「適応障害」とはどういう病気か

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執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)

入学・入社、転居・転勤、留学、転校、昇進などの生活環境が変化することで、メンタルの不調のきっかけになることは多いものです。

入学や昇進のようなおめでたい出来事ですら、私たちにとってはストレスになり得ます。そんなストレスによって心がバランスを崩した状態が「適応障害」です。

今回は適応障害について、詳しく見ていきます。

日常的なストレスが誘因となる

生活環境の変化、対人関係のトラブル、離別や死別など、はっきりと確認できるストレスの原因があることが、適応障害を起こす条件となります。

ただし、適応障害を引き起こすのはあくまで「日常的な社会生活の中でのストレス」です。

災害や戦争、犯罪や大事故などといった、日常では通常経験しないようなストレスの場合には、急性ストレス障害(ASD)や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)となります。

また、大切な相手と死に別れた場合は、2か月以上症状が続いている場合に限って適応障害と診断されます。それ以内に回復すれば「死別反応」と呼ばれます。

適応障害の症状には個人差が

よく見られる症状としては、不安・焦燥感・気分がふさぐ(抑うつ症状)など「情動面」での不快感と、集中力や根気が出ない、しなければならないことに手がつかないといった、生活面・職業面での機能障害が見られます。

また攻撃的な言動や八つ当たり、あるいは、それまでできていたことができなくなってしまう「退行」が現れることもあるようです。

同じ境遇やその変化にあっても、それをストレスと感じる人と、そうでない人がいます。例えば新しい物好きの人は、引っ越しや海外生活を楽しむことができるでしょうが、変化が苦手な人にとっては大きなストレスとなるでしょう。このように、適応障害も個人差が大きく、何をストレスの要因と感じるかは人それぞれなのです。

治療は休養と環境調整が基本

適応障害の治療は、休養と環境調整が基本になります。不安や不眠などの症状がつらい場合は、対症療法として薬を用います。


環境調整については「ストレス因」を除去するか、ストレスへの抵抗力を強くする・対処能力を高めることが必要となります。そのための方法として、カウンセリングや認知行動療法が有効とされています。

ストレス因に対しては、現実的に働きかけて問題解決へつなげられれば理想的ですが、実際には難しいことが多いでしょう。例えば、「新しい職場の人間関係」がストレス因になっていたとしても、その環境を変えることは簡単ではありません。

その場合は、現実的に許容される範囲で、一時的に回避をしたり、ストレスによって起こる緊張感を感情に出したり、ストレス発散をしたりといったストレスコーピング(対処)ができてくると、症状が改善され、時間とともに軽快していくと考えられています。

ストレスから3か月・終結から6か月

ストレス因の始まりから3か月以内に症状が発現し、ストレス因やそれによって引き起こされた結果が解消されると、適応障害は6か月以内で回復すると考えられています。

ただし、環境要因が改善しなくて症状が長引いてしまうこともあり、その場合には「遷延性抑うつ反応」といった言い方もされます。また、有効な解決策がないまま「うつ病」に移行する場合もあります。その場合は、回復までに数年以上の時間がかかる場合もあります。

環境の変化によって苦痛が生じ、容易に改善しないと感じたら、精神科や心療内科といった専門家に相談することが、回復への早道と言えるでしょう。

<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長