空から見た奄美大島(鹿児島県)。首都圏を起点とした場合、奄美大島は長らく「最も遠い島」だった。しかし、近年はLCCの就航によってアクセスが格段に向上した

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 近年、奄美大島に観光客が増えている。成田空港からのLCC就航によって、特に関東からの旅行者が増加しているのだ。“島マエストロ”の旅ライター・斎藤潤さんが、その魅力を紹介する。

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 首都圏を起点とし、交通費を念頭に置くと、鹿児島県の奄美大島は一番遠い島だった。しかし、一昨年の夏、成田空港からLCCが就航し、片道8千円からと、距離が一挙に縮まった。観光客も目に見えて増えた上に、帰省客の増加も著しく、当初は夏期のみの運航だったが、冬期も継続されることが決定。奄美群島振興開発特別措置法による補助で、現在は片道5890円から。鹿児島市と奄美大島を結ぶ船の2等料金(9月現在9050円)よりはるかに安い。

 この島をお勧めするのは、ただ安いからではない。この国で失われつつある奥ゆかしいたたずまいが残っているから。

 深い森やマングローブ、美しいサンゴ礁といった自然景観、昭和の面影が色濃い奄美市名瀬の街並み、神代の時代をほうふつとさせる祭祀(さいし)や哀調漂う独特の節回しの島唄など、魅力に事欠かない。

 時には往復で1万円を割るバーゲンチケットを利用して、1泊2日で名瀬の繁華街・屋仁川に黒糖焼酎と奄美料理、そして島唄を楽しみにくる人もいるほど。

 マングローブの中をカヌーで縫い、秋でも泳げるサンゴ礁でのシュノーケリング、ダイビング、釣りにふけってもいい。最近では、大島南部に多く残る旧日本軍の特攻艇の格納庫、日本一といわれる弾薬庫などの戦争遺産も、注目されている。

 祭りに興味があれば、奄美大島のすぐ南の加計呂麻島まで足を延ばしてもいい。10月9日(旧暦9月9日)、国の重要無形民俗文化財・諸鈍シバヤが、諸鈍集落の大屯神社で行われる。ユニークな紙の面をつけて奉納される芸能が興味深い。

 昭和の香りを楽しみたいのであれば、この2年ほどで急にテナントが復活し、にぎわいを見せる奄美市の永田橋市場がお勧め。地元の人に言わせれば、昭和30年代は、“原宿”のような混雑ぶりだったという。哀愁漂う狭い市場の通路は、ふらふらと足を踏み入れたくなる。市内にあり、奄美で名高い唄者・西和美さんが経営する「かずみ」は、伝統的な郷土料理と島唄を堪能でき、予約するのが無難だろう。

週刊朝日  2016年9月23日号