千葉店(千葉市)と三越多摩センター店(東京都多摩市)の営業を17年3月20日に終了する。このほかエイチ・ツー・オーリテイリング傘下の阪急阪神百貨店が17年7月末に堺北花田阪急(堺市)を閉店するなど、百貨店に大量閉鎖時代が訪れつつある。「爆買い」に代表されるインバウンド(外国人観光客)需要が沈静化し、都心店舗の収益で不採算の郊外・地方店を支える構図が崩れてきたためだ。

百貨店の相次ぐ閉店は再建途上の老舗アパレルに新たな課題を突きつける。身を削るリストラに加え、一段の退路を断った構造改革を迫られる可能性もあり、茨の道を歩まざるを得ない。

(経済ジャーナリスト 水月仁史=文)