瀬戸内海の海の幸や自然を満喫できる (写真はイメージ)

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 涼しくなり、空が高くなってくる秋こそ、島へ。爽やかな秋気に身を任せて遊ぶもよし。緩やかな時間の流れをじんわりと噛みしめるもよし。“島マエストロ”の旅ライター・斎藤潤さんが、オススメの島旅を紹介する。

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 岡山県西部の笠岡諸島南部の真鍋島。平安時代の藤原氏が真鍋を名乗って一族を築き、水軍の本拠を置いた地でもある。笠岡港を出港すると、神島、高島、白石島、北木島と結び、約1時間の航海(高速船は、白石と北木のみ寄港で、約40分)で到着するのが真鍋島だ。

 島の中心地である本浦地区は、狭い路地、複雑に曲がる小路、白壁の家や舟板を利用した壁、古い葬制をしのばせる墓地など、昔の島の面影を色濃く残している。当てもなく路地をさまよっていると、いつの時代にいるのかわからなくなりそうで、タイムスリップ感がおもしろい。

 この島はかねて「美味の島」として知られ、笠岡や四国方面からも訪ねてくる。定期船ばかりでなく、海上タクシーを雇うグループや、プレジャーボートやヨットで乗り付ける人も少なくないのは、瀬戸内海ならでは、か。本浦の漁師料理の店「漁火」(要予約)や最近できた「船出」などで提供される魚介類は、新鮮そのもの。

 宿も紹介したい。

 集落と反対側にある隔絶された別天地の趣がある福原浜の島宿「三虎」は、かつて日本3大ユースホステルとして名高かった宿。砂浜は“貸し切り状態”で、目の前には人工物がほとんど見えないという、瀬戸内海でもまれに見る、恵まれた立地だ。

 食事は、直接契約している漁師たちから仕入れた魚介類で、基本的に生きたものしか使わない。小鉢類にはじまり、刺し身、蒸し物、焼き物、煮物、揚げ物などが次々と並び、多くの客が食べ残してしまうほどのボリュームだ。

 ご主人は、定番料理を守りながらも新しい味覚を追い求めている。最近のお気に入りはアクアパッツァだ。昼食だけの利用もできるが、宿泊して潮湯につかりながら星空を見上げ、昇る朝日を拝むのも乙なものだ。フランスのイラストレーター、フロラン・シャヴエが三虎に2カ月近く滞在して書き上げた、イラスト満載の真鍋島の紹介本(フランス語)によって、近年ヨーロッパの旅行者が増えている。

週刊朝日  2016年9月23日号